小型底びき網で漁獲される中・小型エビ類の活魚出荷による付加価値の向上
[要約]
小型底びき網で漁獲される中・小エビを活魚で出荷することにより、単価の向上だけではなく、選別出荷にかかる時間が増えたことによる操業時間の短縮、ヒラメやマダイ稚魚の再放流時の活力向上、漁業者の資源管理意識の向上が図れた。
福岡県水産海洋技術センター研究部
[連絡先]092-806-0854
[推進会議]西海ブロック
[専門]資源管理
[対象]他のエビ類
[分類]普及
[背景・ねらい]
現在、各地で水産物のブランド化や高付加価値化の取り組みの一環として、高鮮度で高品質な水産物を漁獲、出荷するための技術開発が行われている。小型底びき網漁獲物の慢性的な魚価安を打開し、魚価経営の改善を図るため、中エビ(キシエビ、ツノソリアカエビ等)、小エビ(アカエビ、サルエビ、トラエビ等)の活魚出荷に取り組んだ。
[成果の内容・特徴]
・中、小エビを活魚で出荷することにより、以下の成果が達成できた。
(1)単価の向上
中エビの平均単価は約1.4倍に、活魚出荷分だけ見ると約1.6倍に向上した。また小エビの平均単価も約1.3倍に、活魚では約1.5倍に向上した。(図1、2)
(2)他魚種への波及効果と漁業者の意識改革
この試みを通じて、中・小エビ以外の漁獲物についても取り扱いが丁寧になり、いかに漁獲物を高く売るか、また漁獲時の活力を上げるための工夫(袋網の目合い拡大や、1回あたりの曳網時間の短縮等)を考え始めるようになった。
(3)操業時間の短縮
この試みにより、活きエビ、死エビの選別作業に時間を要するため、1回の曳網時間を短縮するなどして、帰港時間が30~60分ほど早くなった。その結果、資源に対する漁獲圧が減少した。
(4)再放流魚の活力向上
漁獲物を丁寧に扱うようになったことや、1回の曳網時間を短縮したことなどから、混獲されるマダイやヒラメの稚魚を再放流する場合の活力が高くなった。
[成果の活用面・留意点]
- この成果は、小型底びき網漁業者をはじめとする全ての漁業者の意識改革のために役立っている。
- 漁港から市場までの輸送時間中の酸欠防止策の検討が必要である。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:小型底びき網の漁業管理手法の開発に関する研究
予算区分 :国庫補助
研究期間 :平成11~15年度
研究担当者:深川 敦平
発表論文:平成12年度福岡県水産海洋技術センター事業報告