水産工学論文賞(水産技術研究所 髙橋 秀行 ほか)
髙橋秀行業務推進チーム長が水産工学論文賞を受賞しました
掲載日:2022年7月4日
この度,水産技術研究所管理部門神栖拠点の髙橋秀行業務推進チーム長らの論文が,2021年度水産工学論文賞を受賞しました。受賞論文は以下の通りです。
題目
「近海かつお一本釣漁業の漁獲物搬出作業における軽労化支援スーツの効果」
著者
髙橋 秀行,安田 健二(水産技術研究所),田中 孝之(北海道大学)
掲載誌
水産工学 第57巻第3号(2021年2月)
DOI
https://doi.org/10.18903/fisheng.57.3_83
研究内容
漁業には前かがみや中腰などの腰痛の原因となる作業が多くあります。しかし,作業環境や工程などの制約から作業方法を変更できないこともあります。近年発達の著しい軽労化支援スーツ(アシストスーツ)の多くは,前かがみなどの際に腰回りの筋肉の負担を軽減することで腰痛リスクの低減を狙うもので,特に前述したような制約のある漁業現場での活用が期待されます。しかし,実際の漁業の作業に対するアシストスーツの効果を検証した研究事例はありませんでした。
本研究では,近海かつお一本釣り漁船で漁獲物を搬出する作業に対するアシストスーツの効果を検証しました。近海かつお一本釣り漁船では,縦に細長い形状の魚倉に乗組員が入り込み,前かがみの姿勢で魚をつかんで持ち上げ,魚倉入口で待つ別の乗組員に渡す作業が繰り返されます。魚倉が狭く機械などを導入しにくいため,アシストスーツの活用が期待される作業です。実際の漁船上での精密な計測は困難であったため,作業を模擬する屋内実験系を構築しました。筋負担の評価には表面筋電位計測という手法を用いました。表面筋電位計測は,筋肉が収縮する際に発生する微弱な電位をとらえる手法で,筋肉の活動度を評価することができます。アシストスーツは先行研究事例を参考に,背面にカーボンFRP製の板バネを装備した試作品を作成しました。実験の結果,試作したアシストスーツを使用することで,腰回りの筋肉の活動度が1~3割程度低減されることがわかりました。
今回の受賞では,漁業者の減少や高齢化などの問題に対応する内容であったこと,アシストスーツや人間工学などの異分野の技術を水産において応用したことなどがご評価いただけたものと考えています。
左:髙橋 秀行 業務推進チーム長(主著者) 右:木村 暢夫 北海道大学教授(日本水産工学会会長)