まぐろはえなわで利用するための超小型水深水温計の開発
[要約]
はえなわに取り付けて漁場での表層の水深水温データを記録できる小型水深水温計を開発した。はえなわ操業時にこれを装着すれば、簡単な操作で水温プロファイルとまぐろ類の釣獲深度の把握が可能であることがわかった。広くはえなわ漁業で用いれば表層水温データをグローバルスケールで取得でき、まぐろ類の生態解明にも寄与できる。
遠洋水産研究所 海洋・南大洋部 低緯度域海洋研究室
[連絡先] 0543-34-0715
[推進会議] 遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専門] 海洋構造
[対象] まぐろ
[分類] 研究
[背景・ねらい]
まぐろはえなわ漁業では、鉤の水深を水温鉛直分布から推定されるまぐろ類の遊泳層(100~300m)に合わせるように行われるが、 実際の操業でこれを確認することは容易ではない。しかしはえなわに小型・計量の水深水温計を開発し、生物・海洋物理面での応用の可能 性について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 小型で、しかも充電とデータ取り出しのためにケーブルの接続を必要としない操作のやさしい小型水深水温計を開発した( 表1、図1)。
- 操業当日の鉤深度をモニタでき同時に水温プロファイルも得られるため、はえなわ操業に役立てることができる(図2)。
- キハダの釣獲後の行動データが得られた(図3)。
- はえなわの水中形状はは水平流速の鉛直分布と大きく関係することが推察された。表層で流れが強く深度が深くなるにつれて流れが弱くなる海域では、 はえなわ鉤深度はどの枝縄でも100m未満で浅かった。しかし流れのほとんどない海域では一番深い鉤で250mと深かった。
[成果の活用面・留意点]
- 小型水深水温計が広く一般の漁船で使用され、それらの観測データの収集体制が整備されればグローバルスケールの表層水温データ取得が可能である。
- まぐろ類の遊泳層、適水温、索餌の活発な時間帯、釣獲後の行動等を明らかにし、資源量推定の新たな基礎データとして利用できる。
- GPSを組み込み投縄・揚縄の時刻・位置がわかるので、はえなわの漂移した速度が得られる。漂移時ははえなわには一種の流速計として働き、この漂 移速度は大規模な流れの場を示す。
- はえなわ以外の漁にも小型水深水温計を応用できる可能性がある。
[その他]
研究課題名:はえなわを利用した超小型水深水温計の開発
予算区分 :官民交流共同研究
研究期間 :平成8年度(平成6~7年度)
研究担当者:水野恵介、岡崎 誠、渡邊朝生
発表論文 :A Micro-BT System for Tuna Longline Boats in View of Large Scale
Ocean Observing System. 遠水研研報,(32),1-15,1996