国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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平成20年度調査結果概要

事業一覧

  1  海洋水産資源開発事業(資源対応型:いか釣(北太平洋中・西部海域及び熱帯太平洋東部海域))
  2  海洋水産資源開発事業(資源対応型:海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域))
  3  海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋かつお釣<太平洋中・西部海域>)
  4  海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋まぐろはえなわ<太平洋中・東部海域>)
  5  海洋水産資源開発事業(資源対応型:北太平洋さんま<北太平洋中・西部海域>)
  6  海洋水産資源開発事業(システム対応型:単船型まき網<北部太平洋海域>)
  7  海洋水産資源開発事業(システム対応型:遠洋底びき網<全層トロール><北太平洋中・西部海域>)
  8  海洋水産資源開発事業(システム対応型:近海はえなわ<北太平洋西部海域>)(PDF:347KB)
  9  海洋水産資源開発事業(システム対応型:近海かつお釣<南西諸島海域及び九州西方海域)(PDF:234KB)

事業ごとの調査概要

 1  資源対応型:いか釣?(北太平洋中・西部海域、ペルー海域)

調 査 船:第八白嶺丸(276トン)

調査期間:周年

調査海域:北太平洋中・西部海域、ペルー海域

本年度調査のねらい
   1 ペルー沖のアメリカオオアカイカを対象とした単価向上への取り組み
   2 北太平洋のアカイカを対象とした漁獲効率向上のための漁具の挙動制御手法の開発

本年度調査の主な成果等

1. 12月以降、平成21年度にかけて、ペルー沖でアメリカオオアカイカを対象として単価向上のための調査を行っている。平成19年度調査(平成20年2月~3月)では、雌未熟個体が低異味・低水分である可能性がみられたことから、当該個体の出現状況や異味成分含有量の季節変化データを収集中である。  これまでのところ、2月頃には大型の雌未熟個体は同サイズの成熟個体に比べて低異味・低水分であり、前年度調査結果の再現性を確認した。他方、これ以降の時期には異味成分含有量が増加しており季節変動の可能性も示唆されたことから、周年の情報を蓄積すべく調査を継続している。

 
図 アメリカオオアカイカ(雌)胴肉中のVBN含有量と外套長、成熟度の関係

 
2. 5月~9月にかけて、北太平洋中・西部海域にてアカイカを対象とした漁獲効率向上のための適正回転数を調査するため、これまで充分な知見の無い釣り機回転数と脱落率や漁具捕捉状況の関係について調査を行った。その結果、CPUE(操業1時間当たり漁獲尾数)が最大となる巻上げ速度は70回転/分(約90m/分)前後であることが示され、巻上げ速度を適切に設定することで漁獲効率向上が可能であることを確認した。

いか釣(北太平洋中・西部海域)

調 査 船:第二吉丸(164トン)

調査期間:5月~7月

調査海域:北太平洋中・西部海域

本年度調査のねらい
   1 昼間操業におけるLED水中灯を用いた効率的漁獲技術の開発
   2 夜間操業にLED水中灯を導入することによる燃油消費量削減の可能性追求

本年度調査の主な成果等

1. 前年度に実施した4色(白・青緑・緑・青)の比較調査で、漁獲効率が高かった青色LED水中灯を用いて昼間操業調査を行った。調査船近辺の一般漁船の漁獲実績と比較した結果、漁獲効率は通常のメタルハライド水中灯と同等であることを実証した。また、メタルハライド水中灯をLED水中灯に換えることで1航海あたり7.0klの燃油消費量削減効果が見込まれた。
左図は青色LED水中灯を用いた調査船とメタルハライド水中灯を用いた近隣当業船との製品比較
2.
  夜間操業においては、通常は船上灯のみを使用して漁獲を行っているが、青色LED水中灯と船上灯の併用による操業試験を実施した。この結果、船上灯を本年度の一般漁船の平均出力190kWの約半分に相当する100kWに落としても、青色LED水中灯を併用すればCPUE(漁獲尾数/漁具投入回数)はほぼ同じになるという結果が得られ、燃油消費量削減の可能性が示唆された。


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 2  資源対応型:海外まき網(熱帯インド洋海域)

調 査 船:日本丸(744トン)

調査期間:周年

調査海域:熱帯インド洋海域


本年度調査のねらい
1 熱帯インド洋海域を広く調査し、漁場の効率的な利用方法を探求するとともに、漁場価値について調査する。
2 流れ物付き操業による若齢マグロ類漁獲を最小化する手法に関して調査する。
3 ブイライン操業法をはじめとする海外まき網漁業の新技術に関して、その効果を検証する。
本年度調査の主な成果等

1. 漁場の効率的利用方法の探求に関しては、人工流木の漂移予測を海流予測情報利用有限会社責任事業組合(FOP)との共同研究で実施した。漂移予測は夏季に精度が低く、冬季は比較的精度が高い傾向が認められ、今後、この点に改良の必要性が認められた。
夏季(精度低) 冬季(精度高)
海流予測モデルによる放流4週間後の分布予測と漂移実績
緑:予測分布範囲、   橙:予測範囲の重心、   赤:実績
2. ブイライン操業法の習熟と魚汲み方式の改良により作業所要時間は短縮し、従来の操業方法と比較して漁獲量が変わらず、操業所要時間もほぼ同等となった。
年度別に見た漁獲量と取り込み時間                      魚汲みの改良点
(※魚を掬うタモ網が漁船に沿って入れることができて漁獲物の取り込量が増えた)
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 3  資源対応型:遠洋かつお釣(太平洋中・西部海域)

調 査 船:第3協洋丸(499トン)

調査期間:周年

調査海域:太平洋中・西部海域


本年度調査のねらい

1 太平洋中・西部海域において、縁辺漁場の拡大及び未利用漁場の開発を行うとともに、高単価を期待されるトロカツオ及びビンナガを主対象とした周年操業の可能性について調査を行う。
2 衛星情報を活用した漁場探索技術の向上を図る。
3 低温活餌畜養装置の運転方法の適正化等による省エネルギー効果について定量的検証を行う。
4 製品の付加価値向上のため、トロカツオ・ビンナガ沖締め製品の試験生産を実施し、製品の特性を品質分析により明らかにするとともに、販路に関する調査を行う。また、脂肪含有量に応じた用途別販売の可能性を追求する。


本年度調査の主な成果等

1. 衛星情報(CATSAT)から得られる水温躍層よりやや浅い水深帯(カツオ・ビンナガ遊泳層)付近の中層水温図と漁獲状況に関連性が見られ、急激な水温勾配が見られる海域で好漁獲が得られる傾向が示された。この成果を関係業界へ普及することによって当業船11隻が衛星情報(CATSAT)を活用した漁場探索を開始した。
2. 低温活餌畜養装置のポンプ類及び冷凍機にインバーターを導入し、使用活餌魚倉数に応じ新鮮海水量を調整することで、一航海当たりポンプ類で7kl(導入前比44.5%)、冷凍機で18.4kl(40.3%)の省エネルギー効果が認められ、年間約165.1kl(25.4kl/航海×6.5航海/年=165.1kl 航海数は日かつ協調べ)の燃油削減効果が試算された。
(共同実施者:枕崎市漁協、技術協力:(株)前川製作所)

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 4  資源対応型:遠洋まぐろはえなわ(太平洋中・東部海域)

調 査 船:開発丸(489トン)

調査期間:周年

調査海域:太平洋中・東部海域


本年度調査のねらい

1 メバチの夜間生態を利用した浅縄操業に適した時期及び海域について調査するとともに、中立ブイ操業導入の可能性について調査する。
2 凍結製品の適正温度管理による省エネの可能性について調査する。
3 トレーサビリティシステム導入に必要とされる生産履歴及び販売価格に及ぼす影響を調査する。
4 船上凍結製品の付加価値向上及び販路拡大について調査する。


本年度調査の主な成果等

1. 魚艙保冷温度を超低温(‐50℃以下)から‐40℃~‐45℃とすることで、年間約8%程度の燃油消費量の削減が可能と試算された。
温度設定 使用
冷凍機数
1日当たり
消費電力量
(kWh)
1日当たり
燃油消費量
(試算値)(kl)
-40~ー45℃ 1台 601.2 0.178
超低音(-50℃以下) 1台 1381.0 0.409
差異 1台 779.8 0.231
●燃油消費削減量試算(年間300日航海と設定)
0.231kl/日×300日=69.3kl
●開発丸と同船型同漁場の当漁船燃油消費量試算
2.9kl/日(H19日本かつお・まぐろ漁協調べ)×300日=870kl
●年間燃油節減効果試算
69.3kl/年÷870kl/年=0.08
2. ‐40℃~‐45℃で保冷された凍結製品は、温度履歴を明らかにして日本鰹鮪魚市場(三崎ツナ)にて販売した結果、通常の超低温保冷製品(‐50℃以下)とほぼ同等の価格で販売された。
H20年度 開発丸 メバチ・キハダの販売結果
販売方法 魚種 魚倉保冷温度
超低音(-50℃以下) -40℃程度
入札売り※1 メバチ 約640円/Kg 約630円/Kg
キハダ 約680円/Kg 約630円/Kg
解凍売り※2 メバチ 約900円/Kg 約900円/Kg
備考
※1入札売り:銘柄別の見本から製品全体の価格を入札する方法
※2解凍売り:解凍した尾部を一本一本評価して入札する方法
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 5  資源対応型:北太平洋さんま漁業(北太平洋中・西部海域)

調 査 船:調査船:第六十三幸漁丸(199トン)

          第一榮久丸(184トン)

調査期間:5月~7月

調査海域:北太平洋中・西部海域


本年度調査のねらい

1 サンマ資源を対象とした現行漁期前における公海漁場の開発
2 製品生産方式の改善
3 輸出向け船上凍結製品の市場評価の把握
4 大型さんま棒受網漁船の経営改善の可能性検討


本年度調査の主な成果等



1.


大型さんま棒受網漁船2隻により公海域にて試験操業を行った結果、1隻当たりの漁獲量は562トンと前年度の単船操業より倍増し、船団体制とすることで探索効率が向上することが確認できた。  他方、収益性確保には至らなかった。漁場が遠く、往復航に日数を要するため、漁場滞在日数が短いことが問題点としてあげられ、運搬船の活用による運航効率の向上が課題である
表 調査年度別の操業・漁獲概要
年度 平成19年度 平成20年度
(1隻当たり)
調査機関 5月20日‐7月20日 5月20日‐7月31日
漁場滞在日数
(うち操業日数)
36(22) 46(32)
網数 195 301
漁獲量(トン) 267 562
操業1日当たり漁獲量 (トン/日) 12.1 17.8
 


2.


前年度餌食いによる品質劣化を指摘された輸出向け凍結製品の改善に取り組み、生態的に明け方近くの漁獲物を製品化することにより加工時に問題となる餌喰いを相当程度回避できることが確認できた。



右図は日没から漁獲までの経過時間別のサンマ消化管内容物充満度 (※日没後5~9時間後は消化管内容物の充満個体の割合が1割以 下であり餌喰いが回避できる可能性が高い)
(参考) 平成21年度調査概要
 運搬船1隻を含む3隻体制で調査を行った。洋上転載に関しては、船間距離を取り、敷網(小型棒受網)を介して漁獲物を受け渡す方法で行い、問題なく実行可能であった。現在、転載した漁獲物のミール原料としての品質評価を行っているところである。  他方、本年度は魚群の北上が遅く、群れが薄かったことにより網船1隻当たり漁獲量は317トンにとどまった。今後は、公海漁場の形成状況が年により大きく異なることも踏まえ、当該漁場の開発可能性を更に検討していく。

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 6  システム対応型:単船型まき網)( 北部太平洋海域)

調 査 船:調査船:北勝丸(300トン)

調査期間:周年

調査海域:北部太平洋海域


本年度調査のねらい

本年度調査の主な成果等

 


1.


単船型まき網操業システムに関する習熟が進み、平成20年度の水揚金額は想定採算ラインを超えた。


 


2.


沈子処理機に関しては、沈子方網地の収容作業において省人化が図られ、実用化に目処がついた。また、ブライン凍結したカツオ等の魚艙間積み換え作業の省人省力化のためオーバーフロー方式を導入し、魚艙の改良等を通じて作業員を9名から4名に削減できることを実証した。


 


3.


刺身向けなど市場でも高評価である大型マサバを主体に沖締め凍結製品の生産に取り組み、19.4トンを生産した。また、中型サイズやゴマサバを対象とした沖締め凍結製品を加工用原料として出荷した。


 

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 7  システム対応型:遠洋底びき網(北太平洋中・西部海域)

調 査 船:調査船:第五十八富丸(401トン)

調査期間:6月~9月

調査海域:北太平洋中・西部海域


本年度調査のねらい

1 我が国にとって未利用である公海サンマ資源の分布状況の把握
2 当該資源を対象とした表中層トロール漁具の適切な運用方法の開発




 
 
本年度調査の主な成果等
 


1.


北太平洋公海域で、遠洋底びき網漁船により表中層トロール操業によるサンマ調査を行い、これまで知見が不足していた公海域のサンマ資源に関する基礎的情報を収集し、公海域においては時期及び水域によって様々な魚体長・肥満度を有する群れが存在することが推測された。


2.


漁具を調整しつつ操業を行った結果、サンマは漁具からの逃避行動が顕著でなく、大型漁具では身網の大目合部から逃避すると推察された。更に、当該水域では魚群が小さくまばらであることもあり、サンマ漁獲量は合計70トン、最大CPUEは280kg/時間にとどまった。公海域のサンマを対象とした商業的操業を行うためには、オートトロールシステムによる機動性の向上、ツインリグ方式やビームトロール方式による効率的な掃海面積の向上など、漁具のみならず漁法そのものの見直しが必要と考えられる。
 
1 完全単船型操業システムの効率的運用に取り組み、その有効性について調査する。
2 整反装置(沈子処理機)、フィッシュポンプによる水揚げシステム及びオーバーフロー式凍結魚シフトシステムの改善を図り、省人省力化の可能性について追求する。
3 漁獲物の付加価値向上のため、シャーベット状海水氷による生鮮魚処理技術の向上及び沖締め凍結サバの生産増加に取り組む。