有明海産珪藻リゾソレニア・セティゲラに感染するウイルスの分離培養に成功
瀬戸内海区水産研究所 赤潮環境部 赤潮生物研究室
[連絡先]0829-55-3695
[推進会議]漁場環境保全
[専門]赤潮・貝毒
[研究対象]植物プランクトン
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- ノリ色落ちの原因となる珪藻類とそれらに感染するウイルスの相互関係を解明することにより、珪藻赤潮を防除し、ノリ養殖の安定化を図る。
- 珪藻リゾソレニア・セティゲラに感染する1本鎖ウイルス(RsV)の分離培養系を確立した。珪藻ウイルスの発見および培養系の確立は、いずれも世界で初めての事例である。
- RsVはきわめて高い宿主特異性を持ち、感染後1~2日で約1000~4000倍に増殖する能力を持つことを解明した。
[成果の活用面等]
- 本成果は、珪藻類の挙動にウイルス感染が影響を与えている可能性を示す。将来的に、リゾソレニア・セティゲラ以外のノリ色落ち原因珪藻を宿主とするウイルスを探索し、珪藻とウイルスの相互関係を詳細に解明することにより、生物学的手法による珪藻赤潮防除技術の開発に繋がるものと期待される。
[具体的データ]
新奇ウイルスRsVは、珪藻リゾソレニア・セティゲラ(写真A)に感染し、1~2日以内に宿主細胞を死滅させた。死滅したリゾソレニア・セティゲラ細胞(写真B)からは約1000~4000個の子孫ウイルス粒子(写真C)が放出された。また、RsVの最大収量は1mlあたり3.85×108個に達した。
RsVの宿主特異性は高く、リゾソレニア・セティゲラ以外の海産微細藻類31種に対して影響しないことが確認された。また、RsVの保存性は高く、冷暗所に2週間以上静置した場合でも、力価(ウイルスの活性)に顕著な変化はみられなかった。