国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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研究活動における行動規範

「水産研究・教育機構行動指針(以下、「行動指針」という。)」に掲げられる水産研究・教育機構(以下、「機構」という。)の使命を果たすべく、研究に携わる職員が日々遂行する研究活動において行動指針に沿う研究倫理の確立に取り組み、「責任ある研究」を遂行するための拠り所となるよう、本行動規範を制定する。

1.研究の立案

 経済社会の変化や科学技術の動向など、研究を取り巻く環境の変化を的確に捉え、機構のミッションに照らして自らの果たすべき役割を明確にし、具体的な達成目標とそのために実施すべき課題を設定して研究に取り組む。

 研究課題の立案においては、課題解決の道筋に無理がないか、論理の飛躍がないかを真摯に確認する。研究の科学的な妥当性やオリジナリティなどを確認するため、先行研究を文献・特許情報等から誠実に確認し、他者のオリジナリティを正当に評価し尊重する。研究チームを組んで計画を立案する際には、チームの各人がアイディアや手法を明瞭な形で提示し、誰がいつ何を提示したかを誠実に確認し合う。

 また、機構が定める行動指針や関連規程、学協会が定める倫理綱領・行動規範などと、自分が計画している研究の目的・手法が整合するかを見定める。

 研究費の申請に当たっては、業績のねつ造や、誇大な成果を掲げることなく、真実に基づく誠実な記述を行う。

2.研究の遂行

(1) 研究費の適正な使用

 研究費の主たる原資が国民の税金であることを常に意識し、研究費の使用に当たっては、関連する諸規則を遵守し、適正な管理と効果的・効率的な執行に努める。

(2) 研究記録とその保存

 研究成果として示すデータの信頼性は、①研究データが適切な手法に基づいて取得されたこと、②データの取得に当たって意図的な不正や過失によるミスが存在しないこと、③取得後の保管が適切に行われてオリジナリティが保たれていることにより保証される。これらの要件を客観的に証明できるよう、研究活動においては必ずラボノートを適切に記録する。

 このことは研究上の不正な行為を防止する観点からも重要であり、事後の検証が行えるよう、論文等の発表に直接用いたものだけでなく、関連するラボノート及び取得した研究データも含め、研究記録の管理に関する規程に則り管理・保管する。

(3) 研究データの帰属と管理

 機構の業務として得られた研究データ等の研究成果等は機構に帰属することから、みだりに外部に持ち出したり、外部の者に使用させることなく、適正に管理する。また、共同研究先の研究成果等の保護についても十分に配慮し、法令や守秘義務等で持ち出しが許可されていない研究成果等の外部研究機関からの持ち込みや、違法な手段での入手を行わない。

(4) 情報の適切な取扱い

 研究のために収集・生成した資料やデータ、その他研究遂行上知り得た情報については、適正かつ安全に管理し、守秘すべき情報を明確に意識・把握し、機密保持を徹底する。個人に関する情報の提供を受けて研究を行う場合は、提供者に対してその目的、収集方法について分かりやすく説明し、提供者の明確な同意を得る。

 業務情報を外部に持ち出す場合は所定の手続きをとるとともに、パソコンや記録媒体の紛失、ウイルス感染等の事故を発生させないよう適切な対策を講じ、情報セキュリティの確保に努める。

(5) 環境・安全・生命倫理等への配慮

 施設・機械・装置、薬品等の使用に際しては、取扱方法、関連法令・規程等を遵守し、薬品等の最終処理まで含め安全と環境に配慮した管理を行う。特に、毒物・劇物、麻薬・向精神薬、放射性物質、病原体など、人の生命・健康に危害を及ぼすおそれのある物質等については、法令等に基づき厳正に取り扱う。

 また、遺伝子組換え生物の管理等について法令等を遵守するとともに、動物実験の実施については、動物の愛護と生命尊重の観点に立ち、動物の飼養・保管や苦痛の軽減等に関する法令・基準等及び動物実験規程に基づき適正に実施する。

(6) 安全保障への配慮

 我が国及び国際社会の平和及び安全の維持のため、研究機器等の海外への持ち出しや技術情報の提供等に際しては、安全保障輸出管理に関する法令の遵守を徹底する。研究遂行時のみだけでなく成果発信等に当たっても十分に注意する。

 自らの研究の成果が、意図に反して破壊的行為に悪用される可能性もあることを認識し、研究の実施、成果の公表においては、社会に許容される適切な手段と方法を選択する。

(7) 外部資金による受託研究等に係るルール及び契約事項の遵守

 外部資金による受託研究等の実施に当たっては、各研究資金配分機関が定めたルールを遵守し、配分された資金について、申請した研究計画から逸脱した目的には使用しない。また、知的財産権の取扱いや秘密の保持、成果の公表等については、委託契約書等を遵守する。

3.成果の公表

(1) 成果の公表のあり方

 研究成果の発信は、研究により得られた新たな知見や発見を研究者コミュニティーで共有するためだけでなく、研究成果を社会へ還元するために重要であることを認識する。その観点から、学術論文、学会発表、マス・メディアを介した公表、特許出願等、研究成果の技術移転など、成果の発信の手段とその時期を適切に選択する。

 研究成果の公表に際しては、データや論拠の信頼性の確保に十分留意し、正確かつ分かりやすい情報の提供に努める。また、行政や業界、消費者等に対して大きな影響を与える可能性がある内容については、関係機関に事前に連絡するなど、適切な対応を行う。委託契約や共同研究契約等によって成果の公表が制限されている場合には、所定の手続きを経てから公表する。

(2) 研究上の不正行為の防止

 研究成果の発表、報告に際しては、ねつ造、改ざん、盗用等の不正な行為や、これに加担する行為を行わず、研究不正防止に関連する諸規則を遵守する。

(3) 論文等の発表のあり方

 研究成果については、特許の取得等の合理的な理由による制約がある場合を除き、積極的に発表する。正直さ、正確さ、効率性、客観性を満たした責任ある発表を行う。

 オーサーシップ(論文の著者として表示されること)には、著者が論文等に記した成果に誤りや虚偽がなく良質のものであるということを保証するという義務と責任を伴うもので、以下の4つの条件1)を満たす必要がある。①研究の構想・デザインや、データの取得・分析・解釈に実質的に寄与していること、②論文の草稿執筆や重要な専門的内容について重要な校閲を行っていること、③出版原稿の最終版を承認していること、④論文の任意の箇所の正確性や誠実さについて疑義が指摘された際、調査が適正に行われ疑義が解決されることを保証するため、研究のあらゆる側面について説明できることに同意していること。

 これを満たさない者を著者とすること(ギフト・オーサーシップ)や満たす者を著者としないこと(ゴースト・オーサーシップ)は、オーサーシップの偽りとなり、許されない行為である。

 オーサーシップの条件を満たさない関係者、具体的には研究費を獲得した人や所属長・研究代表者、アドバイスを行った人、草稿執筆に当たって文章面・英作文などにおいて協力してくれた人などについては、謝辞などの形で明記する。どのような寄与・貢献を行ったかも明記することが望ましい。

 研究に当たって研究費の助成を受けた場合は、研究助成元への説明責任を果たすため、また、民間企業から助成を受けた場合は利益相反の観点からも、助成元を明記する。

 二重投稿・二重出版や分割発表は業績の水増しとなるだけでなく、論文の不必要な審査を強い、科学の進展を妨害しかねないので行わない。

 研究者が通常取り扱う論文、書籍中の文章・図・表・写真・イラスト、講演、新聞記事、雑誌記事などはすべて著作物であり、他人の著作物のみならず自分が書いたものであっても、著作物を二次利用(コピー、改変、二次的著作物の作成、転載等)する際には、著作権法を遵守し、その著作物の著作権者に了解を得たり、各著作権者が決めている規定やガイドラインを参照し、適切に利用する必要がある。ただし著作物の種類(法令条文等)や条件(保護期間満了等)によっては許可が必要ない場合もある。また、他人の著作物を「引用」する場合や、教育や試験の目的で利用する場合、正当な方法で行う限り了解を得る必要はない。

 先行研究を十分調査し、以下に注意を払って適切な引用を行う。①引用する著作物が公表済であること(ウェブ公開なども含む)、②引用する必然性があること(自説の補強など)、③引用に当たる部分を明確に示してあること(引用部分を括弧で括ったり、書体を変えるなど、自分の著作物ではないことを明示する)、④引用する著作物を許可なく改変しないこと、⑤自分の著作物が主たる部分で引用部分は従たるものであること、⑥出典を明記すること。

 これらの要件を満たさずに他の著作物を利用した場合、著作権違反になるだけでなく、研究不正行為として盗用とみなされることがある。

(4) 研究活動の国民への説明

 科学技術や研究活動が国民に正しく理解され、信頼を受け、支持されるよう、国民との対話と交流に積極的に参加して相互理解を深めるとともに、多様な媒体を効果的・効率的に活用して、研究内容や成果を社会に対して分かりやすく説明する。マス・メディアからの取材に関し、取材内容が政策に係わるものや、社会的影響が大きい事案等については、組織として適切に対応する。

4.成果の社会還元

 研究の成果を円滑に社会・国民に還元するため、共同研究や技術移転等を通じた産学官連携活動に積極的に参加する。また、社会の様々な課題の解決と福祉の実現を図るために、政策立案・決定者に対して政策形成に有効な科学的助言の提供に努める。

 特許、著作権等の知的財産権の取得、活用に努めるとともに、第三者の知的財産権を尊重する。産学官連携活動においては、機構の職務と個人的利益との間に利益相反による疑義を生じさせ、社会的信頼を損なうことがないよう適切に対処する。

5.研究の評価と改善

(1) 研究の評価と改善

 研究計画の進捗状況や研究終了後における研究成果について、自ら厳正に点検・評価し、研究の進展や、研究の質、自らの意欲と資質・能力の向上に努める。また、外部評価を受ける場合は、評価者の意見、助言等を真摯に受け止め、今後の研究の改善に反映させる。

(2) 審査等への参加

研究者集団の一員として、投稿論文の審査等の相互評価に積極的に参加する。他者の研究成果を評価する場合には、恣意的な視点を混入させず、専門家として公正で公平な評価を行う。また、審査等によって知り得た情報を不正に流用したり漏洩することなく厳正に取り扱う。

6.良好な研究環境の確保

 健全かつ公正な研究環境を維持するため、職場内の意見交換を活発に行い、自由、公平、透明性、公開性の担保された職場環境を確立する。研究チーム内でデータに基づく議論を日常的に行い、不正行為を未然に防ぐ研究環境の整備に努める。

 男女共同参画をはじめとして、お互いの個性や能力を尊重した行動をとるとともに、性別・年齢・地位・国籍・信条・宗教・疾病・障害等による差別や不当な取扱い、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなど、相手の人格と尊厳を侵害するような言動を行わない。

引用元

1)国際医学雑誌編集者委員会(International Committee of Medical Journal Editors:ICMJE)の投稿統一規程,“Recommendations for the Conduct,Reporting,Editing,and Publication of Scholarly Work in Medical Journals”,Updated December 2013,http://www.icmje.org/icmje-recommendations.pdf 日本語訳は日本学術振興会, 科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-, 2015 による