近赤外分光法による凍結ミナミマグロ肉脂肪量の測定
[要約]
近赤外分光法で凍結ミナミマグロ肉の脂防量を非破壊で迅速に測ることを試みた。その結果,化学分析値との間で,相関係数0.95,標準誤差3%の検量線が得られ,近赤外分光法で脂肪を迅速に全数測定することが可能であることを見出した。
中央水産研究所加工流通部品質管理研究室
連絡先 045-788-7667
推進会議 水産利用加工
専門 品質評価
対象 まぐろ
分類 研究
[背景・ねらい]
マグロはトロが珍重され脂ののり具合で価格が決定される。さらに,健康志向か高まる中で,マグロの脂肪も注目され,その評価がさらに厳格に求められている。しかし,その評価法は凍結マグロの切断した尾部肉を見て判断するだけの古くからの高度の熟練を要する方法で行われている。また,サクになったマグロの評価は難しい。この間題を解消するために,近赤外分光法による非破壊状態で迅遠に脂肪を分析するシステムを開発する。
[成果の内容・特徴]
- 従来の化学分析法(ソックスレー法)で求めたミナミマグロ肉の粗脂肪量は0.1~35.1%,部位別では腹肉の大トロは4.5~32.3%,中トロは1.6~24.7%,赤身は0.1~2.0%で,背肉の中トロは1.4~17.0%,赤身は0.7~5.4%,ばらつきが大きいことが判明した(図1)。
- ミナミマグロ魚油の最大吸収波長は25℃で924nm,-40℃あり,926nmであり,温度依存性はほとんど認められなかった(図2)。
- 凍緒マグロ肉キャリブレーション(検量線作成)用試料55検体の近赤外吸収スペクトルの二次微分分析値と化学分析値との間の線形重回掃分析の結果から,キャリブレーションの精度を,予測用試料50検体を用いて評価した緒果,脂肪量の予測値の単相関係数は0.958,標準偏差(SEP)は±2.99%,バイアスは0.574%であった(表1,図3)。
- 解凍マグロ肉では,脂肪量の予測値の単相関係数は0.944,SEPは±3.38%,バイアスは0.369%であった(表1,図3)。
- 従来の大トロ,中トロ,赤身という大まかな仕分けに対し,近赤外分光法によると3%の精度でマグロのサクの脂ののり具合を測定することが可能であった。
[成果の活用面・留意点]
- マグロのサク取りの製造ラインあるいは流通ラインに,近赤外分光法の結果を組み込み,脂肪量の全数測定ならぴに表示をするシステムの開発を行うことができる。
- 本結果は魚肉の切断面の脂肪の測定に適用できるが,丸のマグロには適用できない。
- 冷結品と解凍品に相互のキャリブレーションを適用した結果,SEPの増加が認められた。精度を高めるためにはそれぞれのキャリブレーションを用いる必要がある。
[その他]
研究課題名:非破壊による品質評価法の確立
予算区分 :経常・小事項
研究期間 :平成10年度(8~10年)
研究担当者:松田由美子
発表論文等:近赤外分析法による凍結ミナミマグロ肉脂肪量の測定,第44回低温生物工学年会及びセミナー講演要旨,p23,1998。