ホシガレイ種苗生産時に発生する初期減耗とシオミズツボワムシ摂餌の関係
[要約]
仔魚期の大量へい死はふ化後15日齢前後に集中して発生し、初期餌料であるシオミズツボワムシを摂餌していない個体が多くみられた。ふ化仔魚の無給餌飼育でも15日齢までに生残率が低下し、初期減耗の要因は飢餓によるものと考えられた。
福島県水産種苗研究所
[連絡先]0240-32-5311
[推進会議]東北ブロック水産業関係研究試験推進会議
[専門]飼育
[対象]ホシガレイ
[分類]研究
[背景・ねらい]
ホシガレイの種苗生産において、生残率が低いことがひとつの大きな問題点となっており、大量へい死はふ化後15日齢前後の仔魚期に発生している。その要因を解明するため、初期餌料であるシオミズツボワムシ(以下、ワムシ)の摂餌との関係を調査した。
[成果の内容・特徴]
- 種苗生産を行った生産群13ロットにおける大量へい死の発生状況を観察した。全ての生産群において急激に仔魚が減少する状況がみられ、大量へい死の発生した日齢は、15日齢を中心とした時期に集中した(図1)。
- ふ化仔魚5ロットについて一部をサンプリングし、ビーカー内で無給餌で飼育を行い、日齢ごとの生残率を測定した。その結果、9~15日齢にかけて急激に生残率が低下し、飼育下における大量へい死の発生状況とよく似た傾向を示した(図2)。
- 前記5ロットについて通常の飼育を行い、仔魚1尾あたりの生物餌料の摂餌数を調査した。7日齢に開口した仔魚は、9日齢からワムシの摂餌を開始した。15日齢までワムシ摂餌数の増加が見られたが、ほとんど摂餌していない個体もみられた(図3)。
- アルテミアの摂餌は、給餌を開始した12日齢から確認され、20日齢以降はワムシ摂餌数の減少に伴い摂餌数が急激に増加し、26日齢以降は300個を上回った(図4)。
- これらの結果から、15日齢前後にみられる初期減耗は、初期餌料であるワムシを摂餌せず飢餓状態になっていることが大きな発生要因であると考えられた。
[成果の活用面・留意点]
初期生残率の向上を目的として飼育環境について検討するには、仔魚全体が摂餌開始から15日齢までに活発な摂餌活動を行える環境を作り出すことが効果的であり、またその開発に本情報が参考になる。
[具体的データ]
図1 大量へい死が観察された日齢
図2 ふ化仔魚の無給餌飼育での生残率
図3 仔魚1尾のワムシ摂餌数
図4 仔魚1尾のアルテミア摂餌数
[その他]
研究課題名:ホシガレイ放流基礎調査事業
予算区分:資源増大技術開発事業、国庫1月2日
研究期間:平成12年度~16年度
研究担当者:佐久間 徹
発表論文等:平成13年度資源増大技術開発事業報告書(予定)
第1回ホシガレイ栽培漁業技術開発推進検討会にて発表