マガキの美味しさ評価法を開発ー宮城県産新ブランドカキの美味しさを見える化ー
公表日:2020 年 4 月 26 日
研究実施者:水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 村田裕子ほか
国産31ブランドのカキの遊離アミノ酸、グリコーゲン含量と官能評価から、遊離アミノ酸総量、セリン含量、グリコーゲン含量を軸としたマガキ美味しさの3Dマップを作成し、宮城県産新ブランドの「あたまっこカキ」と「あまころ牡蠣」の美味しさを見える化しました。
宮城県のマガキ養殖復興において、「あたまっこカキ」と「あまころ牡蠣」の2つのブランドカキが開発されています。多くのブランドガキが出回っている市場での差別化のためには、これらのカキの美味しさの特徴を数値化(=見える化)して客観的な評価でアピールすることが有効です。オイスターバーで提供およびネット通販で販売されているマガキを合計31銘柄入手して、生ガキでの官能評価と成分分析データからカキの甘味と濃厚感(およびすっきり感)と成分との関係を調べました。その結果、遊離アミノ酸、セリン含量、グリコーゲン含量が高いほど甘味が強いカキである可能性が、セリン含量とグリコーゲン含量が高いほど濃厚なカキである可能性が高いことがわかりました(セリンはアミノ酸の1つです)。これらの結果から、遊離アミノ酸総量、セリン含量、グリコーゲン含量を軸とした3Dグラフを作成し、分析に使用した31銘柄のデータをプロットし、グラフ上で濃厚感および甘味の強いカキのグループを楕円で囲みました。
この3Dグラフに「あたまっこカキ」と「あまころ牡蠣」のデータをプロットしたところ、濃厚感および甘味の強いカキのグループに位置していることが確認できました。これらのカキは官能評価でも濃厚、甘味が強いという評価であり、3Dグラフ上での位置づけ(=評価)と一致しました。
これらのデータを基にした「あまころ牡蠣」と「あたまっこカキ」のチラシ(PR素材)を作成し、現在、それぞれのブランドのPRに用いられております。今後、宮城県産カキにかかわらず、養殖カキの美味しさアピールのために、本評価方法が役立つことが期待されます。
本研究は、農林水産省「食糧生産地域再生のための先端技術展開事業(貝類養殖業の安定化、省コスト・効率化のための実証研究)」によって実施しました。
本成果は、Fisheries Science.86巻3号( 2020. 5) : DOI 10.1007/s12562-020-01417-1 に掲載されました。