量販店と外食・弁当惣菜産業における新たな水産物取引構造の解明
[要約]
量販店や外食・弁当惣菜産業は仕入先に対して4つの取引条件を要請している。水産物の産地及び供給業種は、この条件に応えるために新たな取引構造の形成を進めている。また、供給業種間における連携システムの整備が進められている。
中央水産研究所・経営経済部・消費流通研究室
[連絡先]045-788-7674
[推進会議]中央ブロック水産関係試験研究推進会議
[専門]水産経済
[対象]
[分類]研究・行政
[背景・ねらい]
消費者のライフスタイルや食生活の変化が背景となり、近年、量販店や外食産業、弁当惣菜産業における店舗数の増加とともに水産物の取扱量も増えてきた。この研究では、これらの産業における水産物の取引構造を解析し、国内水産物を安定的に供給していくための必要条件を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 量販店や外食産業、弁当惣菜産業は、経営安定化を図るために一定品質、一定価格、一定規格、一定時間配送という4つの取引条件を仕入先に要請している。その結果市場におけるセリ取引の形骸化等を引き起こし、既存の取引構造に質的変化をもたらしている。
- 量販店は、経営効率化のためにカット作業やパッキング作業の外注化を進めている。売場面積の拡大化は、仕入先の変更や高い外注比率につながっている。また外食産業や弁当惣菜産業においても調理作業の外注が多い。弁当惣菜産業における水産物の外注化を事例にとると、一次処理、半調理品の購入比率が高いことが明らかになった(表1)。
- 外注化が進むにつれて流通過程内に新たな機能が加わったり、流通過程内における中間取引が増えている。すなわち、消費地市場の仲卸業者などの従来から水産物取引に携わってきた企業が新たに加工機能を備えたり、切り身産業などが新たに生まれた。また、流通過程内における中間取引の増加に伴い、流通過程内では4つの取引条件を具備することが重要となってきた。
- 水産物の集荷販売業者は業種特性においてそれぞれ優劣がみられる(表2)。この業種がもつ優劣を補完し合う連携システムを構築することが、国内水産物を安定供給していくための必要条件の1つである。
[成果の活用面・留意点]
- この研究は、店舗供給量が他地域に比較して多い首都圏を調査対象としている。このため、供給量の比較的少ない地域における連携システムを検討する際には、地域性を十分加味する必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:水産物マーケットの変化の解明予算区分:経常研究期間:平成6~8年度研究担当者:田坂行男、三木克弘発表論文等:1)食品加工産業における水産物需要の特性と企業行動、漁業経済研究、第39巻4号、19952)外食産業における水産物需要の特性と企業行動、漁業経済研究、第40巻3号、19963)スーパーマーケットの水産物仕入・販売政策と水産物流通再編、北日本漁業、第24号、19964)水産物末端流通の構造変化に関する研究、中央水産研究所研究報告、第10号、1997