国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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ネオニコチノイド・フェニルピラゾール系殺虫剤の河口干潟域での検出 ―海産甲殻類への影響は初夏で最大に―

公表日:2019 年 10 月 4 日

 

研究実施者:水産技術研究所 環境・応用部門 環境保全部 羽野健志ほか

 ネオニコチノイド・フェニルピラゾール系殺虫剤計6種を瀬戸内海河口干潟域で検出し、その濃度は各殺虫剤が使用される時期に高い傾向にありました。これに連動して海産甲殻類への影響の程度も季節で変動し、初夏に最大となることが分かりました。

 水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所の研究チームは、2015-2018年の瀬戸内海での採水調査から、陸域で使用された殺虫剤が河川を介して河口干潟域に達していることを確認しました。また、今回調査した殺虫剤の海産甲殻類への影響の程度は初夏に最大となると試算されました。

①河口干潟域の採水調査の結果、ネオニコチノイド系殺虫剤5種(イミダクロプリド(Imi)、ジノテフラン(Din)等)、およびフェニルピラゾール系殺虫剤フィプロニル(Fip)が検出され、それらの濃度は水田における使用時期と概ね合致する季節変動を示しました。中でもDinは最大1.055 µg/Lで検出されました。Fipは検出率9%、最大濃度0.091 µg/Lで、6~7月(初夏)に限定して検出されました。

②同海域での生物調査の結果、3種の海産甲殻類(クルマエビ等)が観察され、その出現には季節・年変動があることが分かりました。

③各農薬の海産甲殻類種に対する影響濃度(EC50値)注1を調べた結果、FipはImi、Dinに比べ約300~6000倍強い毒性を示しました。

④環境中の殺虫剤濃度に基づき、海産甲殻類への影響を試算した結果、Fipが検出された初夏において、海産甲殻類に対する影響が最大になる注2ことが明らかとなりました。

注1:致死、行動異常などの影響を供試個体の半数が受ける濃度

注2:各生物種が影響を受ける個体の割合で、クルマエビで最大21%、100尾中21尾が影響を受けるという試算。なお、Fip未検出時は全ての検体で0.5%以下。

 以上、本研究は、実環境中では殺虫剤による海産甲殻類への影響の程度は大きく季節変動すること、またその影響を最小限にするためには、検出された殺虫剤濃度の多寡のみではなく、それらへの影響が大きい殺虫剤の使用を優先的に検討・考慮する必要があることを示しています。

本研究は科学研究費(16H04692)の助成を受けて行いました。

 この研究成果は、Hano et al., “Occurrence of neonicotinoids and fipronil in estuaries and their potential risks to aquatic invertebrates”として国際的な環境系雑誌『エンバイロンメンタル ポリューション』に、2019年5月14日付のオンライン版に掲載されました。https://doi.org/10.1016/j.envpol.2019.05.067

図
1)2015-2018年における瀬戸内海河口干潟域での主な殺虫剤の季節変動。(2)採水と同時に行った同海域での甲殻類種の出現時期。(3)海産甲殻類3種への主な殺虫剤の毒性の比較。(4)環境中濃度と影響濃度をモデル化し、影響が大きい時期を予測。