人工衛星海面高度データによる黒潮小蛇行の予測
[要約]
北太平洋の北緯20度~24度の間を一定の速度で西進する海面高度の負偏差域の九州南方通過と,九州南東沖での黒潮小蛇行の形成やその四国沖での東進現象といった日本南岸での特徴的な黒潮流路変動との間に相関を見いだした。
中央水産研究所黒潮研究部海洋動態研究室
連絡先 088-832-0249
推進会議 中央ブロック
専門 海洋構造
対象
分類 研究
[背景・ねらい]
平成10年10月の水産庁研究所の組織改正に伴い,水産庁における九州~房総半島までの日本南岸沖における黒潮流路の変動予測は中央水産研究所黒潮研究部の担当となった。こお黒潮流路変動予測は,年2回(7月と12月)開催される中央ブロック長期漁海況予報会議における黒潮流路変動予測は,過去の観測事例による経験則により行われてきた。この経験則のみによる予測では,予報会議時に小蛇行が形成されている場合は,ある程度の予測が可能であるが,その場合でも大蛇行形成十分とは言えない。ましてや,予報会議時に小蛇行の形成がない場合には,6ヶ月予測手法の検討という位置づけで,黒潮小蛇行現象に着目し,その形成過程について調べた。
[成果の内容・特徴]
- 人工衛星TOPEX/POSEIDONN,,ERS-1月2日による海面高度観測期間と重なる1992年以降の種子島~潮岬の黒潮離岸距離変動と人口衛星による外洋域の力学的海面高度偏差の変動との関連性を調べた。
- 北太平洋の北緯20度~24度の間を海面高度負偏差域が一定の速度で西進し(図1),九州の南方の海域を通過する(東経132度線を横切る)のに伴い,九州南東沖に黒潮小蛇行が形成されていた。そして,北緯20~24度付近を西進する後続の海面高度負偏差域が東経132度線を通過するのに伴い四国沖での小蛇行の東進現象が起きていた(図2)。
- このことは,北緯20度~24度付近に形成されている海面高度負偏差域の西進及びその九州南方通過をモニターすることで九州南東沖での小蛇行の形成及びその四国沖での東進現象を予測できることを意味する。
[成果の活用面・留意点]
海面高度偏差画像(速報値)はインターネット上で公開されている。この画像情報を利用することにより,長期漁海況予報会議における黒潮流路変動の6ヶ月予測の精度向上が図れる。ただし,画像情報の利用においてはその空間分解能に注意を要する。
[その他]
研究課題名:黒潮流路・流量変動機構の解明
予算区分 :漁業調査・経常
研究期間 :平成11年度(平成11~15年)
研究担当者:斉藤勉
発表論文等:黒潮小蛇行形成過程と長期変動-黒潮流路6ヶ月予測手法の検討-,平成11年度第1回中央ブロック長期漁海況予報会議資料,1999
黒潮小蛇行の長期変動と形成過程,1999年度日本海洋学会秋季大会講演要旨集,1999.
人工衛星海面高度データによる黒潮小蛇行予測手法-数値データによる検証-,平成11年度中央ブロック資源・海洋研究会講演要旨集,1999.