国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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イワナ生物量の季節的な増減傾向を環境DNA分析により推定することができました!

公表日:2025年7月

水産技術研究所 沿岸生態システム部 山本 祥一郎

小河川(渓流)に生息するイワナを対象に、電気漁具による従来の採捕調査と環境DNA(eDNA)分析を併用し、eDNA濃度と生物量との関係を検討しました。その結果、複数地点でのeDNAサンプリングは、イワナの生物量の増減傾向を推定する手法として有効であることが示されました。

 環境DNA(eDNA)分析は、対象種の分布や資源量を推定する手法として注目されており、内水面における資源調査への応用が期待されています。本研究では、小河川(渓流)に生息するイワナを対象に、従来の電気漁具による採捕調査とeDNA分析を併用し、河川の流程に沿ったeDNAの分布およびeDNA濃度と生物量との関係を調べました。

 調査は、河川の流程に沿って20 mごとに20地点を設定し、各地点で採水調査(1 L × 2本)および電気漁具によるイワナの生物量推定を行いました。採取した水試料については、イワナDNAを特異的に増幅するプライマー・プローブセットを用い、リアルタイムPCR分析によりeDNA濃度を測定しました。

 その結果、各地点におけるイワナの生物量とeDNA濃度の間に一貫した傾向は認められず、eDNAデータのみから河川内でイワナが多く生息する場所を推定することは困難であると考えられました。一方で、調査区間全体の平均eDNA濃度の季節変動は生物量の変動とよく対応しており(図)、複数地点での採水調査を行うことでイワナ生物量の増減傾向を評価できる可能性が示されました。今後、eDNA分析は河川に生息する魚類の資源評価手法の一つとして活用されることが期待されます。

 

本研究はJSPS科研費( 21K05761)の助成を受けたものです。

 

本研究成果は、国際科学雑誌「Journal of Fish Biology」に2025年7月に掲載されました

URL : https://doi.org/10.1111/jfb.70030

 

概要図