第14回 カタクチイワシ勉強会を開催
第14回カタクチイワシ勉強会は,平成24年5月2日(水曜日)に長崎県雲仙市の橘湾東部漁業協同組合南串山支所において開催されました。漁業者のパネラーとして,橘湾で煮干しの原料となるカタクチイワシを中型まき網漁業で獲られている天洋丸船団の漁労長竹下千代太さんから情報をいただいて,カタクチイワシの有効利用をテーマに話し合いました。出席者は,東北大学,東京海洋大学,鹿児島県水産技術開発センター,長崎県総合水産試験場,西海区水産研究所,日清丸紅飼料株式会社などから10名が参加しました。
意見交換会
橘湾におけるまき網漁業の現状について,乗組員の高齢化や後継者不足など現在抱えている問題とともに,カタクチイワシの漁獲時期や質のここ数年の変化についての説明がありました。漁獲されたカタクチイワシが全て煮干しに加工されるのではなく,成長して脂肪含量が増えたものは加工に時間と手間がかかるうえ,煮干しの品質が悪くなるので,その場合は凍結用として養殖魚の餌向けに出荷されます。しかし,餌での出荷は煮干に比べて値段が安いので,まとまった漁獲がないと採算が合いません。
カタクチイワシは小型なため,頭と内臓を除去するのに手間と人件費がかかり,商品化されにくいのが現状です。天洋丸でのカタクチイワシの食用利用に関する試みが紹介されました。
「エタリの塩辛」加工場の見学
橘湾の沿岸ではカタクチイワシのことを「エタリ」と呼び,昔から各家庭でエタリを塩辛にして保存食としていました。製造方法は,新鮮なカタクチイワシを塩とあわせ樽に入れ,稲ワラをかぶせて重石をして熟成させます。エタリの塩辛は,地域の食文化を守るために継承するべき食材であると,イタリアに本部を置くスローフード協会国際本部の「味の箱舟」として認定されています。エタリの塩辛加工場では,エタリの塩辛を商品化する際の課題,品質の均一性と生産量の増強などについて話し合いました。