山口県瀬戸内海におけるヒラメの放流効果
[要約]
山口県瀬戸内海ではヒラメ人工種苗の放流数の増加にともなって、漁獲量が増加している。無眼側の黒化個体を放流魚として識別すると、市場調査の結果、全体に占める放流魚の割合(混獲率)は30%台で、安定した放流効果が得られている。
山口県水産研究センター内海研究部 資源増殖グループ
[連絡先]083-984-2116
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]増養殖技術
[対象]ひらめ
[分類]研究
[背景・ねらい]
山口県瀬戸内海では1982年頃からヒラメの種苗放流を行っているが、その当時は放流数も少なく顕著な効果はみられなかった。1994年頃から放流数の増加に加え放流種苗サイズも7cm以上が大部分を占めるようになった。一方、この頃から各地でヒラメの漁獲量が顕著に増加した。漁業者及び行政サイドから漁獲量の増加と種苗放流との関係を明らかにすることが求められた。
[成果の内容・特徴]
- 県下の代表的な市場において年間500尾以上、放流魚の検出調査と体長測定調査を実施した。
- ヒラメの放流尾数と漁獲量は、1994年以後両者とも顕著な増加傾向にある(図1)。
- 1999年のヒラメ放流尾数は56万尾であった。一方、農林水産統計による1999年のヒラメ漁獲量は65トンと過去最高であった。
- ヒラメの尾数混獲率は1997年以後4年間は30%台で安定している(図2)。
- 年齢別漁獲尾数は、天然魚では2歳魚、放流魚では3歳魚にピークがみられた。
- 1996~1999年の放流尾数と漁獲量を平均して放流効果を試算した結果、平均混獲率は36.9%、放流尾数に対する回収率は4.5%、回収重量は年間20トン、金額に換算すると年間約5千万円の放流効果があると推定された。放流に要する変動経費(種苗代、餌料費、人件費等)に対する費用対効果は5倍以上と見積もられた(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 本研究と同様の手法を用いて、地域ごとの放流効果を推定することができる。
- 近年、人工種苗の黒化比率が低下しているので、放流種苗の黒化比率を把握しておく必要がある。
- ヒラメの回遊範囲等を調査して、隣接県との共同放流計画を協議するための知見を集める必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:栽培漁業地域展開促進事業(国庫補助)
研究期間:平成13年度(平成12~16年度)
研究担当者:檜山節久・三村勝則・木村博(山口県水産研究センター内海研究部)
発表論文等:山口県内海水産試験場報告,(29),1-8,2000