国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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麻ひ性貝毒原因プランクトンGymnodinium catenatumの出現状況と養殖マガキの毒化予察

[要約]
仙崎湾に出現するG.catenatum細胞密度の推移と同湾の養殖マガキの麻ひ性貝毒値(PSP)の変動を過去10年間について調べた。また、湾内のG.catenatumの水平鉛直分布調査、24時間連続観測調査なども実施した。その結果から養殖マガキの毒化を簡易に予察できる「仙崎湾におけるG.catenatum の出現細胞数による養殖マガキの毒化予察指標」を作成した。


山口県水産研究センター内海研究部環境病理グループ(旧:山口県内海水産試験場環境生物科)
[連絡先]083-984-2116
[推進会議]漁場環境保全
[専門]赤潮・貝毒
[対象]プランクトン
[分類]調査


[背景・ねらい]
 山口県仙崎湾に出現する麻ひ性貝毒原因プランクトンにはAlexandrium catenella, A.tamarense, Gymnodinium catenatum の3種類が知られており、同湾の養殖マガキの毒化には主としてG.catenatum が関与している。近年、マガキの毒化は晩秋から初冬にかけて経常的に起こっており、その都度出荷規制がとられている。そこで、G.catenatumの出現細胞数を調べることにより、養殖マガキの毒化を予察することを試みた。


[成果の内容・特徴]

  • 仙崎湾内の調査点の貝毒原因プランクトンの出現細胞密度の推移と同湾の養殖マガキの毒化の変動を過去10年間について検討した。その考察結果を、表1のような毒化予察の指標として作成した。
  • 本種は細胞密度が1l単位と低いレベルでマガキの毒化が起こり、パッチ状(細胞集塊)で鉛直移動することがわかった。この結果からプランクトン調査の場合、漁場内に水平方向で数点と、その表・中・底層と鉛直方向に数点の採水が必要である。


[成果の活用面・留意点]

  • 現在、貝毒モニタリングにおいて、この指標を基に貝毒検査の実施や養殖業者への指導を実施し、中毒事故防止に役立てている。
  • 養殖業者もプランクトンモニタリングのデ-タとこの指標を参考にマガキの出荷量を調整しているため、出荷規制による損失を最小限に押さえている。
  • 近年西日本の各地で貝類の毒化が問題になり、有毒プランクトンの調査方法・同定手法について他県水試の研究員の研修依頼があり、実施に協力している。更に、予察方法を参考に貝毒対策マニュアルも作成中である。
  • 今後はG.catenatum 細胞密度の減少とマガキの毒値の減衰、水温・塩分などの環境要因からのG.catenatum の出現予察、アサリなど他の二枚貝の毒化などについて調べ、長期的予察指標などを作成したい。


[具体的データ]

表1
 

 

図1

 

 

図2

[その他]
研究課題名:麻ひ性貝毒原因プランクトンGymnodinium catenatumの出現状況と 養殖マガキの毒化予察
予算区分:モニタリングなど
研究期間:1990~1999年
研究担当者:馬場俊典
発表論文等:仙崎湾における貝毒原因プランクトンの出現と養殖マガキの毒化について、山口県内海水産試験場報告、No.24、1995.
        貝毒原因プランクトンと養殖マガキの毒化、山口県水産研究センターだより増刊号(山口県水産研究センター創立100周年記念)、2000.
        山口県仙崎湾における有毒プランクトンGymnodinium catenatumの鉛直移動と養殖マガキの毒化状況について、日本プランクトン学会報、48巻2号、2001.