国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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2021(R03). 3. 2 ニホンウナギ大回遊の謎の解明に向けて大きく前進

令和 4年 3月 2日
国立研究開発法人水産研究・教育機構

ニホンウナギ大回遊の謎の解明に向けて大きく前進
〜太陽の軌道を一つの手がかりとしてニホンウナギが遊泳方向を決めている可能性〜

 

  • 今まで不明であった外洋でのニホンウナギ自身の遊泳速度に関する情報を得ることに初めて成功しました。
  • ニホンウナギは日本近海で放流すると南に向かって遊泳し、産卵場のマリアナ海域内の南側で放流すると北に向かって遊泳することを発見しました。
  • ニホンウナギが太陽の軌道を一つの手がかりとして遊泳方向を決めている可能性があります。

 水産研究・教育機構の研究チームは、ニホンウナギ成魚の産卵回遊中の遊泳生態を解明するため、平成22 年度と24 年度に、水産庁が漁業調査船照洋丸で実施した調査において、超音波発信器を装着したニホンウナギ成魚を産卵回遊初期に通過する日本近海や産卵場のマリアナ海域内の南側などで放流して追跡調査を行いました。追跡時の水平的な移動から、現場で観測した海流成分を差し引くことで、ニホンウナギ自身の遊泳方向と速度を抽出した結果、冬場に日本近海の黒潮域で放流したニホンウナギは強い黒潮で北東方向に流されながらも、ニホンウナギ自身は南に向かって遊泳しており、夏場に産卵場であるマリアナ海域内の南側で放流したものは、北方向へ向かって遊泳していました。ウナギ属魚類は、地磁気などさまざまな情報を利用して回遊すると考えられていますが、今回の観測でニホンウナギが南方向へ遊泳していたときには、その地点の太陽は南中する軌道を持ち、北へ遊泳していたときには太陽は北中する軌道を持っていたことなどから、太陽の位置情報も回遊に利用している可能性が考えられました。
 今後も産卵回遊のナビゲーションを解明するため、引き続き研究を進める必要があります。

 本研究成果は、Springer Nature によって刊行されている「Scientific Reports」に掲載されました。
  https://doi.org/10.1038/s41598-022-05880-x

詳細資料(PDF:1,675KB)

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国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所

社会・生態系システム部 漁業生態系グループ

福田 野歩人 TEL: 045-788-7906