平成18年度調査結果概要
■事業一覧
1 海洋水産資源開発事業(資源対応型:いか釣(北太平洋中・西部海域及び南太平洋西部海域)) |
2 海洋水産資源開発事業(資源対応型:海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域)) |
3 海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋かつお釣(太平洋中・西部海域)) |
4 海洋水産資源開発事業(資源対応型:遠洋まぐろはえなわ(太平洋中・東部海域)) |
5 海洋水産資源開発事業(資源対応型:沖底混獲回避(日本海西部海域及び三陸沖海域) ) |
6 海洋水産資源開発事業(システム対応型:単船型まき網(北部太平洋海域)) |
7 海洋水産資源開発事業(システム対応型:沖底かけまわし(北海道日本海海域)) |
8 海洋水産資源開発事業(システム対応型:遠洋底びき網<全層トロール>(北太平洋中・西部海域)) |
9 海洋水産資源開発事業(システム対応型:近海はえなわ(北太平洋西部海域)) |
10 海洋水産資源開発事業(システム対応型:次世代型近海かつお釣(南西諸島海域及び九州西方海域)) |
■事業ごとの調査概要
1 海洋水産資源開発事業(資源対応型:いか釣(北太平洋中・西部海域及び南太平洋西部海域)) |
いか釣り漁業における効率的な操業パターンの開発 背景と調査目的 北太平洋海域におけるアカイカを対象としたいか釣り漁船の操業は減少している。 要因としてアカイカはスルメイカ類に関して集群性が弱く、釣獲時の脱落が多いことなどにより流し網と比して生産性が低く 収益が低下していることが挙げられる。アカイカは北太平洋の公海上を中心に分布している資源であること、他のイカ類に比して高価であること、 加工原料としての国内需要も多いことなど、漁業上重要な資源である。このため、集魚技術の向上や脱落防止技術の開発などにより生産性の向上を目指す。 一方、平成14年度から南太平洋西部海域(ニュージーランド水域内)でのいか釣り漁場の再開発を目的とした調査を行い、 企業的操業が可能な漁場が複数存在することから、効率的な漁場選択パターンを確立することによる更なる生産性の向上を目指す。 実施海域 北太平洋中・西部海域、南太平洋西部海域 18年度の課題 <北太平洋中・西部海域> ? 北太平洋中・西部海域のアカイカを対象とした集魚技術の向上 ・発光ダイオード(LED) 光源の水中灯としての特性を生かした漁獲効率向上の可能性を追求するため、LED水中灯の色別の集魚特性について把握する。 ? 北太平洋中・西部海域のアカイカを対象とした脱落防止技術の開発 ・クッション針を用いた脱落率低減の可能性を検討する。 ・脱落要因を明らかとするため、 漁具の挙動と脱落率の関係及び魚体サイズと脱落状況の関係について検討する。 <南太平洋西部海域> ? 過去の調査で得られたニュージーランド東側水域及び南側水域に分布するニュージーランドスルメイカの地理的分布状況と海洋環境との関連性について、 その再現性を確認する。また、ニュージーランド西側水域に分布するオーストラリアスルメイカの地理的分布と海洋環境の関連性を明らかにする。 ? これまでの知見を踏まえ、ニュージーランド200海里水域内におけるいか釣漁業の採算性の可能性を追求する。 実施概要及び成果 <北太平洋中・西部海域> ? LED水中灯に関する調査は、中型いかつり漁船「第二吉丸(164トン)」を使用して、北太平洋中・西部海域で平成18年5月から7月まで、 アカイカの脱落率低減に関する調査は、大型いかつり漁船「第八白嶺丸(276トン)」を使用して、平成18年6月から9月まで、それぞれ行った。 生産量は、第二吉丸が74.5トン、第八白嶺丸が127トンであった。 ? LED水中灯に関する調査は、魚群探知機によって 水深300~350m付近にDSLが明瞭に確認できる水域で、青、緑、青緑、白の単色LED(600W)を使用して実施した。まず、第1次航海において、 4色間の漁獲尾数を比較した結果、青色が最も多く、緑色で最も少なかった。第2次航海では、最も漁獲尾数で差が大きかった青色と緑色を 用いて更に情報を蓄積した。その結果、青色が最も漁獲が多い可能性が示唆された。また、LED水中灯を使用した場合でも漁獲が得られる ことが確認された。 ? 脱落率低減に関する調査では、 1)クッション針を用いた脱落率低減の可能性について、 昨年度の調査で残された要因として魚体サイズに比して使用したバネが強すぎ、クッションが十分に機能しなかった可能性が残されたため、 大型個体に対する当該針の脱落率低減効果について検証したが、魚体サイズ、時期等にかかわらず効果は認められなかった。 2)漁具の挙動と脱落率の関係については、風力条件別に船体部位別脱落状況を比較した結果、いずれの風力条件においても船体部位による差は 有意ではなかった(χ2-検定 有意水準5%) 3)釣針の挙動を加速度計を用いて計測し、脱落率との関係を検討した結果、 漁具を捕捉する直前の釣針の巻き上げ速度が2.5m/秒以上の時に触腕のみで針を捕捉し脱落する可能性が示唆された。 4)魚体のサイズと脱落状況との関係について検討した結果、大型個体ほど脱落率が低い傾向にあり、外套背長約50cm以上より大型個体では ほとんど脱落しないことが示唆された。触腕1本の破断強度を計測した結果、体重とほぼ同程度であることが明らかとなった。 以上の結果より、触腕で釣針を捕捉した個体の脱落防止は困難であり、漁具の巻き上げ速度を制御することにより、触腕以外の複数腕で 釣針を捕捉させることを促す方策を検討する必要がある。 <南太平洋西部海域> ? 大型いかつり漁船「第八白嶺丸(276トン)」 を用いて平成18年11月9日から平成19年5月31日の間、4航海を行い、漁場滞在期間139日間、操業を124日間行い、ニュージーランドスルメイカ とオーストラリアスルメイカを合わせて749トン漁獲し、製品を718トン生産した。 1) ニュージーランド南島の東側から南側水域においては、 カンタベリー湾及びベリアンバンクでニュージーランドスルメイカの好漁域を確認した。当該位置における月別の表面水温は、 これまでの調査結果と同様の傾向を示し、当該結果の再現性を確認した。 2) ニュージーランド北島及び南島の西側水域においては、 ニュージーランドスルメイカとオーストラリアスルメイカ双方が漁獲された。両者の漁獲水温は、前者で11~17℃、後者で13~20℃と差が見られ、 当該水域におけるニュージーランドスルメイカの出現状況は。表面水温の動向により変化することが示唆された。 3) ニュージーランド200海里水域内におけるいか釣漁業の採算性については6か月の出漁期間中における水揚金額と経費を試算したところ、 大型いかつり漁船、中型いかつり漁船ともに生産金額が経費を上回っており、ニュージーランド海域操業により収益性を 確保し得ることが示唆された。 成果報告 18年度開発ニュース(No.344・ No.345・ No.346) 平成18年11月・平成19年1月・平成19年12月 担当者 開発調査センター 底魚・頭足類開発調査グループ 小河 道生 ・山下 秀幸・黒坂 浩平・?山 剛 電話045‐227‐2729 =========================================================================================== |
2 海洋水産資源開発事業(資源対応型:海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域)) |
海外まき網漁業における効率的な操業パターンの開発
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8 海洋水産資源開発事業(システム対応型:遠洋底びき網<全層トロール>(北太平洋中・西部海域)) |
遠洋底びき網漁業における全層トロールシステムの開発 背景と調査目的 遠洋底びき網漁業においては、 外国水域・条約水域における漁獲割当量の削減及び天皇海山水域の対象資源水準の悪化に伴う生産量の減少により、 漁業経営は極めて悪い状況にある。このような状況を打開するために、本事業では底びき網の既存漁場である 天皇海山が存在する北太平洋公海上の表・中層域に豊富にあると推定される未利用資源に着目し、 これまでの底魚類主体の利用から、中層~表層魚類を含めた資源を対象とした新たなトロール操業 の可能性を追求することを目的とした調査を行った。 実施海域 北太平洋中部海域(外国200海里水域内は除く) 18年度の課題 ? アカイカを主対象とした表中層トロール操業の企業化の可能性を検討する。 ? 天皇海山群水域の海山直上から中層域における底~中層資源を対象とした表中層トロール操業の企業化の可能性を検討する。 実施概要及び成果 ? 第58富丸(401トン)を6月~12月の約6ヶ月間用船し、 製品生産数量は137.9トンであった。 ? 当センターにおいて開発した表中層トロール漁具を改良し、 アカイカを主対象とした表中層トロール操業について、漁具に関してはカイトを改造した結果、 前年度に発生したようなカイトの大規模な破損は発生しなかったが、アカイカ小型個体漁獲時に コッドエンドへの目刺さりが発生した。1日当たりのアカイカの最大漁獲量は5.2トンであった。 本調査における販売単価から推定した当該日の生産金額は416千円であり、 転換トロール船の漁場滞在1日当たりの漁獲採算金額を下回った。 ? 天皇海山水域における中層トロール操業は、11月から12月まで実施したが、 海山上に明確な反応も出現せず漁獲僅少に終わった。 成果報告 18年度開発ニュース(No.347) 平成19年3月 担当者 開発調査センター 底魚・頭足類開発調査グループ 小河 道生・ 平松 猛・越智 洋介 電話 045-227-2729 ========================================================================================= |
9 海洋水産資源開発事業(システム対応型:近海はえなわ(北太平洋西部海域)) |
近海まぐろはえなわ漁業における省人・省力型はえなわ操業システムの開発 背景と調査目的 我が国の重要な沖合漁業のひとつである 近海まぐろはえなわ漁業は、まぐろはえなわ漁業のうち、漁獲量で11~31%を占め、水揚金額で10~24%を 占めているが、資源の減少、魚価の低迷、燃油の高騰及び漁船の老朽化などの問題を抱えており、 その経営は極めて厳しい状況にある。 当該漁業の水揚量、水揚金額ともに全国の3割を 占める気仙沼地区の近海まぐろはえなわ漁業においても例外ではなく、同地区の主力である 119トン型まぐろはえなわ漁船を新船建造したときの初期投資額と累計償却後収支の試算では赤字 になり経営上成り立たなくなっている。 このため、近海まぐろはえなわ漁業において省人省力化、 燃費の節減及び販売単価向上を目的とした近海まぐろはえわ漁船の企業化調査を行った。 実施海域 北太平洋西部海域 18年度の課題 ? 直巻きモノフィラリールシステム による投揚縄作業の習熟。 ? シャーベット状海水氷による初期冷却の鮮度保持効果の確認。 ? シャーベット状海水氷で処理された製品の販売単価向上の可能性の追求。 ? バトックフロー船底及び大口径プロペラの導入による燃料消費量10%削減効果の検証。 実施概要及び成果 ? 海青丸(149トン)を使用し、 平成18年9月~平成19年3月の7ヵ月間114回の操業でヨシキリザメ、メカジキ、メバチを主体に347.6トンを漁獲した。 ? 投揚縄作業の習熟について、釣針数は当年度目標を達成し、航海1日当たりの製品量及び水揚金額は 当業船を下回ったが釣針数を同量に換算すると当業船を上回った。これは、漁労長の意図する水深帯に 縄を設置ができるようになった可能性、モノフィラメント幹縄による釣獲率向上の可能性を示唆している。 また、乗組員が直巻きモノフィラリールシステムに慣れてきたことにより、当業船より2名少ない 14人の乗組員で操業できるようになった。 ? シャーベット状海水氷初期冷却による 鮮度保持効果の確認については、氷蔵処理に比べて魚体中心温度を5℃に下げるのが1月2日程度の時間で可能なこと、 K値が上がりにくいこと、色目が落ちにくいこと等から氷蔵に比べて初期冷却が速やかに行われ、 鮮度保持効果が優れていることが示唆された。 ? シャーベット状海水氷で処理された 製品の販売単価向上の可能性の追求について、気仙沼市場において海青丸の製品を購入した 主要な仲買に消費者直前までの販売ルート、製品形態等の聞き取り調査を行った。 メカジキのシャーベット状海水氷処理製品の評価に関して、漁獲後の取扱いの改善や 品質等に関する情報提供により徐々に良くなってきたが、販売単価はいずれの魚種も シャーベット状海水氷処理製品より氷蔵処理製品の方が高い傾向にあった。 ? バトックフロー船型及び大口径プロペラの導入による燃料消費量削減効果について、 海青丸の燃油月報と気仙沼遠洋漁業協同組合の協力により入手した当業船3隻の航海時の 燃油消費状況を比較し、航海時における海青丸の燃油消費量は当業船の約90%であった。 成果報告 18年度開発ニュース(No.354) 平成19年9月 担当者 開発調査センター 資源管理開発調査グループ 佐谷 守朗・原田 誠一郎・ 岡谷 喜良・鶴 専太郎 電話 045-227-2740 ========================================================================================== |
10 海洋水産資源開発事業(システム対応型:次世代型近海かつお釣(南西諸島海域及び九州西方海域)) |
近海かつおつり漁業における次世代型操業システムの開発 背景と調査目的 近海かつお一本釣漁業は、漁獲量、水揚金額ともにピークの約3分の1にまで減少している。 近海かつお一本釣り漁船のうち半分を占める宮崎県籍船は重要な位置を占めており、収支は燃油代、 餌代、人件費の削減等種々の努力により一応の均衡を得ているが、使用船舶の大半は船齢が20年を過ぎて 新たな中古船導入の時期にきている。しかしながら、中古船の供給は逼迫しておりスムーズに導入できていない。 また、低賃金、居住環境の不備等から後継者が育っていない側面もある。この対応策として、 船体の小型化や乗組員数の削減等による経費の削減を図るとともに居住空間の改良等を加えた 近海小型かつお一本釣漁船を新たに導入し、小型船舶に適した漁場の選択や市場の選定並びに 付加価値向上によりコストに見合った収入を確保し、採算の取れる操業システムであることを 実証することを目的とした調査を行った。 実施海域 南西諸島海域及び九州西方海域 18年度の課題 南西諸島及び九州西方海域の 近海かつお一本釣漁業において、次世代型漁船のシステム設計のための適正船型の決定及び 効率的な操業パターンの開発に取り組む。 実施概要及び成果 ? 適正船型については、従来の60~119トン型標本船6隻の操業、 漁獲、水揚実績を調査し、平均値から限界積載量を決め、魚艙容積から19トン型船型が適正と考えられた。 ? 収入は標本船の実績から漁場別操業パターンを検討し、航海日数短縮による鮮度保持効果による 販売単価アップを見込んだ水揚金額とし、支出は4タイプの建造価格を試算して諸経費を加算した金額とし、 長期収支は試算した収入及び支出を用いて乗組員を日本人と外国人研修生を混成して 建造価格別に償却後の収支累計が黒字になる期間について4タイプの試算を行った。 その結果、償却後の収支の累計が黒字になるのは7~10年と試算された。 ? 操業システムの構築に当たっては、関係漁業者団体、関係県、関係県漁連等と 検討会や打ち合わせを繰り返し行って結果の周知をし、関係漁業者の理解が進捗した。 今後は採算のとれるシステムであることを実証する必要がある。 成果報告 18年度開発ニュース(No.355)平成19年11月 担当者 開発調査センター 資源管理開発調査グループ 佐谷 守朗・原田 誠一郎・笹尾 信 電話 045-227-2740 ========================================================================================= |