国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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藻類サブバンクの紹介(3):アマノリ類

 ノリ(アマノリ)は、巻き寿司やおにぎりでお馴染みの食材です。その生産は、年間約65億枚、金額約680億円(令和2年度漁期)もあり、ブリ類(ハマチ等を含む)とならぶ我が国の主要養殖対象種となっています。その生産量の増大には、優良品種の育成・普及が貢献しています。 今は全国的に、生長に優れるスサビノリ系の品種が養殖され、色も良い製品が大量生産できるようになりました。一方、抗病性品種や高温耐性をもつ品種、味がよいことで知られるアサクサノリ系品種を求める声もあり、多様な育種素材が必要です。 ジーンバンク事業では、育種に貢献する素材を確保し、特性を維持しながら保存しています。

有明海のノリ養殖

杭が建てられた海面に水平の網が張られたノリの養殖場 有明海は、日本最大のノリ生産地です。沿岸域に広がるノリ養殖場で、主に秋~冬の寒い季節に生産されています。

糸状体での保存

糸状体のノリを保存している三角フラスコ ノリは暑い季節には糸のような形(これを糸状体と言います)で過ごします。ノリの保存は、この糸状体を利用して行います。写真は、適切な温度、明るさを保ちながら保存中の各株の糸状体です。

保存株の増殖特性を確認

丸底フラスコ内で育成試験中の葉状体のノリ 保存している糸状体が、胞子を出し、これが正常なノリ(葉状体と言います)に生長することを確かめる必要があります。写真のように、適切な時期に、葉状体の育成試験を行い、その増殖を確認する作業を行っています。

アサクサノリ(河口)

河口域のアサクサノリ 野生のアサクサノリは,河口域に生息しています。ところが,環境変化から絶滅が心配されています。現在,スサビノリと比較して生長に劣ることから,アサクサノリは養殖には使われていませんが,味の良さから注目されています。

絶滅危惧種の保存

アサリ殻片から伸びた葉状体のカイガラアマノリ 写真はカイガラアマノリというノリで、国内で試験養殖された例もありますが、絶滅危惧種に指定されています。この種では、糸状体から(胞子を作らず)、直接、葉状体が伸びてくるというやや変わった特徴がみられます。このような株も収集保存しています。
 (写真はアサリ殻片から伸びた葉状体)