日本海洋学会岡田賞(水産資源研究所 田中雄大)
田中雄大研究員、日本海洋学会岡田賞を受賞
掲載日:2021年10月20日
田中雄大研究員(所属:水産資源研究所水産資源研究センター海洋環境部寒流第2グループ)が、2021年度日本海洋学会岡田賞を受賞しました。
この賞は、海洋学において顕著な学術業績を挙げた若手研究者に授与されるもので「西部北太平洋・縁辺海における乱流鉛直混合による栄養塩輸送に関する研究」の成果が、海洋学の発展に大きく寄与するものとして評価されました。
受賞論文
西部北太平洋・縁辺海における乱流鉛直混合による栄養塩輸送に関する研究
受賞者
田中 雄大
受賞理由
西部北太平洋及びベーリング海、オホーツク海等の縁辺海は、世界有数のプランクトン生産・漁業生産の高い海域として知られています。田中研究員は「乱流鉛直混合(注)」という物理過程に注目し、高いプランクトン生産の維持に関わる栄養塩輸送過程を、最先端の海洋観測機器を用いた船舶観測および数値モデルにより、定量的に解明する研究を行ってきました。受賞対象となった主な研究成果は、次の2点です。
- ベーリング海南東部大陸斜面での活発なプランクトン生産の維持機構として、乱流鉛直混合に伴う下層からの栄養塩と鉄輸送の重要性を示した。
- 黒潮が通過する伊豆海嶺・トカラ海峡、津軽暖流が通過する津軽海峡など、強い海流が起伏に富んだ海底地形上を通過する海域が、乱流鉛直混合に伴う下層からの栄養塩輸送のホットスポットである事を示した。
これらの研究成果により、浮魚の餌となるプランクトンの生産性が高い海域の出現や消長過程を明らかにし、漁場への来遊機構の解明につながることが期待されます。
さらに、田中研究員は近年、水中グライダーによる観測システムの開発や、機構が実施・維持する厚岸沖定線観測など、我が国周辺での漁場形成予測や海況予報の精度向上に資する基盤的な観測研究にも取り組み、評価を受けました。
注:海洋内部の非常に不規則な流れ(乱流)によって、上下の海水が混合されること。
受賞講演は、日本海洋学会2021年度秋季大会において、2021年9月15日にオンラインで行われました。
受賞者の写真(田中雄大研究員、日本海洋学会岡田賞を受賞)
水中グライダーの写真(海洋観測調査で活躍)