あとがき
本報告書は水産庁が平成23年度以降に実施してきた「資源管理指針等推進事業」や「新たな資源管理システム構築促進事業」等の事業で得られた自主的資源管理の効果に関する研究成果をまとめまたものです。成果が複数の事業に跨がったこと、最新の事業が最終的な報告書作成を待たずに終了したことから、今回、水産研究・教育機構の交付金プロジェクトの一環として本報告書をとりまとめることとなりました。
本報告書のとりまとめに際し、自主的管理の立案に携わる行政担当者を主要な読者と位置付け、実務的な要点を資源管理の専門家の先生方に要約いただくことで、得られた研究成果を実際の業務に利用しやすいように企画しました。その意図に関し、本報告書を実際に手にされた方々はいかが感じましたしょうか?ご意見を賜れれば幸いです。
現在、各都道府県において、自主管理を元にした様々な資源管理協定が策定されておりますが、今後、その有効性の検証が求められていくことが予想されます。しかし、これらの資源管理協定においては、資源評価が継続的に実施され、効果検証も比較的容易に可能と想定される魚種(本報告書におけるズワイガニの事例)もあれば、適切な資源管理単位に関する情報から収集する必要がある魚種(本報告書における瀬戸内海のクルマエビ)もあるなど、様々な状況の魚種が混在しています。つまり、資源管理効果の検証を今後進めていくにおいても、超えるべきハードルはそれぞれ異なっているのです。そのような背景において、本報告書では両極端な状況にある2 事例を中心に紹介することで、自主的管理には様々なレベルの課題が混在しており、その効果検証には多様なニーズに応えなければいけない状況にあることを明示できたと考えます。本報告書が今後の自主的管理の効果検証における多様なニーズへの対応に向けた一つのステップとなれば光栄です。
TAC による資源管理が原則となり、今後もTAC による数量管理の魚種が増加することが予定されております。TAC による数量管理がより実行ある管理となるためには、資源管理協定で規定されている自主的な管理がより重要となってきます。そのため、自主的管理計画の策定、効果の検証は一層重要となってきます。本報告書による自主管理の事例が今後の自主的管理を進めていく上での一助となることを願っております。
水産研究・教育機構 水産資源研究所
水産資源研究センター 底魚資源部
木所英昭