ノリの色落ち原因珪藻Eucampia zodiacusの窒素、リンおよび珪素に対する増殖応答
[要約]
播磨灘におけるノリの色落ち原因珪藻Eucampia zodiacusについて、室内培養実験から窒素、リンおよび珪素が本種の増殖に及ぼす影響について明らかにした。
兵庫県立水産試験場 資源部
[連絡先]078-941-8601
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]漁場環境
[対象]プランクトン
[分類]研究
[背景・ねらい]
兵庫県の瀬戸内海域ではノリ養殖が盛んに行われており、本県の重要な漁業種類となっている。近年、ノリ養殖漁期に珪藻が大量発生し、海域の栄養塩類を大量消費することから、養殖ノリに「色落ち」が発生し、生産量の減少や品質の低下による単価の下落が大きな問題となっている。本研究では、播磨灘において1990年代後半からノリの色落ち原因珪藻として最も問題視されているE. zodiacusについて、室内での培養実験から本種の増殖生理学的特性を明らかにし、本種の本県海域における大量発生機構の解明と予察手法の確立を行う。
[成果の内容・特徴]
(1)E. zodiacusの比増殖速度(μ)と窒素、リン、珪素濃度(S)との関係は、Monodの式でそれぞれμN=2.56×SN/(0.86+SN)、μP=2.59×SP/(0.31+SP)、μSi=2.41×SSi/(0.88+SSi)と表せた。各パラメータは、最大比増殖速度(μm)およびμmの1月2日を与える栄養塩濃度(Ks)が窒素でそれぞれ2.56 d-1、0.86 μmol/l、リンで2.59 d-1、0.31 μmol/l、珪素で2.41 d-1、0.88 μmol/lであった(図1)。
(2)E. zodiacusの各栄養塩最小細胞内含量は、窒素が0.85 pmol/cell、リンが0.16 pmol/cell、珪素が2.55 pmol/cellと推算された(図2)。
(3)E. zodiacusは窒素源として硝酸態、亜硝酸態窒素を増殖に利用できたが、アンモニア態窒素、尿素、尿酸は利用できなかった。またその他のアミノ酸態窒素ではグルタミンでの増殖量が高かった。一方、E. zodiacusは実験に用いた全ての無機態および有機態リンを有効に増殖に利用できた(図3)。
[成果の活用面・留意点]
今後は他の環境要因との相互作用を考慮した実験を実施し、より詳細に本種の増殖生理学的特性を解明する必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:赤潮・貝毒などの原因プランクトンの被害防止技術研究
予算区分:水産試験場試験研究調査
研究期間:平成13年度~平成17年度
研究担当者:西川哲也
発表論文等:平成14年度日本水産学会で口頭発表予定
日本水産学会または日本プランクトン学会に投稿予定