国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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瀬戸内海におけるマイワシの新規加入量と産卵量の経年変動

[要約]
 産卵調査による産卵量およびコホート解析による新規加入量をもとに瀬戸内海におけるマイワシ資源変動の特性を検討した。瀬戸内海におけるマイワシの新規加入量は産卵量の多寡では決まらず、太平洋からの移入量に規定される可能性が示唆された。


瀬戸内海区水産研究所海区水産業研究部沿岸資源研究室協力:(瀬戸内海ブロック全府県水産試験研究機関)
[連絡先]0829-55-3563
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]資源生態
[対象]いわし
[分類]調査


[背景・ねらい]
 太平洋、対馬暖流域ではマイワシの資源量が推定されており、資源量は低水準にある。一方、瀬戸内海におけるマイワシについてはマイワシを主対象とした漁業が少ない等の理由により、太平洋、対馬暖流域ほどには資源量等の把握がなれていなかった。本研究は、瀬戸内海におけるマイワシの産卵量、新規加入量の経年変動を既存のデータから求め、瀬戸内海におけるマイワシの資源変動の特性を解明するための一助とすることを目的に実施した。


[成果の内容・特徴]

  • 1980~1999年に瀬戸内海ブロックの12府県水産試験場等が実施した卵分布調査をもとに灘別、月別にマイワシ産卵量を集計した。年間産卵量は1983年に一時的に13兆粒に増加したものの1984~1992年においては1~6兆粒と低水準であった。1993年には10兆粒に急増し,1994年に26兆粒に達した。しかし,1995年以降漸減し,1999年には2兆粒となった(図1)。
  • 1985~1998年に大阪府、徳島県、愛媛県が実施、収集したマイワシの漁獲物体長組成データ等を用いてコホート解析を行い、新規加入量を推定した。瀬戸内海におけるマイワシの新規加入量は1986~1991年に漸減し、1994年に一時増加したが、1996年以降激減した(図2)。
  • 瀬戸内海におけるマイワシの産卵量と新規加入量の間には有意な相関関係が見られなかった(図3)。一方、太平洋側でのマイワシ新規加入量と瀬戸内海での新規加入量の間には正の相関関係があった(図4)。瀬戸内海における新規加入量の多寡は太平洋からの移入量に規定される可能性が示唆された。

[成果の活用面・留意点]
 瀬戸内海においてマイワシのような浮き魚は産卵量(親魚資源量)が多くても必ずしも新規加入量が多くなるわけではない。
また、他の浮き魚についても瀬戸内海における資源変動が太平洋域からの移入により決定される可能性があることを示唆する。


[具体的データ]

図1   図2

図3    図4


[その他]
研究課題名:我が国周辺資源評価調査(委託元水産庁)、瀬戸内海のイワシ類の資源評価
研究期間:平成13-17年
研究担当者:銭谷 弘(瀬戸内海区水産研究所 海区水産業研究部 沿岸資源研究室)
発表論文等:Zenitani H., Tsujino K., Saiura K. and Kato T. (2001) Interannual fluctuations in recruits and egg production of Japanese sardine in the Seto Inland Sea. Bull. Jpn. Soc. Fish. Oceanogr., 65(4) 145-153