国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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長期的漁家減少要因としての農業兼業漁家の動向について

[要約]
 我が国における漁業経営体は戦後一貫して減少してきたが、経営体を専業、農業兼業、農業以外の兼業に分類した場合、農業を兼業とする経営体の減少がその大きな原因となっていることが確認された。


中央水産研究所・経営経済部

[連絡先]045-788-7671
[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]水産経済
[対象]
[分類]研究


[背景・ねらい]
 戦後一貫して減少傾向にある漁業経営体数の今後の動向を解明することは、将来我が国漁業政策の方向を決定するにあたり極めて重要な課題である。戦後から復興にかけての漁村では対照的過剰就業が支配的で他産業と比べ生産性が極めて低い状態にあった。当時、半農半漁の構造分析が行われたが、半農半漁の経済的意義は十分確定されないままであり、第3次センサス(1963)以降、半農半漁あるいは農業兼業にスポットを当てた動向把握がなされなかった。そこで、最近時までの漁業センサスを用いて、海面漁業経営体と内水面漁業経営体の農業兼業の動向を確認する。


[成果の内容・特徴]

  1. 従来、半農半漁は、漁業に半封建制を残す原因であるとする一方で、漁村構造を安定させる役割をもつと、その評価は確定的なものになっていない。また、漁家の兼業農業は大半が零細農業であるが零細漁家経営を支える役割を果たすものと位置づけられている。
  2. 海面漁業経営体について、1954年以降の個人漁業経営体数の動向をみると1963年以降減少傾向にある。専兼業別では、農業兼業経営体は、1968年の118千経営体から1993年の28千と約4分の1への激減であり、漁業経営体全体の減少傾向の要因となっている。その一方で、農業以外の兼業をしている経営体は約8万、専業経営体は約5万で1968年以降大きな変動が見られない(図1)。内水面漁業・養殖業でも減少傾向にあり、海面漁業同様に農業兼業経営体の減少が著しく、農業以外の兼業経営体及び専業経営体は比較的安定して推移してきた(図2)。
  3. 農業兼業漁家の減少は耕地面積の小規模(50a未満)な漁家では、1954年から1983年にかけ65%減少し、規模の大きな漁家(50a以上)の減少は同期間で50%の減少であった。耕地面積の小さな漁家の減少が相対的に大きい。

[成果の活用面・留意点]
漁業センサスのデータをもとの検討したが、漁業センサスの「漁業兼業漁業経営体」には多様な経営体が一括してカウントされていたり、経営体数の変動を動態的に把握することに限界がある。今後、補完的データによる確認作業を必要とする。


[具体的データ]

図1

図2


[その他]

研究課題名:漁業経営構造の解明とその活性化に関する研究予算区分:経常研究研究期間:平成6~8年研究担当者:玉置秦司、家常高発表論文等:玉置秦司、家常隆(1998)漁家における農業兼業の動向~長期的漁家減少に関するファクトファインディング~、中央水産研究所研究報告、第11号