国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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マツカワとヒラメの早期雌雄判別

[要約]
 高周波プローブを装着した超音波断層撮影装置を用いた、マツカワとヒラメの形態的性差識別技術を開発し、マツカワとヒラメ共に1歳魚(1歳2カ月)で雌雄判別可能であることを確かめた。


北海道区水産研究所・海区水産業研究部・資源培養研究室
[連絡先]0154-91-9136
[推進会議]北海道ブロック水産研究関係試験研究推進会議
[専門]増養殖技術
[対象]かれい・ひらめ
[分類]普及


[背景・ねらい]
  通常、種苗生産機関では限られた数の水槽により生産事業が実施されており、マツカワやヒラメなど大型魚の場合、種苗の遺伝的多様性を保持する上で余裕をもった数の親魚を養成できるケースは希である。従って、必要数の親魚を合理的に養成するための早期性判別技術の開発が望まれている。
  この研究では、医療機器である超音波断層撮影装置によるマツカワとヒラメの早期性判別技術を樹立して、現行事業への適用を図ることをねらいとした。


[成果の内容・特徴]

  1. 解像度の高い高周波プローブを装着した超音波断層撮影装置による生殖腺の形態の雌雄差に基づく性判別法を開発した(図1)。
  2. 日本栽培漁業協会厚岸事業場、北海道栽培漁業総合センター、岩手県水産技術センターとの共同で、マツカワを用いて超音波断層撮影による雌雄判別が可能な最小サイズとその時の年齢を調べ、1歳魚(1歳2カ月)で判別可能であることを確かめた(表1)。
  3. 北海道立中央水産試験場との共同で、ヒラメにおいても1歳魚(1歳2カ月)で判別可能であることを確認した。


[成果の活用面・留意点]
  この研究に用いた超音波断層撮影装置は医療目的の機器であり高価ではあるが、親魚として利用できるまでの飼育コストを考慮し、共同利用等の方法で事業へ適用することを進言したい。


[具体的データ]

図1
図1.マツカワの生殖腺の形態的性差を示す模式図と超音波断層撮影装置により観察した1歳11ヶ月魚雌雄の体腔後方断層図 

 

表1
表1.超音波断層撮影によるマツカワ各年齢の性判別


[その他]
研究課題名:医療機器等による形態学的雌雄判別並びに血清診断による生化学的雌雄判別
予算区分 :漁業調査取締費(生態系保全型)
研究期間 :平成11年度(平成7年~平成11年)
研究担当者:北海道区水産研究所 海区水産業研究部 海区産業研究室 松原 孝博
発表論文等:Application of ultrasonography to non-invasive sexing based on the sexual dimorphism in gonads of immature barfin flounder, Verasper moseri.Fisheries Science 65(2), 244-247, 1999.