国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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平成19年度調査結果概要

事業一覧

  1  海洋水産資源開発事業(資源対応型:いか釣<北太平洋中・西部海域及び熱帯太平洋東部海域>)
  2  海洋水産資源開発事業(資源対応型:海外まき網<熱帯インド洋海域>)
  3  海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋かつお釣<太平洋中・西部海域>)
  4  海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋まぐろはえなわ<太平洋中・東部海域>)
  5  海洋水産資源開発事業(資源対応型:沖底混獲回避<日本海西部海域及び三陸沖海域>)
  6  海洋水産資源開発事業(資源対応型:北太平洋さんま<北部太平洋中・西部海域>)
  7  海洋水産資源開発事業(システム対応型:単船型まき網<北部太平洋海域>)
  8  海洋水産資源開発事業(システム対応型:沖底かけまわし<北海道日本海海域>)
  9  海洋水産資源開発事業(システム対応型:遠洋底びき網<全層トロール><北太平洋中・西部海域>)
10  海洋水産資源開発事業(システム対応型:近海はえなわ<北太平洋西部海域>)
11  海洋水産資源開発事業(システム対応型:次世代型近海かつお釣(南西諸島海域及び九州西方海域))

 

事業ごとの調査概要

1  海洋水産資源開発事業(資源対応型:いか釣(北太平洋中・西部海域及び熱帯太平洋東部海域))
      いか釣り漁業における効率的な操業パターンの開発


背景と調査目的
   北太平洋海域におけるアカイカを対象としたいか釣り漁船の操業は減少している。要因としてアカイカはスルメイカ類に関して集群性が弱く、釣獲時の脱落が多いことなどにより流し網と比して生産性が低く収益が低下していることが挙げられる。アカイカは北太平洋の公海上を中心に分布している資源であること、他のイカ類に比して高価であること、加工原料としての国内需要も多いことなど、漁業上重要な資源である。このため、集魚技術の向上や脱落防止技術の開発などにより生産性の向上を目指す。 また、平成14年度から平成18年度にかけて南太平洋西部海域(ニュージーランド水域内)でのいか釣り漁場の再開発を目的とした調査を行い、企業的操業が可能な漁場が複数存在することから、効率的な漁場選択パターンの確立に取り組んだ。他方、熱帯太平洋東部海域におけるアメリカオオアカイカ資源は高い資源水準にあるものの、異味成分が魚体に含まれており、加工時には異味除去工程が必要であることや水分含量が多いため、歩留が低下することから単価が安い。これを改善するため、平成19年度より当該資源を対象とした操業の生産性の向上を目指す。(南太平洋西部海域調査は平成18年度で終了)


実施海域
北太平洋中・西部海域、熱帯太平洋東部海域
    
19年度の課題
<北太平洋中・西部海域>
? 北太平洋中・西部海域のアカイカを対象とした集魚技術の向上
・青色LED水中灯の発光エネルギー量別の漁獲状況比較
・発光エネルギー量を同量とした発光色別LED水中灯の漁獲状況比較
・LED水中灯とメタルハライド水中灯との漁獲状況比較
? 北太平洋中・西部海域のアカイカを対象とした脱落防止技術の開発
・漁具の挙動を制御することにより、脱落率低減を図り、漁獲効率向上の可能性について検討する。

<熱帯太平洋東部海域>? アメリカオオアカイカの異味成分・水分含有量、漁獲量、魚体サイズの地理的分布を把握し、
効率的漁獲の可能性を検討するとともに、異味成分・水分含有量が少なく、高品質の製品の差別化と供給の可能性を検討する。
? 複数の市場での販売結果を比較し、適切な水揚げ地の選択による単価向上の可能性を検討する。


実施概要及び成果
<北太平洋中・西部海域>
    
? LED水中灯に関する調査は、中型いかつり漁船「第二丸(164トン)」を使用して、北太平洋中・西部海域で平成19年5月から7月まで、アカイカの脱落率低減に関する調査は、大型いかつり漁船「第八白嶺丸(276トン)」を使用して、平成19年6月から10月まで、それぞれ行った。生産量は、第二吉丸が82.8トン、第八白嶺丸が88.7トンであった。
? LED水中灯に関する調査では、
1) 青色LED水中灯を用いて発光エネルギー量を変えて漁獲状況を比較した。発光エネルギーの設定は出力100%と、昨年度の使用した青、青緑、緑、赤の中で波長別発光エネルギー量が最も低かった緑色LEDの発光エネルギー量相当の出力の2通りとした結果、両者のCPUE(漁獲尾数/漁具投入回数、捕捉尾数/漁具投入回数)には有意差は認められなかった。
2) 発光エネルギー量を同量とした発光色別漁獲状況比較について、緑、青緑、白、青の4色を波長別エネルギー量の積分値が最小である緑と等しくなるように出力をそれぞれ調節して同一日の漁獲尾数と捕捉尾数CPUEを比較した。30日間の比較操業実験の結果、青と青緑の操業は他の2色に比し、漁獲効率が良いことが示唆された。
3) 昨年度の調査の結果、最も高いCPUEが得られた青色LED水中灯とメタルハライド水中灯を用いて漁獲尾数と捕捉尾数を比較した。同じ日に両光源の水中灯を交代で使用した。比較に当たっては、LED水中灯の点灯状態は常時点灯状態とした。また、予備的実験としてLED水中灯を常時点灯させての操業の後に点滅させての操業を適宜実施し両者の比較を行った。その結果、メタハラ水中灯とLED水中灯でのCPUEには漁獲、捕捉ともに有意差は認められなかった。LED水中灯の常時点灯と点滅での比較では点滅の方が11組中9組でCPUEが高く、常時点灯状態での操業よりも漁獲効率が高いことが示唆された。
4) 昼間操業時におけるLED水中灯とメタハラ水中灯使用時の燃油消費量を測定し比較したところ、LED水中灯の方が平均で1時間あたり4.5?少なかった。
? 脱落率低減に関する調査では、漁具の巻き上げ速度とアカイカの擬餌針の掴み方との関係では、触腕以外で擬餌針を捕捉する場合の巻き上げ速度は0~1.7m/s、触腕のみで捕捉した場合のそれは1.0~1.9m/sで、速度が遅いときに触腕以外で擬餌針を捕捉する傾向が認められた。昨年度の結果を併せると1.7m/sより遅いときに触腕以外で針を掴み脱落せずに釣獲される確率が高いことが示唆された。釣糸を巻き上げるドラムの形状を通常の長八角形から正九角形ドラム(丸ドラム)に変更し、また、ドラムの回転数を下げて巻き上げ速度を下げることによる脱落率低減並びに漁獲効率向上の可能性を追求した。
1) 長八角形ドラムを丸形ドラムに変更することにより、1.7m/s以下の速度帯の出現率は3~9%増加した。が、ドラムの形状の変更による脱落率の低減やCPUEの向上は共に認められなかった。
2) 一方、回転数では、これまで設定していた65回転/分から50回転/分に変更することにより、1.7m/s以下の速度帯の出現率は15~20%増加した。脱落率は、長八角形ドラムでは65回転でよりも50回転で有意に低かったが、いずれの形状のドラムでも 1ストロークあたりの捕捉数やCPUEには有意差が検出されなかったが、50回転で低かった。
3) 以上のことから、ドラムの回転数を下げ漁具の巻き上げ速度を遅くしても、脱落数の低減効果は認められるが、捕捉数減少の影響の方が大きく、漁獲効率向上を図ることは出来ないことが示唆された。


<熱帯太平洋東部海域>

? 大型いかつり漁船「第八白嶺丸(276トン)」を用いて平成19年11月から平成20年5月までの間、コスタリカ沖公海域、ペルー沖公海域、及びペルーEEZ内においてアメリカオオアカイカを対象とした調査操業を3航海を行い、72日間行い、アメリカオオアカイカを1,297トン漁獲し、製品を817トン生産した。
1) 1日当たりの漁獲量はコスタリカ沖公海域で0.06トン、ペルー沖公海域で6.1トン、ペルーEEZ内で27.2トンとペルーEEZ内で最も高かった。
2) 魚体サイズについては北半球公海域では小型個体、ペルー沖合域では中型個体、ペルー沿岸域では大型個体が主体であった。として漁獲された。
3) 品質の高いアメリカオオアカイカ製品の供給の可能性を検討するために、外套膜中の異味成分(塩化アンモニウム)及び水分の含有量を測定した。サイズと異味成分と水分の関係は、外套膜が大きくなるに従い増加する傾向にあった。しかし、雌未熟個体では、大型個体でも異味成分、水分含量ともに低く、これを選別することで、高品質で歩留の良い製品が生産されることが示唆された。
4) 需要に応じた水揚地の選択による単価向上の可能性検討について、コンテナにて海上輸送した製品を函館、八戸に上場してその単価を比較した結果、足、耳等の銘柄では函館の方が高かったが、その他の製品では八戸の方が高かった。需要の多い銘柄を選択的に供給することにより単価を上げることが示唆された。


成果報告
19年度開発ニュース(No.357・ No.358・ No.359)平成19年12月・平成19年12月・平成20年9月

担当者
開発調査センター 底魚・頭足類開発調査グループ 小河 道生・山下 秀幸・黒坂 浩平・?山 剛  電話045‐227‐2729
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2  海洋水産資源開発事業(資源対応型:海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域))
  海外まき網漁業における効率的な操業パターンの開発


背景と調査目的
   我が国のまき網漁船の主漁場である熱帯太平洋中・西部海域においては外国まき網船の増隻と大型化が進み漁場はほぼ満限状態となって激しい競合が生じている。また、中西部太平洋マグロ類委員会は平成20年10月の年次会合でFADs操業60日間の禁止を決定し、日本はその代替措置として平成21年から23年にかけてメバチ漁獲量を毎年10%ずつ削減する方針を選択した。他方、インド洋においては1980年代後半のインド洋海域における旧日本丸の調査結果等を踏まえ、1992年の一斉更新時に本許可を受け当該海域に10隻が進出したが、当該海域での操業は、不安定な漁獲、水揚地、円高、魚価安等の影響により採算的に厳しく、2000年漁期以降行われていない。また、東部公海水域では外国まき網船による操業はほとんど行われていない。加えて、鰹節・カツオ削り節の加工原料は主として海外まき網船が漁獲する熱帯太平洋カツオが用いられているが、年間3~4割が外国からの輸入カツオに頼っている状況にあり、業界は我が国の海外まき網船が漁獲する安全・安心な熱帯太平洋カツオ、特に脂肪含量の少ないインド洋カツオの国内搬入を期待している。 本事業は、熱帯太平洋中部海域では既存漁場の縁辺的拡大を図り、また、インド洋海域ではまき網漁業の効率的な周年操業を探求するとともに、若齢マグロ類の漁獲を最小化する手法に関して調査を行った。


実施海域
熱帯インド洋海域

    

19年度の課題
? 熱帯インド洋海域における漁場の効率的な利用方法を検討するとともに、漁場価値について調査する。
? 流れ物付き操業における若齢マグロ類の混獲を最小化する手法に関して調査する。
? ブイライン操業法の習熟と各作業所要時間の短縮を図る。
? 導入した新技術に関して、その効果を検証する。

実施概要及び成果
? 日本丸(744トン)を平成19年3月下旬から平成20年5月下旬まで用船し、熱帯インド洋海域において 漁場滞在日数274日、操業日数133日、操業回数133回の調査を行い、カツオを主体に3,410トンを漁獲した。
? 熱帯インド洋海域の効率的な利用及び漁場価値の評価について、今年度は人工流木に対する蝟集状況が全般的に悪く、 年度平均の漁場滞在1日あたりの漁獲量は12.4トンと低調であった。人工流木の計画的な利用による効率的な操業を可能とするため、 海流予測情報利用有限責任事業組合との共同研究により人工流木の漂移予測技術の開発に取り組んだ。 日本丸からは計測した現場環境データを組合へ提供し、組合からは人工流木放流予定位置からの漂移の予測を日本丸へ提供した。 その予測精度について定量的な評価までは至っていないが地衝流図ベースの流れ図よりは若干正確であった。
? 流れ物付き群を対象とする操業による若齢マグロ類の混獲を最小化する手法について、操業前の音響的手法による魚群の種組成と体長組成を把握することを目的として日本丸の搭載艇に計量魚探を装備して基礎データを収集した。今年度は96回の観測を行ってメバチの比率の高い魚群のデータを得るなど蓄積が進んでいる。次に網目合と漁獲物サイズとの関係について調べるため、最も多く大目合を使用している当業船に調査員が乗船して漁獲物の体長組成等を調査し、旧日本丸及び日本丸の結果と比較を行った。その結果、カツオについては身網目合が大きいほどピーク値がわずかに大きくなる傾向が認められ、大目網から小型魚が逃避している可能性が示唆されたが、キハダ・メバチの体長組成からは大目合と小型魚の逃避を関連づける傾向は認められなかった。
? ブイライン操業法の習熟と各作業所要時間の短縮について、効率及び習熟度を評価するために各操業段階の所要時間を計測し、従来の操業方法と比較した結果、今年度は乗組員の習熟により短縮の傾向が認められた。しかし、漁獲物取込に関しては未だ従来の操業方法に比べて時間を要している。取込にかかる時間が長くなると漁獲物の鮮度低下につながることが考えられるので、この問題の解消が今後の最優先課題である。
? 日本丸に導入した新技術について、二重反転プロペラ推進方式について、連動運転(主機+電動モーター駆動)と単動運転(主機のみ)での燃料消費量を調査するため、ドック明けの清水からプーケットへの回航時にスピードを4~5段階に変えてそれぞれの燃料消費量を測定したが、同じ速力を得るために消費する燃油量に連動運転と単動運転で大きな差は認められなかった。また、コイルレス魚艙について、通常魚艙との冷却性能を比較するため、2.5kg上前後のカツオの魚体中心部に小型記録式温度計を埋め込み記録した。通常魚艙では魚艙内の位置によって魚の冷却状態に大きな差があったのに対し、コイルレス魚艙では魚艙内の位置にかかわらず均一に冷却される傾向が認められた。また、7月の試験では保冷開始後140時間後に通常魚艙では-40℃以下まで下がっていたのに対し、コイルレス魚艙は-27~-32℃までしか下がらなかった。これはコイルレス魚艙におけるユニットクーラーのフィンの霜付きが効率低下の主要な原因と考えられた。


成果報告
19年度開発ニュース(No.368)平成20年10月

担当者
開発調査センター 浮魚類開発調査グループ 伏島 一平・大島 達樹・栗原 彰二郎・橋ヶ谷 伊久生・金治 佑 電話 045-227-2735
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3  海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋かつお釣<太平洋中・西部海域>)
  遠洋かつお釣り漁業におけるカツオ・ビンナガ漁場の開発


背景と調査目的
    遠洋かつお一本釣の主力製品であるカツオB1製品の価格は、海外まき網によるカツオPS製品との競合により低迷を続けており、近年は高単価の生食向けビンナガに生産の主力を移しているが、燃油高騰等経費のアップに加え、日本東方沖のビンナガの不漁により経営は悪化している。このため、海外まき網冷凍製品との差別化及びビンナガに重点を置いた漁場の開発を目的として調査を行う。遠洋かつお一本釣の主力製品であるカツオB1製品の価格は、海外まき網によるカツオPS製品との競合により低迷を続けており、近年は高単価の生食向けビンナガに生産の主力を移しているが、燃油高騰等経費のアップに加え、日本東方沖のビンナガの不漁により経営は悪化している。このため、海外まき網冷凍製品との差別化及びビンナガに重点を置いた漁場の開発を目的として調査を行う。遠洋かつお一本釣の主力製品であるカツオB1製品の価格は、海外まき網によるカツオPS製品との競合により低迷を続けており、近年は高単価の生食向けビンナガに生産の主力を移しているが、燃油高騰等経費のアップに加え、日本東方沖のビンナガの不漁により経営は悪化している。このため、海外まき網冷凍製品との差別化及びビンナガに重点を置いた漁場の開発を目的として調査を行う。

実施海域
太平洋中・西部海域

    

19年度の課題
? 日本東方沖合海域の天皇海山・西経海区において、主としてビンナガの縁辺漁場開発の可能性を追求する。
? 活餌イワシ類の代替または補完として、サバヒー導入の可否を判定する。
? 低温活餌畜養装置の運転方法及び魚艙保冷温度の適正化による省エネ効果について調査する。
? 衛星情報を活用した漁場探索技術の向上を図る。
? トロビンナガの定義について調査するとともに、漁獲物の沖締め(S1)による製品の付加価値向上の可能性について調査する。


実施概要及び成果
? 第3協洋丸(499トン)を平成19年4月から平成19年10月まで用船し、日本東方沖合海域から西経域にかけて3航海の調査を行い、計497.5トンを漁獲した。販売数量は合計518.9トンであった。
? ビンナガの縁辺漁場開発調査に関しては、天皇海山・西経海区における漁場形成状況、特に西経漁場における漁場形成の再現性の確認に主眼をおいて調査したが、ビンナガ漁場形成を確認するには至らなかった。
? サバヒーの活餌としての可能性に係る調査に関しては、積み込み時の水温馴致による支障は発生せず、第1次航海及び第2次航海ともにサバヒーとカタクチイワシの斃死率を比べるとサバヒーの方が著しく低かった。積み込み量から斃死量を除いた実使用量から求めた個体単価は、カタクチイワシの平均体重が一般的に使用されるサイズの場合、サバヒーの個体単価はカタクチイワシの約4.8倍と非常に高額であった。単位時間あたりの漁獲尾数はカタクチイワシ単独で用いた方がサバヒーを使用するより多かった。この結果の要因としてはサバヒーが撒餌時に着水とともに潜行してしまうことや着水後に水面で狂奔する行動が見られないことが考えられ、サバヒーに麻酔処理を施したがカタクチイワシに対する摂餌率と比べると大きな差があることが認められた。
? 冷凍・冷却システム等の省エネに関しては、低温活餌畜養装置の省エネ運用の可能性について調査した。使用する活餌魚艙数に合わせて新鮮海水量及び換水量を減らしていくことによるポンプ動力及び低温海水製造のための冷凍機動力の節減を期待して、制御した場合の燃油消費量を発電量と補機燃油消費量の関係から試算した。その結果、新鮮海水ポンプ、循環ポンプ及び排水ポンプに周波数インバータを取り付けてポンプ制御した場合と従来のポンプを使った場合と比べて第1次航海では16.3klの節減となり、第2次航海では約8~10klの節減になった。
? 衛星情報を活用した漁場探索技術の向上に関しては、表層水温が大きく変化する春季から夏季の三陸沖を対象とし、フランスCLS社catsatシステムで衛星観測情報に基づき作成された中層水温図等に1操業日当たり10トン以上の漁獲があった当業船の操業位置(無線漁況連絡)を旬ごとにまとめて両者の関連性について検討をしている。
? 凍結製品の付加価値向上のため、最も需要の多い2.5~4.5kgのカツオを主対象に沖締め製品を生産した。沖締め製品販売単価とB1製品販売単価を比較すると航海によっては1割程度高かった。なお、トロビンナガの定義についてはサンプリングを行って脂肪含有量の体内分布等を分析中である。


成果報告
19年度開発ニュース(No.362)平成20年2月

担当者
開発調査センター 浮魚類開発調査グループ 伏島 一平・木村 拓人・橋ヶ谷 伊久生 電話 045-227-2735

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4  海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋まぐろはえなわ<太平洋中・東部海域>)
  遠洋まぐろはえなわ漁業における効果的な漁獲方法及び差別化製品の開発


背景と調査目的
   地域漁業管理機関によるマグロ漁獲削減勧告等、マグロ資源保護のための国際的な漁獲規制は年々強くなっており、将来にわたって日本に刺身用マグロを安定的に供給するには、遠洋まぐろはえなわ漁業の経営体質を強化して国際競争力を増強するとともに、消費者の食の安心・安全に対する強い要望に応えうる漁業として再構築していくことが必須である。
   本調査事業は、太平洋中・東部海域におけるメバチを主対象として、既存漁場の高度利用化及び省エネ操業技術の開発を中心とした効率操業並びに新凍結製品の生産による漁獲物の付加価値向上を目的とし行った。


実施海域
太平洋中・東部海域

    

19年度の課題
? メバチの夜間生態を利用した浅縄操業に適した時期及び水域について調査するとともに、中立ブイ操業導入の可能性について調査する。
? 通常の冷凍餌とアメリカオオアカイカの足を整形・加工した冷凍餌の釣獲率を比較し、はえなわ用餌としての導入の可能性について検討する。
? 凍結製品の適正温度管理による省エネの可能性について検討する。
? トレーサビリティシステムを導入し漁獲から水揚までの履歴を開示することによる製品の差別化、付加価値向上の可能性を調査する。
? 船上加工製品の販路の拡大について調査する。


実施概要及び成果
? 開発丸(489トン)を周年用船し、204回の操業調査で296.7トンを漁獲した。総販売数量は251.9トンであった。
? 夜間調査について、夜間のメバチは昼間と比べて遊泳層が浅くなる習性を利用し、夜間に従来より浅い深度にはえなわ漁具を設置する夜間操業に適した時期および海域を調査した。具体的には5海域において夜間操業を各海域で5回ずつ合計35回行い、時期および海域の組み合わせでは初めての調査であったが、夜間操業におけるメバチの釣針1,000本当たりのの漁獲尾数(CPUE)が全操業平均値を上回った時期と海域は皆無であった。中立ブイの導入について、揚げ始めの100鉢において2鉢に1個の割合で浅縄に代わり中立ブイを取り付け、中立ブイ鉢と通常鉢に水深計を設置し、設置水深を把握するとともにCPUEおよび作業性を調査した。浮縄に隣接する釣針の平均設置水深範囲は通常鉢と中立ブイ鉢ではほぼ同深度であり、最も深い水深に位置する3番枝縄の釣針はやや中立ブイ鉢で深い傾向が見られ、中立ブイに隣り合う枝縄の平均設置水深範囲は目安とした設定水深範囲内に通常鉢よりも多くの釣針を設置することができた。また、中立ブイの作業性については、投揚網作業および漁獲物取り込み作業には特段の支障は認められなかった。
? 餌としてのアメリカオオアカイカ(以後アメアカと略す)足製品の利用に関する調査を第1次航海で10回、第2次航海で9回実施したが、通常餌と比べてCPUEが低く、揚縄時に通常餌に比べてアメアカの餌を付けた枝縄にはひどく撚りが入ってしまったこと、および餌の掛かりが良すぎて釣針から餌を外す作業に手間を要したことから揚縄時の作業ローテーションに撚り取り及び餌外し要員1名を組み込むことを余儀なくされ、揚縄時間も通常餌を用いた操業に比べて30分から1時間程度長く要した。
? 凍結製品の適正温度管理に関する調査は、全ての保冷魚倉の温度を通常(超低温)に設定した場合と、1番魚艙、2番魚艙、3番魚艙を超低温と-40℃に分けて設定した場合の燃料消費量の差を試算した。本年度は昨年度まで使用したアナログ式積算電力計に代えてデジタル式積算電力計を設置して発電量及び消費電力量を計測し、補機燃油消費量との関係を精査した。その結果、燃油消費量の差は0.154~0.261kl/日となった。保冷温度による品質分析についてはH18年8月下旬から9月上旬に漁獲したメバチをロインに裁割して新凍結装置で急速凍結を行い、2つの温度にて船上で7ヶ月間冷凍貯蔵したものを検体として用いた。種々の温度帯変化による分析を行った結果、漁獲後に急速凍結した高鮮度のメバチを超低温と-40℃で著しい温度変動を繰り返し与えなければ両者間の品質には差が生じないことが示唆された。
? トレーサビリティシステム導入に関する調査では、開発丸が漁獲したメバチ10本について漁獲から販売に至るまで各段階の履歴情報をJ-Fish.netに登録し、スーパーにて試験販売を行い、購入者に対してアンケート調査も実施した。
? 船内加工製品の販路拡大については、生きて揚がったメバチ25上を主体に試験的に40上も含めて新凍結ロイン製品として生産した。通常のGG製品より30%ほど高く販売され、販売先も昨年度の2者に加えて他の2社も購入し販路が拡大した。


成果報告
19年度開発ニュース(No.367)平成20年8月

担当者
開発調査センター 浮魚類開発調査グループ 伏島 一平・上原 崇敬・伊加 聖 電話 045-227-2735
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5  海洋水産資源開発事業(資源対応型:沖底混獲回避<日本海西部海域及び三陸沖海域>)
  沖合底びき網漁業における小型魚の混獲回避漁具の開発


背景と調査目的
   水産庁が作成する資源回復計画のうち、漁具改良等の導入により漁獲努力量削減を行って資源回復計画の着実な実施を図るため、日本海西部・九州西海域底びき網漁業(2そうびき)包括的資源回復計画(平成18年10月13日公表)及び太平洋北部沖合性カレイ類資源回復計画(平成15年3月10日公表)の2つの計画に関して、関係業界と水産庁は、小型魚の混獲回避を行うための漁具の改良等に関する開発を水研センターに要望した。それを受けて、日本海西部海域では2そうびき沖合底びき網漁船を用いてアカムツの小型魚を保護するため、また、太平洋北部海域では三陸沖の2そうびき沖合底びき網漁船を用いてキチジの小型魚の漁獲を控えることにより資源の再生産の効果を狙いとした調査を行うこととした。(三陸沖海域調査については平成18年度で終了)


実施海域
日本海西部海域

   

19年度の課題
<日本海西部海域>
アカムツの全長15?未満の小型個体の脱出生存率(脱出個体の比率に生存率を乗じて求めた数値)が50%以上となる選別式コッドエンドの開発の可能性を追求する。


実施概要及び成果
? 沖合底びき網漁船(2そうびき)の第1やまぐち丸及び第2やまぐち丸(1ヶ統、共に60トン)を4~5月と8~10月に調査を行った。平成18年度の調査結果を基に、アカムツの脱出率が高くかつマアナゴの残存率が高い、上部に72mmと81mmの角目網を取り付けた選別式コッドエンドを使用して操業した。コッドエンド全体にカバーネットを装着し、コッドエンドとカバーネットのアカムツの漁獲量を測定するとともに無作為に200尾をめどにサンプルを抽出して全長と重量を測定した。小型アカムツの脱出率は、4~5月は72mmで83%、81mmで63%、8~9月は72mmで77%、81mmで73%であった。また、脱出したアカムツの生存率を確認するために曳網時間を3分、5分、10分、15分とし、揚網後直ちにカバーネット内のアカムツ個体50尾をサンプルとして無作為に抽出し、生死を確認した。その結果、曳網時間が長くなるほど生存率が有意に低下する傾向が認められ、コッドエンドを抜けた時点での生存率は81.6%であると推定された。以上のことから、脱出生存率は4~5月での72mm角目網で68%、81mm角目網で51%であり、8~9月での72mm角目網で63%、81mm角目網で60%であると推定された。
? アカムツ小型魚の脱出率をできる限り下げずにマアナゴの脱出の減少を図ることを企図した選別式コッドエンドの開発について、4~9月ではマアナゴの脱出が少なかった選別式コッドエンドの上部に角目網を取り付け、10月は当該角目網の長さを50cm及び100cm短縮して取り付け面積を小さくした選別式コットエンドを使用して操業調査を実施した。マアナゴの脱出個体の比率は72mm角目網で61%、81mm角目網で67%であり、角目網を50cm短縮した場合は68%、100cm短縮した場合は56%であった。また、15cm未満のアカムツの脱出個体の比率は50cm短縮した場合は70%、100cm短縮した場合は64%であった。このことから、脱出網の面積を小さくしてもマアナゴの脱出を減らすことはできず、アカムツ小型魚の脱出を減らしてしまうだけであることが示唆された。
? 調査期間中の操業回数は343回で総漁獲量は240トンであった。


成果報告等
19年度開発ニュース(No.360)平成20年3月

担当者
開発調査センター 資源管理開発調査グループ 佐谷 守朗・笹尾 信・汐留 忠俊 電話 045-227-2740
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6  海洋水産資源開発事業(資源対応型:北太平洋さんま<北太平洋中・西部海域>)
  さんま棒受網漁業における公海漁場の開発


背景と調査目的
   我が国水域内におけるサンマ資源はTACで管理されているが、近年では豊漁が続いているためTAC消化が早く、漁期は短縮される傾向にある。大型さんま棒受網漁船の場合、毎年の申し合わせにより出漁を8月中旬としているが11月末に漁期は終了している。大型さんま棒受網漁船は中型鮭鱒あるいは近海まぐろ延縄漁業との兼業を行ってきたが、近年は兼業種の不振によりサンマ漁期以外は係船を余儀なくされる船が多く、この状態を放置しておくと廃業に追い込まれる可能性がある。一方でサンマ資源は資源評価調査により公海を含む北太平洋において400~800万トンと推定される資源量があることが明らかになっている。公海のさんま資源は、台湾、中国、韓国等の外国船が既に利用している。漁期前に公海域に分布する未利用のサンマ資源を利用し、漁期の拡大による大型さんま棒受網漁船の経営改善を図る必要がある。 本調査事業は、春季から夏季にかけて未利用資源である北太平洋中・西部公海域におけるサンマ資源を対象とした大型さんま棒受網漁船の操業パターン開発に取り組んだ。


実施海域
北太平洋中・西部海域

    

19年度の課題
? 国内さんま漁船の出漁前の春季~夏季において未利用公海漁場の開発を行う。
? 既存の国内市場と競合しない市場開発の可能性の一環として、当該漁獲物を対象として主としてミール向け製品の生産体制を検討するとともに、当該市場の開発を行う。
? 上記??に基づく操業等による総トン数100トン以上の大型さんま漁船の経営改善の可能性について検討する。


実施概要及び成果
? 第六十三幸漁丸(199トン)を5月下旬から7月下旬まで用船し、195回の操業調査でサンマ267.2トンの製品を生産した。
? 漁期前公海漁場の開発について、漁場選定は漁業情報サービスセンター、東北区水産研究所八戸支所、水研センター調査船「北鳳丸」及び「青海丸」の各情報を併せて検討した水域において、目視、スキャニングソナー及び魚群探知機により魚群を探索し操業した。航海別漁獲量では、第1次航海は最大58.8トン/日、第2次航海は最大20トン/日、第3次航海では調査水域は抱卵魚が混獲され灯付きが非常に悪く、漁獲量は10トン/日以下にとどまった。第4次航海は外国船の情報に基づき、前航海よりも更に東進した結果、最大36トン/日の漁獲を得た。第5次航海は台風4号の影響もあり漁獲は7.3トンであった。第6次航海は漁獲僅少で製品生産には至らなかった。なお、漁獲した個体は時期を経るに従い肥満度の高い個体が多く見られ、脂質含有量は時期を経るに従い高くなる傾向にあるが、6月中旬及び7月中旬に表面水温が高い場所で漁獲したものであり、この前後の時期に漁獲した群とは異なり大部分が完熟、放卵個体であった。
? 既存の国内市場と競合しない市場の開発について、水揚げまでの保冷期間を冷海水では6日以内、氷蔵では8日以内、これより古くなるものは凍結することとし、漁況及び海況を勘案しつつ適宜凍結、氷蔵品を生産した。また、海外輸出市場の可能性を検討するため11.7トンのサンプル製品を生産し、業界団体を通じて外国へ試験輸出を実施した。今後も大型さんま漁船の採算に見合う販売結果の得られる輸出市場の開発可能性を検討していく必要がある。
? 大型さんま漁船の経営改善への検討について、現在さんま専業船となっている大型さんま漁船の稼働経費を算出し、今回の漁獲物販売金額と比較を行った。


成果報告
19年度開発ニュース(No.356)平成19年11月

担当者
開発調査センター 底魚・頭足類開発調査グループ 小河 道生・越智洋介・平松 猛 電話 045-227-2729

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7  海洋水産資源開発事業(システム対応型:単船型まき網<北部太平洋海域>)
  北部太平洋大中型まき網漁業における完全単船型まき網操業システムの開発


背景と調査目的
   北部太平洋海区の大中型まき網漁業(135トン型)は1ケ統4~5隻、乗組員50名前後で構成され、多投資、多獲型の経営を続けているが、対象となるカツオ・マグロ類の来遊不安定やイワシ・サバ類の資源状況の悪化に加え、燃油高騰による漁船経費の急増等により経営維持が極めて困難な状況となっている。そのため、本事業では初期投資額と事業経費の低減、慢性的乗組員不足の解消を図ることが可能となる完全単船型の操業システムの確立を目的として調査を行った。


実施海域
北部太平洋海域

    

19年度の課題
? 完全単船型まき網操業システムの効率的運用に取り組み、その有効性について調査する。
? 新しく導入した整反装置、フィッシュポンプによる水揚げ方法、オーバーフローによる凍結魚シフト方法等の省人省力化システムについて調査する。
? 漁獲物の付加価値向上を図る。


実施概要及び成果
? 平成19年4月から9月までは伊豆諸島周辺から三陸東方沖にかけての広範囲にわたる水域でカツオ・マグロ類を対象に調査を行い、2,655トンを水揚げした。平成19年10月から平成20年3月までの期間は三陸南部から常磐及び犬吠埼にかけての沿岸水域で、イワシ・サバ類を対象に調査を行い、1,725トンを水揚げした。総販売数量は4,400トンであった。
? 操業システムの習熟状況と漁撈作業時間について、カツオ・マグロ類調査では揚網作業の所要時間は平均2~13分短縮されたが、網起しや漁獲物積込み作業では旧船より所要時間が長い漁獲量階層があった。他方、イワシ・サバ類調査では網締め機をパースウィンチ前に新設したところ作業の省力化は認められたものの作業時間は昨年度とほぼ同水準であった。
? 省人省力化システムの効果について、整反装置については浮子方と沈子方を完全に分離するため新たに沈子処理機の開発と実証化に取り組み、課題を整理して2月末にサバ・イワシ兼用網による洋上テストを行った結果実操業でも使用できることが示唆された。また、フィッシュポンプによる水揚げ作業について、魚体軟化の原因を解明するため3種類の吸入方法で検証したところ、処理数量にかかわらず固定配管よりも改造固定配管の方が軟化しており、尾叉長が35cmを超えると急激に軟化することが判明した。また、マサバの身割れの状態についてはフィッシュポンプによる水揚げしたものと運搬船からスクープマスターで水揚げしたものとあまり変わらないことが示唆された。次にオーバーフローによる凍結魚のシフトについて、No.2魚艙に平均体重2.3kgのカツオ、体重500~700gのマサバをそれぞれの操業時期にブライン凍結後にオーバーフロー方式でシフト作業を試みたがどちらも途中でハッチ口で凍結魚が詰まる現象が起き、その後の状況には改善がみられなかった。
? 漁獲物の付加価値向上に関する調査について、最初にシャーベット状海水氷を使用したカツオの鮮魚製品については、シャーベット状海水氷は魚艙の貯氷中に時間の経過と共に氷は上層、海水は下層へそれぞれ分離してしまうため魚艙間の移送ができず、カツオの魚体中心温度が5℃になるまでの時間は魚艙上層にあったと推測されるカツオは魚艙下層の冷海水だけで冷却されていたと推測されるカツオの約1.5倍の速さであり、シャーベット状海水氷の冷却効果が高いことが示唆されたが、シャーベット状海水氷処理と通常の水氷処理したカツオのK値の測定では個体差が大きく差異を検証するには至らなかった。次に沖締め凍結マサバについて、体重500g以上の大型のマサバを主対象に、高品質ブライン凍結製品(沖締め凍結マサバ)を生産して生鮮マサバの約3倍の高値で取引されたが、ゴマサバの混獲や脂の乗りが悪くなって生産を控えたため当初の予定数量(100トン)を大きく下回った。


成果報告
19年度開発ニュース(No.365)平成20年7月

担当者
開発調査センター 浮魚類開発調査グループ 伏島 一平・日野 厚生・阿部 周太 電話 045-227-2735
 電話045‐227‐2729  
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8  海洋水産資源開発事業(システム対応型:沖底かけまわし<北海道日本海海域>)
  北海道日本海海域における省人・省力型沖合底びき網漁業(かけまわし)操業システムの開発


背景と調査目的
   北海道日本海海域での沖合底びき網漁業は、資源状態の悪化による漁獲量の減少、輸入魚の増加等に伴う魚価低迷、燃油や人件費の高騰による漁業経費の増大、漁船の老朽化及び乗組員の高齢化と後継者不足などの問題を抱えており、漁業経営が極めて厳しい状況となっている。本漁業の存続を図るために、徹底した省人化による操業コストの削減や乗組員への労働負担の軽減、漁獲物付加価値向上を組み合わせた総合的な漁業生産システムを確立するための実証化調査を行った。


実施海域
北海道日本海海域

    

19年度の課題
? 省コスト化及び漁獲物処理作業の労力軽減を企図したホッケ・スケトウダラ両用型選別網を開発する。
? 販路拡大等により更なるホッケの単価向上を図る。
? 小樽機船漁業協同組合及び関係団体とともに、漁船と陸上施設を統合した新しい水揚システムの将来像を提言する。


実施概要及び成果
? 新世丸(160トン)を用船し、漁場滞在日数は158日、操業回数は930回、漁獲量はホッケ・カレイ類・スケトウダラを主体に合計2,633トンであった。
? ホッケ・スケトウダラ両用型選別漁具の開発について、漁具に係る初期投資を削減し、併せて漁獲物処理作業の労力軽減を図ることを企図している。前年度まではホッケ・カレイ類を対象とした操業においては一定の成果が得られたと判断されたが、本年度は通常漁具に対する漁具性能の把握とスケトウダラ操業での魚種分離効果の確認を行い、上部コッドエンドにスケトウダラの70%以上を、下部コッドエンドにウロコメガレイの70%以上を入網させることを目標とした。10月に8回の調査を行い、上部コッドエンドにスケトウダラの83%が、下部コッドエンドにウロコメガレイの86%がそれぞれ入網し、選別効果があることが確認された。労力軽減効果の確認については、通常網と両用型選別網とのカレイ類の選別処理時間を比較した結果、両用型選別網を使用した場合にカレイ類では約5分早くなったことから労力の軽減効果があることが示唆された。初期投資の削減については、1ヶ統当たりの作製経費は通常網が7,925千円、選別網は8,150千円とやや高額であるが、通常網はホッケ網とスケトウダラ網を各3ヶ統(計6ヶ統)保有する必要があるが、選別網は3ヶ統の保有ですむことから初期投資額を大幅に軽減することが可能となる。年間修繕費についても選別網の償却期間である3年間で比較すると通常網に比べて19%程度少なかった。
? ホッケの単価向上に関して、陸上選別機による選別販売は選別段階を2段階とし、選別サイズを小型魚と中型魚の境界の体重200gとしたところ、販売日2日間ともに中サイズが小サイズに比して4円/kg高く、選別販売することによる単価向上の可能性が示唆された。また、仕向け先の開拓による単価向上について、殺菌冷海水を使用した高鮮度の沖〆製品が調査当初から価格面で2~3円/kg高い評価を得ていたが、平成18年度に設立されたシーネット小樽機船有限責任事業組合との連携により、すり身以外にも加工品や水族館の海獣の餌向けに販路を拡大することにより単価の向上を図ることができた。
? 船並びに陸上施設を組み合わせた新しい水揚げシステムの将来像の検討について、小樽機船漁業協同組合と共同で新しい水揚げシステムの具体案を討議し、今までの本調査の成果を活かした小樽地区の沖底かけまわし全船による協業化で行う水揚げシステムの構築を目指す将来像を検討した。


成果報告
19年度開発ニュース(No.366)平成20年8月

担当者
開発調査センター 底魚・頭足類開発調査グループ 小河 道生・斎藤 哲・ ?橋 晃介 電話045‐227‐2729
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9  海洋水産資源開発事業(システム対応型:遠洋底びき網<全層トロール><北太平洋中・西部海域>)
  遠洋底びき網漁業における全層トロールシステムの開発


背景と調査目的
   遠洋底びき網漁業においては、外国水域・条約水域における漁獲割当量の削減及び天皇海山水域の対象資源水準の悪化に伴う生産量の減少により、漁業経営は極めて悪い状況にある。このような状況を打開するために、本事業では底びき網の既存漁場である天皇海山が存在する北太平洋公海上の表・中層域に豊富にあると推定される未利用資源に着目し、これまでの底魚類主体の利用から、中層~表層魚類を含めた資源を対象とした新たなトロール操業の可能性を追求することを目的とした調査を行った。


実施海域
北太平洋中部海域(外国200海里水域内は除く)

    

19年度の課題
? 公海トロール禁止を内容とする国連決議の趣旨を考慮し、海山漁場の環境に与える影響を低減することを企図したトロール操業の可能性を追求するため、表中層トロール漁具を併用し、天皇海山群上の中層域に認められる魚群反応を対象とした操業を含め操業を行い、当該反応の魚種を確認するとともに、その市場価値を把握する。
? 移行域における浮魚類を対象とした表中層トロール操業の企業化の可能性を検討する。


実施概要及び成果
? 第58富丸(401トン)を6月~11月の約5ヶ月間用船し、製品生産数量は287.3トンであった。
? 天皇海山群水域の中層域にみられる反応の魚種及び市場価値の把握について、海山域の中層底びき操業調査では前年度見られたキンメダイの中層反応は出現せず、サケガシラ、シマガツオ、キンメダイ等を合計708kg漁獲したがまとまった漁獲は得られず漁獲物を販売するには至らなかった。底びき及び中層びき操業におけるキンメダイの尾叉長組成について、底びき操業においては18cm級にモードを持つ体長群が主体を占めたのに対し、中層びき操業においては16cm級にモードを持つ体長群が主体を占めた。
? 浮魚類を対象とした表中層トロール操業の企業化の可能性の検討について、移行域におけるアカイカを含む浮魚類(サンマを除く)を対象として表中層トロールによる操業調査を実施し、昼間は魚群探知機により魚群探索を行って中層域に分布する魚群反応やDSL反応を主対象として操業を行い、夜間は浮上して表層に分布する浮魚類を主対象とし、昼間の反応や漁獲状況、表面水温分布図、他船等の操業位置を参考として曳網した。合計38日間操業を行い、操業回数は79回でアカイカ、サバ類、シマガツオ等を合計92.9トン漁獲した。また、表中層トロール漁具はコッドエンドの目合いを小さくしたことによる網内での吸い込み流に対する抵抗増大に起因する逆流現象に伴う漁獲への悪影響を避けること、及び、アカイカ目刺さりへの対処等を狙って高速曳網にこだわらず適宜調整して曳網した結果、アカイカ最大漁獲量は前年度と変わらず、かつ、過去発生したようなカイトの大規模な破損等の発生もなく、漁具の状態はさらに安定することが確認された。


成果報告
19年度開発ニュース(No.361)平成20年3月

担当者
開発調査センター 底魚・頭足類開発調査グループ 小河 道生・蛯名 儀富 電話 045-227-2729
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10  海洋水産資源開発事業(システム対応型:近海はえなわ<北太平洋西部海域>)
  近海まぐろはえなわ漁業における省人・省力型はえなわ操業システムの開発


背景と調査目的
   我が国の重要な沖合漁業のひとつである近海まぐろはえなわ漁業は、まぐろはえなわ漁業のうち、漁獲量で11~31%を占め、水揚金額で10~24%を占めているが、資源の減少、魚価の低迷、燃油の高騰及び漁船の老朽化などの問題を抱えており、その経営は極めて厳しい状況にある。 当該漁業の水揚量、水揚金額ともに全国の3割を占める気仙沼地区の近海まぐろはえなわ漁業においても例外ではなく、同地区の主力である 119トン型まぐろはえなわ漁船を新船建造したときの初期投資額と累計償却後収支の試算では赤字になり経営上成り立たなくなっている。 このため、近海まぐろはえなわ漁業において省人省力化、燃費の節減及び販売単価向上を目的とした近海まぐろはえわ漁船の企業化調査を行った。


実施海域
北太平洋西部海域

    

19年度の課題
? 新たに導入した直巻きモノフィラリールシステムによる投縄作業の習熟
? シャーベット状海水氷による初期冷却効果の確認及び魚艙における適切な保冷温度管理の構築
? シャーベット状海水氷で処理された製品の販売単価の向上
? 船型改良(バトックフロー船底を含む)及び大口径プロペラ導入等による燃料消費量の削減効果を評価するための基礎データの収集


実施概要及び成果
? 海青丸(149トン)を使用し、平成19年4月~平成20年3月の12ヵ月間197回の操業を行い、ヨシキリザメ、メカジキ、メバチを主体に297.9トンを漁獲した。
? 投縄作業の習熟について、釣針数は今年度目標であった2,700本を達成し、更に当業船より2名少ない14名体制での操業は支障なく行われた。漁労長の意図する深度帯に縄が設置できているかを確認するため、小型水深水温計を用いて枝縄の設置深度を測定した枝縄設置深度と投縄時懸垂線計算値の比較を行った結果、ほぼ漁労長の意図する深度帯に縄が設置できていたと判断された。
? 周年を通したシャーベット状海水氷による初期冷却効果の確認及び魚艙における適切な保冷技術の構築については、メカジキとメバチについて氷蔵処理とシャーベット状海水氷処理の異なった漁獲物処理を実施し漁獲時から水揚時までの魚体中心温度を測定した。また、それぞれ処理したサンプルについて水揚後の鮮度の経時変化を化学分析と官能検査を行い、鮮度保持効果に差異が見られるかどうかを検討した。魚体内温度の経時変化についてはメバチ、カジキともにシャーベット状海水氷処理された個体の方が氷蔵処理された個体に比べて冷却が早い傾向が見られた。化学分析(K値)については、メバチは何れの保蔵処理においても経過日数に対して一定の割合で増加し、メカジキは氷蔵に比較してシャーベット状海水氷処理が有意に低かった。官能検査では漁獲後から臭気、ドリップ、変色の発生が仲買人により確認された日までの経過日数を調べた。メバチはこれらの発生がシャーベット状海水氷処理の方が氷蔵処理に比して平均1~3日遅く、メカジキはシャーベット状海水氷処理の方が氷蔵処理に比して平均1~2日遅かった。魚艙における保冷温度管理については、7次航海までは冷媒の設定温度を-4℃としていたが凍結製品の多いことが指摘され、8次航海より-3℃に設定したところ凍結製品の混在はなくなり、適切な製品管理が図られるようになったと判断された。
? シャーベット状海水氷で処理された製品の販売単価の向上について、水揚時における製品の評価を落とさないようなするため、製品体表の氷跡、製品の身焼け、凍結製品の混在等の指摘された問題点について改善に取り組み、8次航海以降は問題点の指摘はごく僅かとなり、10次航海では最も良い評価を得た。
? 船型改良(バトックフロー船底を含む)及び大口径プロペラの導入等による燃料消費量の削減効果を把握するための基礎データの収集を行った。海青丸は当業船(119トン型)に比べて同じ速力で航行する場合、10%以上少ない燃料消費量で航行できることが示唆されたが、データ数が少ないため更にデータを収集し検討する必要がある。


成果報告

19年度開発ニュース(No.364)平成20年7月

担当者
開発調査センター 資源管理開発調査グループ 佐谷 守朗・原田 誠一郎・笹尾 信 電話 045-227-2740

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  11  海洋水産資源開発事業(システム対応型:次世代型近海かつお釣<南西諸島海域及び九州西方海域>)
    近海かつおつり漁業における次世代型操業システムの開発


背景と調査目的

   近海かつお一本釣漁業は、漁獲量、水揚金額ともにピークの約3分の1にまで減少している。近海かつお一本釣り漁船のうち半分を占める宮崎県籍船は重要な位置を占めている。このうち、南西諸島及び九州西方海域で操業する漁船の収支は燃油代、餌代、人件費の削減等種々の努力により一応の均衡を得ているが、使用船舶の大半は船齢が20年を過ぎて新たな中古船導入の時期にきている。しかしながら、中古船の供給は逼迫しておりスムーズに導入できていない。また、低賃金、居住環境の不備等から後継者が育っていない側面もある。この対応策として、船体の小型化や乗組員数の削減等による経費の削減を図るとともに居住空間の改良等を加えた近海小型かつお一本釣漁船を新たに導入し、小型船舶に適した漁場の選択や市場の選定並びに付加価値向上により、コストに見合った収入を確保し、採算の取れる操業システムであることを実証することを目的とした調査を行った。



実施海域
南西諸島海域及び九州西方海域

    

19年度の課題

? 効率的な操業パターンの追求
? 販売単価向上の可能性の検討
? サバヒの餌料としての利用の可能性の検討



実施概要及び成果

? 平成18年度に検討した操業パターンを参考にして94トン型かつお一本釣船を使用し、6~10月は九州西方海域を主体に、11月以降は南西諸島海域を主体に19トン型かつお一本釣船で操業した場合を想定して調査を実施し、できるだけ近い漁場で短期航海とするように留意しつつ高鮮度製品の販売に努めた。1航海あたりの平均航海日数は九州西方海域では2.7日、南西諸島海域では5.4日であり、平均漁獲量は九州西方海域では6.1トン、南西諸島海域では9.1トンであった。九州西方海域では6~11月にかけての33航海でカツオを主体に200.4トンを水揚げし、南西諸島海域では8月及び10~12月に8航海でカツオ及びキハダを主体に72.4トンを水揚げした。
? 販売単価向上の可能性の検討について、調査期間を通しての平均単価はカツオが317円/kg、キハダが304円/kg、メバチが202円/kg、全魚種では309円/kg(税込み323円/kg)と想定した販売単価314円/kg(税込み)を上回った。
? サバヒの餌料としての活用の可能性の検討について、九州西方海域の瀬付きカツオ魚群及び中層型浮魚礁に蝟集した魚群に対してサバヒが餌料として利用可能か否かを検討した。その結果、天然礁を主体とする操業ではカタクチイワシを餌料として用いた場合の操業1回あたりの漁獲尾数は89~434尾であったのに対し、サバヒでは0~11尾と極めて少なく、サバヒは餌料としては適さないことが確認された。また、中層型浮魚礁では、サバヒはある程度の漁獲が得られるものの、その漁獲量はカタクチイワシに比べると少ないことが確認された。漁獲尾数の差、購入単価の差、近海操業では低温畜養装置の必要がないことを考慮すると本調査ではサバヒはカタクチイワシに勝るとはいえず、サバヒの単価が下がらない現状においては採算面から有効とは言い難い。



成果報告
19年度開発ニュース(No.363)平成20年7月

担当者
開発調査センター 資源管理開発調査グループ 佐谷 守朗・笹尾 信・佐久間 秀行・月川 睦 電話 045-227-2740

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