放流キジハタの保護育成礁の開発
[要約]
人工魚礁の増殖的機能を活用し、キジハタ人工種苗の滞留促進、成長、生残率の向上を図った。滞留効果は既存魚礁の6倍以上であった。
岡山県水産試験場・業務部資源班
日本栽培漁業協会玉野事業場
[連絡先]0869-34-3074
0863-32-3935
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]増養殖技術
[対象]他の魚類
[分類]研究
[背景・ねらい]
人工魚礁に魚が蝟集する要因には、産卵場、隠れ場、摂餌場、休息場などの効果がある。これらの人工魚礁の増殖的な機能を活用し、キジハタ放流魚の保護育成を図るとともに、放流魚の滞留促進、成長、生残率の向上を図る。
[成果の内容・特徴]
- 放流魚の隠れ場となるような多数の間隙をもち、餌料培養機能をもつホタテガイ貝殻を素材とした3.6×3.6×1.6mの魚礁を試作し、備讃瀬戸西部の笠岡市白石島地先の水深5~7mの海底に設置した。
- 魚礁ユニットには、貝殻と貝殻との間にスペーサを有するタイプと、スペーサのないタイプの2種類を製作し、滞留尾数と餌料生物の増殖量を比較した。
- 魚礁には全長8cmのキジハタ人工種苗を6,000~7,000尾放流した。
- SCUBA潜水による目視観測及び魚礁ユニットの一部引き上げによるキジハタ放流魚の計数により、放流魚の滞留率を推定した。滞留率は放流後1週間が45~47%、7か月が3~13%で、従来型の放流に比べ最高6倍以上高い値を示した(図1)。
- 人工魚礁1基当たりの適正放流尾数は2,000尾以下と推定された。
- 本魚礁には、キジハタのほか、メバル、カサゴ、アイナメ、クジメなど他魚種の幼魚から未成魚が蝟集した(図2)。
- 魚礁の餌料生物量は設置後、経時的に増加し、6~9か月後には個体数、湿重量、種類数ともに最大となった(図3)。
[成果の活用面・留意点]
本人工魚礁は、種苗放流の場として利用できるほか、新たな放流適地の創出につながる。また、浅海域の生産力を増強できる。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:放流キジハタの保護育成礁の開発(国からの委託)
研究期間 :平成11年度から13年度
研究担当者:岡山県水産試験場 萱野泰久,篠原基之
日本栽培漁業協会玉野事業場 奥村重信,丸山敬悟
発表論文等:水槽実験によるキジハタ幼稚魚保護礁の素材評価(奥村ほか,投稿中)