国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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1年生アマモ場のアマモの花枝形成と水温との関係について

[要約]
1年生アマモ場である備前市片上港のアマモは、最低水温を20℃以上に調節することで、花枝形成が抑制されると推察された。


岡山県水産試験場・業務部増殖班
[連絡先]0869-34-3074
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]魚介藻生理
[対象]あまも・すがも
[分類]研究


[背景・ねらい]
 アマモの花枝形成率は生育環境によって異なり、アマモの生育にとって不利な条件の場所ほど高くなると考えられている。岡山県では、播種法によるアマモ場造成に取り組んでおり、大量に採取可能な1年生アマモ場の種子を用いている。しかし、この種子を用いた場合、発芽当年での花枝形成率が90%前後と高く、花枝になった株は枯死してしまうため、花枝形成時期後に株数が激減してしまう。そこで、この減少を防止するため、花枝形成と環境要因に関する陸上水槽試験を行い、花枝形成を抑制する方法について検討する。


[成果の内容・特徴]
(1)水温16℃試験

  • 1年生アマモ場である備前市片上港で採取した種子を、1999年11月1日に播種し、水温の異なる水槽内で培養し、’00年6月19日まで花枝形成率を観察した。
  • 試験区は「自然水温区」と、ヒーターを用いて最低水温が16℃以上になるように調節した「16℃区」の2つを設けた(図1:自然水温の推移)。
  • 6月19日時点の花枝形成率は、自然水温区では100%、16℃区では93%であった(図2)。
  • したがって、備前市片上港のアマモは、最低水温を16℃以上に調節しても、花枝形成はほとんど抑制されないと推察された。

(2)水温20℃試験

  • ’00年11月1日に播種し、水温の異なる水槽内で培養し、’01年7月9日まで花枝形成率を観察した。
  • 試験区は「自然水温区」と、ヒーターを用いて最低水温が20℃以上になるように調節した「20℃区」の2つを設けた(図3:自然水温の推移)。
  • 7月9日時点の花枝形成率は、自然水温区では80%、20℃区では7%であった(図4)。
  • したがって、備前市片上港のアマモは、最低水温を20℃以上に調節することで、花枝形成が抑制されると推察された。


[成果の活用面・留意点]

  • 川崎(1987)は、神奈川県小田和湾産のアマモは冬季に+3℃昇温(最低水温15℃)すると花枝形成が阻害されると報告しており、産地により花枝形成が抑制される水温が異なる可能性がある。
  • 播種後、水温を調節することで花枝形成率の低いアマモ種苗を生産できるが、備前市片上港のアマモの花枝形成は草丈8~30cmの間に決定される(小見山,2001)ことから、草丈約30cmに達するまで水温処理を行えば良いと考えられる(例えば10月に播種すれば水温20℃程度で1、2月には草丈30cmに達する)。


[具体的データ]

図1   図2

図3  図4


[その他]
研究課題名:浅海域緑化技術の開発(マリノフォーラム21からの委託)
研究期間:平成12年度、13年度(平成10~13年度)
研究担当者:小見山秀樹
発表論文等:岡山県水産試験場報告(投稿予定)