国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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クロマグロの腹腔内温度から摂餌行動を探る

遠洋水産研究所 近海かつお・まぐろ資源部 まぐろ研究室
[連絡先]0543-36-6034
[推進会議]遠洋漁業試験研究
[専門]資源生態
[研究対象]まぐろ
[分類]研究


[ねらい・目的と成果の特徴]

  • クロマグロの行動生態に及ぼす生物学的要因を明らかにする。
  • 腹腔内に装着した記録型標識の水深、環境水温、腹腔内温度の時系列データから摂餌活動を抽出した。
  • 鉛直移動、水平移動と摂餌活動との関連性を明らかにすることが出来た。

[成果の活用面等]

  • 腹腔に装着した記録型標識データの行動生態解明への利活用


[具体的データ]

図1
図1:クロマグロは外部環境水温より高い体温を保持している。餌生物は外部環境と同様の体温であることが多い。それらの餌を捕食したときに、餌とともに環境水も飲み込むことから腹腔内温度が低下する。このことを利用して、腹腔内温度の変化から摂餌活動を推測することが可能である。図1はクロマグロ幼魚に装着したアーカイバルタグタグから回収したデータによる黒潮親潮移行域での水深、腹腔内温度、外部環境水温の変化の一例である。矢印で示した部分4箇所のうち3箇所では腹腔内温度だけが大きく低下している。この低下は潜行行動によるものではなく、摂餌活動によるものと判断される。東シナ海に分布しているときにはこのようなサインは常に水深変化と伴っていた。すなわち潜行行動と同調して観察された。

 

図2
図2:このことから図2のように、クロマグロ幼魚は東シナ海では摂餌のために水温躍層下へ潜行し、黒潮親潮移行域では潜行するよりもむしろ水平的にフロントを越えて摂餌することが多いものと推測される。


[その他]
研究担当者:山田陽巳
発表論文等:
Kitagawa, T., Nakata, H., Kimura, S., Sugimoto, T. and Yamada, H. (2002): Differences in vertical distribution and movement of Pacific bluefin tuna (Thunnus thynnus orientalis) among areas: the East China Sea, the Sea of Japan and the western North Pacific. Mar. Freshwat. Res., 53: 245-252.
Kitagawa, T., Nakata, H., Kimura, S. and Yamada, H. (2002): Diving behavior of immature Pacific bluefin tuna (Thunnus thynnus orientalis) recorded by an archival tag. Fish. Sci., 68 Supplement I: 427-428.