国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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消費地仲買人からみた養殖ハマチのブランド条件

[要約]
 消費地仲買人は養殖ハマチの仕入れに際して,肉質と産地の信頼カという2つの評価視点を祷ち,特に後者を重視している。さらに,販売先の需要の違いを背景とした仕入基準を持ち,産地がそれに合わせて出荷対応することを要講している。


中央水産研究所経営経済部消費流通研究室
連絡先    045-788-7674
推進会議    中央ブロック
専門    水産経済
対象    ぶり
分類    研究


[背景・ねらい]
各地で水産物のブランド化を推進しているが,産地サイドがブランドを確立していくための生産及び出荷条件は確定していない。本研究の目的は,消費地中央卸売市場における,仲買人が・養殖ハマチめ購入時に,魚体やその供給産地についてどのような点を評価しているかを市場調査によって解明することである。調査の対象は,東京都築地市場における養殖ハマチ仲買人6社であり,直緩面接法による調査を個別に実施した。評価項目は,予め仲買人2杜及ぴ関連団体に対する事前聞き取り調査を行い,項目を設定した。その結果,7つの評価項目が選出された。次いで,対象仲買人の7つの評価項目に対する相対的な重視度を「大変重視する(5点)」「重視する(4点)」「やや重視する(3点)」「普通(2点)」「重視しない(1点)」の5段階で評価したものを数値化し,評価項目別に平均した。


[成果の内容・特徴]

  1. 消費地仲買人は購入時に「供給量の安定性」と「価格の安定性」という産地の信頼力に関わる2点を最も重視している。このことは,ブランド確立のためには,商品の肉質自体が優れているとともに産地としての信頼カも重要であることを指している。
  2. 量販店の買付を行っている仲買人(A社,B社,及ぴE社)及び取扱金額が相対的に多い仲買人(F社)は「販路先に合致した価格水準」であるか否かを重視している。これらの消費地仲買人は,販売先の業態特性から判断して事前に想定した仕入価格水準や肉質を購入時の基準としている。まだ,量販店の買付を行っている仲買人(A社,B社,及びE社)は「肥満度」が高いことを重視している。さらに,業務需要家への販売を行っている仲買人(B社,E社,及ぴF社)は「脂の乗り具合が適当」を重視している。消費地仲買人は,飯売先の需要を背景とした仕入基準を持っており,養殖ハマチやそれを供給する産地への要請となって現れている。
  3. 今後,養殖産地では消費地仲買人の販売先の需要の違いに着目して生産・販売活動を行うことが必要である。また商品の安定供給のために産地の大規模化を図るとともに,肉質の均一さを実現するために餌や給餌方法の統一,養殖技術の平準化努カが必要である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 東京都築地市場における調査結果である。ハマチの摂取量が多い大阪など西日本地域では評価項目及びその重視程度が異なる可能性があるので利用時には十分配慮すること。
  2. 行政,地方公共団体担当部課の政策立案,及び水産団体,漁協,産地出荷業者,消費地荷受会社,仲買闇屋,外食産業,量販店など流通を形成している諸産業における市場戦略立案時の情報として活用可能。


[その他]
研究課題名:養殖ハマチにおけるブランド確立のための物流・取引条件に関する研究
予算区分:重点基礎研究
研究期間:平成9年
研究担当者:田坂行男,三木克弘
発表論文等:

1.田坂行男,三木克弘:養殖ハマチのブランド化における物流・取引条件,平成10年度水産利用加工研究推進全国会議資料,106-108,平成10年6月,中央水産研究所
2.田抜行男:養殖ハマチ産地にみるブランド確立への取り組みと課題,漁業経済学会第45回大会報告要旨集20,1998年5月
3.田坂行男:ハマチ養殖産地にみるブランド確立条件の解明,中央水産研究所研究報告,第13号