国立研究開発法人 水産研究・教育機構

お問い合わせ

アユの摂餌なわばり

[要約]
アユの摂餌なわばりでは、なわばり個体の出現数と1個体当たりのなわば りサイズが、個体数密度に応じて変異する。なわばりサイズはなわばり個体の 成長を制約するが、群れ個体がなわばり個体の成長を上回ることはない。

中央水産研究所・内水面利用部・魚類生態研究室
[連絡先]   0268-22-0594
[推進会議]    内水面水産業試験研究推進会議
[専門]    資源生態
[対象]    あゆ
[分類]    普及


[背景・ねらい]
 全国各地の河川において、遊漁者のニーズに応えてアユの種苗放流が行われている。半世紀近く前に策定された適正放流基準には現実にそぐわない点が散見さ れ、放流効果の向上を目指して、見直しの必要性が生じている。

[成果の内容・特徴]

  1. 河川環境を模した複数の流水池に、個体数の異なる実験集団を放し、行動観察を行った。池底面には藻類が繁茂し、アユはそれを餌として利用することができた。
  2. 個体数密度が高くなるにつれて、なわばり個体の出現数は増加した(図1)。
  3. 個体数密度が高くなるにつれて、1個体当たりのなわばりサイズは減少した。(図2)
  4. 個体数密度が高くなるにつれて、各個体の成長速度は鈍くなるが、群れ個体がなわばり個体の成長を上回ることはなかった(なわばりは機能していた)(図3)。
  5. アユのなわばりサイズは概ね1m2であるという従来の所見は、否定された。

図1図2図3

 

[成果の活用面・留意点]

  1. 天然遡上魚の有無を勘案し、漁場特性に応じた放流量操作が有効になる。
  2. 放流量を控えることにより、「大物釣り」をアピールできる漁場が作出される。
  3. 放流量を増やすことにより、「数釣り」をアピールできる漁場が作出される。
  4. 放流魚の再生産機構を解明することにより、さらに効率的な放流手法の開発が期待される。

[その他]
研究課題名:両側回遊魚の個体群維持機構の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成3年度(昭和63~平成6年)
研究担当者:井口恵一朗
発表論文等:Sexual asymmetry in competitive ability in the immature ayu
            Plecoglossus altivelis, J. Ethol., 1996(in press) 
            Effect of competitor abundance on feeding territoriality in a
            grazing fish, the ayu Plecoglossus altivelis, Ecol. Res.,
            1996(in press)