脂肪を多量に含む乳化すり身の製造技術の開発
[要約]
冷凍すり身は弾カ形成能が強いものの,脂肪が少ないという欠点をもつ中間素材である。この欠点を克服するために,乳化すり身の製造について検討し,攪拌条件の制御による魚油の微粒化・タンパク質組成の調整によって高濃度の魚油を安定的に保持できる中間素材が製造できることを明らかにした。
中央水産研究所加工流通部
連絡先 045-788-7667
推進会議 水産利用加工
専門 加工流通技術
対象 すり身
分類 研究
[背景・ねらい]
従来冷凍すり身の製造において脂肪は品質劣化を促進し弾力形成能を低下させるとされ,脂肪を多く含む冷凍すり身の開発は不可能と考えられてきたが,魚油には健康性成分が多く含まれることも明らかになってきた。そこで,原料の魚肉に魚介類から抽出した油を再度添加して,栄養的・機能的・嗜好的に優れた中間素材を開発することを目的とし,その製造方法について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 乳化すり身のゲル形成能は,すり身中の魚油粒子のサイズに影響された。そこで,すり身中のタンパク質の機能性を保持しながら脂質を微粒化する方法について検討した。その結果,高い攪拌能力と冷却機能を備えた真空高速攪拌機を使用し,乳化段階に応じた攪拌条件(低速攪拌と高速攪拌の組合わせ等)の設定によって,すり身中の脂質を微粒化させることができた(図1)。また,この方法で魚油を微粒化して作成した乳化すり身は,魚油含量が高いほどゲル形成能が高まることが明らかとなった(図2)。
- すり身のようにタンパク質濃度の高い系に脂質を乳化させるとき,魚油乳化可能量はタンパク質組成に大きく影響された。すり身に各種タンパク質素材を配合させ,すり身の魚油乳化可能量を大幅に増大することができた(図3)。
[成果の活用面・留意点]
栄養的・機能的に優れた乳化すり身の特性について本試験で得られた成果を業界に普及し、その用途開発を促進する。
[その他]
研究課題名:機能栄養マニュアル化基礎調査事業(魚肉を素材とする中間素材の開発)
予算区分 :水産庁委託事業
研究期間 :平成6~10年度
研究担当者:岡崎恵美子
発表論文等:平成8年度日本水産学会春季大会講演要旨集
平成9年度日本水産学会春季大会講演要旨集.