国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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テラピア筋の基質タンパク質の特性

[要約]
 魚肉の品質特性としての物理的硬さに焦点をあて,基質タンパク質タリンの性質を調べた。テラピア筋肉からタリンの抽出方法を検討し,筋原繊維からミオシンを除き,IZIブラシを調製するタリンの抽出方法を確立した。テラピア筋肉より得られてタリンは分子量220Kdおよび190Kdの成分から構成されることを明らかにした。


中央水産研究所加工流通部加工技術研究室
連絡先    045-788-7665
推進会議    水産利用加工
専門    品質評価
対象    魚類
分類    研究


[背景・ねらい]
水産物の品質は,鮮度,呈味性など多様な要素から構成されているが,その中で肉の硬さは肉質評価の重要な要素である。生筋では死後のカルシウムイオンの遊離に伴って起こる筋原繊維Z線の崩壊が食肉の軟化を起こすと考えられている。魚肉の品質特性としての物理的な硬さにおける基質タンパク質の果たす役割を明らかにするために,筋肉の筋原繊維と結合し,筋原繊維の接合や張力発生に関与する基質タンパク質の一種であるタリンの性質を明らかにする。


[成果の内容・特徴]

  1. ニワトリ砂嚢の平滑筋よりタリンを抽出する方法は,魚肉などの骨格筋に適用できないため,抽出方法を検討した。その結果,テラピア骨格筋の筋原繊維からミオシンを除いたIZIブラシ(Z-bandswithI-filamentsonbothsides)を調製してから抽出する方法を確立した。このことから,骨格筋と平滑筋ではタリンの存在状態が異なり,アクチン等との結合が強固なことが推定された。
  2. ティラピア筋肉のタリンは分子量220Kdおよび190Kdの成分から構成されることが明らかとなった
  3. 今後は,魚類由来のタリンに対する特異抗体を用いて,Z線崩壊と肉質軟化との関係を明らかにする。


[成果の活用面・留意点]
魚肉から精製したタリンおよびその抗体を用いて,一次構造および筋原繊維内での局在性を解析することにより,肉質評価の生化学的指標としての応用が可能となる。


[その他]
研究課題名:水産物の締結組織タンパク質に関する研究
予算区分 :水産振興
研究期間 :平成10年度
研究担当者: 中村弘二,石田典子
発表論文等:平成11年度日本水産学会春季大会講演要旨