新しい有毒プランクトンAlexandrium tamiyavanichiiの出現と二枚貝類毒化
[要約]
新しい有毒プランクトン Alexandrium tamiyavanichii が香川県海域に出現し平成11、13年の初冬に二枚貝類が毒化(麻痺性貝毒)した。出現状況、毒化状況を取りまとめるとともに毒力及び毒組成を明らかにした。
香川県赤潮研究所
[連絡先]087-843-6511
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]赤潮・貝毒
[対象]植物プランクトン
[分類]行政
[背景・ねらい]
有毒種 A. tamiyavanichii の出現及び出現に伴う二枚貝の毒化は沖縄県に次いで国内では二例目であり、毒力等の知見は極少なく、二枚貝類の毒化監視に支障をきたしていた。このため、監視体制を充実するため、調査・研究を行った。
[成果の内容・特徴]
- 頂孔板の形態、腹孔の存在、前縦溝板の形態等から A. tamiyavanichii と同定した。
- 細胞は長さ30-50μmでほぼ球形、茶褐色で連鎖群体を形成する。
- 平成9年より初秋から初冬に出現し、大量出現時に二枚貝類の毒化が発生している。(表1,2)
- 播磨灘南部海域では平成9年より、備讃瀬戸西部及び燧灘東部海域では平成13年より出現が観察された。
- 平成11年11-12月、播磨灘南部海域でムラサキイガイ、アカガイから最大4.56MUの麻痺性貝毒が検出された。(表2)
- 平成13年12月、備讃瀬戸西部海域でマガキから最大4.81MUの麻痺性貝毒が検出された。(表2)
- 毒力:A. tamiyavanichii培養株の毒生産能はA. catenellaの数倍高い。(図1)
- 毒組成:GTX3、C2、GTX4及びSTXを主成分とする。(図1)
[成果の活用面・留意点]
- 1,000cells/l以上の出現が観察されたら、プランクトン調査の強化及び二枚貝の毒化をマウステストにより監視する必要があると思われる。
- 培養株の確立:毒力・毒組成研究、日本水産資源保護協会主催の「平成13年度有毒プランクトン同定研修会」及び分子同定に関する研究(京都大学)等に用いられた。
- 培養株を研究目的で利用希望の際は香川県赤潮研究所に申し込んでください。
- 毒力及び毒組成は、四国大学短期大学部と共同研究を行った。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:「赤潮調査研究(県単独事業)」
研究期間 :平成13年度(平成9-13年度)
研究担当者:吉松定昭、越智洋雅、松岡聡
発表論文等:平成12年度日本水産学会春期大会にて口頭発表(3報)