雌化養成ウナギ当歳魚からの採卵
[要約]
従来、当所では稚魚期にE2投与によって雌化し、約3年間飼育することにより天然親魚に匹敵する大きさとなったウナギを雌親魚として使用してきた。しかし、近年、雌化養成1年前後の当歳魚でも適切なホルモン処理により採卵可能であることが明らかになり、しかも自然産卵する割合や受精率が3歳魚に比べ高かった。また、このことは親魚養成のコスト削減につながり、良質の親魚を多量に確保することを可能とした。
愛知県水産試験場 内水面漁業研究所
[連絡先]0563-72-7643
[推進会議]水産養殖
[専門]魚介類繁殖
[対象]うなぎ
[分類]研究
[背景・ねらい]
人為的に加温ハウス養成したウナギはそのほとんどが雄であるため、愛知県水産試験場内水面漁業研究所ではシラス期に雌性ホルモンを投与して雌化させ、2年半から3年間飼育し、天然の雌に匹敵する大きさである平均体重800gになったウナギを雌親魚として使用している。親魚養成に時間とコストがかかるにもかかわらず、その受精率は親魚による個体差が著しく、平均では20%前後に過ぎない。そこで、親魚養成の期間、経費の削減及び新たな親魚の可能性を試みるため、雌化養成当歳魚についての催熟試験を行った。
[成果の内容・特徴]
- シラス池入れから9~13ヶ月の雌化養成当歳魚を使用した。平均体重は481.5g(253.1~767.7g)であった。これらの親魚に週1回、20mg/尾のサケ脳下垂体磨砕液を投与したところ、6週目以降から採卵可能となった。
- これら当歳魚の平均受精率は約50%であり、従来使用してきた3歳魚に比べて高かった。これは、一般に自然産卵の場合、人工授精の場合と比較して受精率は高い傾向にあるが、当歳魚では自然産卵する個体が約6割と高率なためと考えられた。
- これら当歳魚から得られた受精卵からふ化した仔魚は形態的にも問題はなく、無給餌生残も13~17日とこれまでの仔魚と変わりなかった。また、給餌飼育においても当所での最高記録である生存日数61日、体長9.70mmを記録した。
[成果の活用面・留意点]
雌化養成当歳魚を親魚として利用できるようになり、親魚養成の期間、コストを削減し、良質な親魚を多量に確保できるようになる。また、シラス池入れより1歳未満の若齢魚は摂餌率、餌料効率が2,3歳の高齢魚よりかなり高く、また、選別等によるストレスからくる摂餌不良もほとんど無い。従って、卵質改善を目的とした餌料試験にも適している。
[その他]
委託元:水産庁 内水面重要種資源増大対策委託事業
研究課題名:レプトケファレス育成技術開発
予算区分:国費
研究期間:平成13年度(平成9~13年度)
研究担当者:山田 智
発表論文等:ウナギの人工種苗生産、あいち農林水産試験研究ニュース,8号,p2,2000.