国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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平成14年度調査結果概要

事業一覧

<沖合漁場等総合開発調査事業>

●資源管理型沖合漁業推進総合調査 a.するめいか

●資源管理型沖合漁業推進総合調査 b.東シナ海ふぐ類等

●大水深沖合漁場造成開発事業

<海洋水産資源利用合理化開発事業>

●まぐろはえなわ

●まき網:熱帯インド洋海域

●まき網:熱帯太平洋中部海域

●いか釣(大型いか)

●いか釣(あかいか)

●かつお釣

<新漁業生産システム構築実証化事業>

●大中型まき網

●沖合底びき網(2そうびき)

●沖合底びき網(かけまわし)

●ハイブリッド・トローラー

 

事業ごとの調査概要

<沖合漁場等総合開発調査事業>


漁業種類及び調査期間

調 査 海 域

調査船

漁獲対象魚種

資源管理型沖合漁業推進総合調査
 a.するめいか
  (H14. 5~14. 9)



 


日本海海域




 


第2堺丸
(14.00トン)
第8薩摩丸
(14.34トン)
第5明信丸
(14.86トン)


漁獲量    60.1トン
製品量    60.1トン
 スルメイカ 60.1トン


 

調 査 の ね ら い と 実 施 概 要

<調査のねらい>
 我が国周辺で漁獲されるスルメイカの漁獲量において約3割を占める5トン以上30トン未満船による小型いか釣漁業の経営は、年変動の激しい漁獲量や魚価に左右され、船上集魚灯の光力競争等もあって厳しい状況に置かれている。本調査では、当該漁業を対象として、その操業実態を把握するとともに、有効な自主規制措置の可能性の検討を前提として、主に船上集魚灯光力の漁獲における有用性に関する調査を行い、もって漁業者による自主的資源管理の促進に資することをねらいとする。
最終年度である平成14年度は以下の各項に関する調査を行った。

 1.船上集魚灯光力が180kW、120kW及び60kWの船が、互いの集魚灯光が干渉しない船間距離を保持して操業を行い、それぞれの場合のCPUEを比較する。

 2.上記光力条件別の集魚灯運転コストを把握し、集魚費用対漁獲効果の検証を行う。

<実施概要>
1.光力別CPUE
 (1) 調査船3隻に対し、180kW、120kW、60kWの各光力を割り当て、1~2マイル程度の船間距離を保持して操業を行い、それぞれの場合のCPUEを比較した。
 なお、操業に際しては、光力を除く船間の漁獲能力差を極力平準化するため、全船の釣機台数及び擬餌針を統一し、各船に割り当てる光力を操業日毎に変更した。
 (2) 全調査期間のCPUE中央値を光力別に求めたところ、180kW船(29.72尾/台/時)、120kW船(18.94尾/台/時)、60kW船(18.63尾/台/時)の順に高く、180kW船と60kW船の組合せに有意差が認められた。旬別・光力別にCPUEを求めたところ、光力間のCPUE差は、漁獲量水準が高い時期(5月下旬~6月下旬)に大きく、漁獲量水準が低い時期には小さいことが明らかとなった。また、光力間のCPUEの関係を検討したところ、漁獲量水準によらず一定の比率とみなし得ると考えられた。これらのことから、光力を漁獲努力量として定量化しうる可能性が示唆され、漁獲努力量管理上有用な情報になると考えられた。

2.集魚費用対漁獲効果
 (1) 各船の燃料系統に流量計を設置し、操業時の光力別燃油消費量について調査を行った。また、減価償却費等も含めた年間の集魚灯運転コストと水揚額を光力別に試算し、集魚灯の費用対効果について、年間の各光力条件間の水揚額の差額と集魚灯運転費の差額を比較することにより評価を行った。
 (2) 光力別の年間集魚灯運転コストは、180kW船で約483万円、120kW船で約356万円、60kW船で約220万円と試算された。光力間の差額は180kW‐120kW船間で約126万円、120kW‐60kW船間で約136万円、180kW‐60kW船間で約262万円であった。
 他方、光力別の年間水揚高は、180kW船で約1,411万円、120kW船で約1,171万円、60kW船で約933万円と試算された。光力間の差額は180kW‐120kW船間で約240万円、120kW‐60kW船間で約238万円、180kW‐60kW船間で約478万円で、各光力条件の全ての組合せで水揚額差が集魚灯運転コスト差を上回っていたことから、大光力船が漁獲量のみならず利益面でも有利となることが示唆された。
 しかし、上述の通り、光力による漁獲量差は漁獲量水準が低い場合には小さく、集魚灯の増設効果が顕著に現れなかったことから、弾力的な集魚灯の運用がコスト削減に有効である可能性も示唆された。
 

漁業種類及び調査期間

調 査 海 域

調 査 船

漁獲対象魚種

b.東シナ海ふぐ類等
(H14.12~15. 3)

 

東シナ海海域


 

大黒丸(19トン)
春日丸(19トン)
天龍丸(19.46トン)
日光丸(17トン)

漁獲量    19.8トン
製品量    5.2トン
 トラフグ  5.2トン
 

調 査 の ね ら い と 実 施 概 要

<調査のねらい>
 トラフグを対象としたはえ縄漁業においては、当初用いられていた底はえ縄漁法に加えて浮はえ縄漁法が導入されて以後の資源減少が著しいことから、浮はえ縄漁法の導入によりそれまでは漁獲対象とされていなかった産卵回遊群が漁獲されるようになり資源減少を招いたのではないかとの懸念が抱かれている。本調査では、底はえ縄・浮はえ縄双方の間での産卵回遊群に対する漁獲強度の関係など、漁業者による自主的な資源管理型漁業を推進するために必要な各種情報を提供することを目的とする。
平成14年度は以下の各項に関する調査を行った。

1.漁法による漁獲特性調査
 昨年度までに引き続き、底はえ縄漁法と浮はえ縄漁法のそれぞれを用いて調査を行い、トラフグの索餌期から産卵場への回遊期における両漁法の漁獲特性を比較する。

2.釣針サイズによる漁獲特性調査
 底はえ縄漁法と浮はえ縄漁法のそれぞれにおいて、2種類のサイズの釣針(各漁法でそれぞれ通常用いられている針とそれより大型の針)を用いて調査を行い、釣針サイズの違いがトラフグの漁獲と体長組成に与える影響を漁法別に把握する。

<実施概要>
 12月1日に福岡県鐘崎にて浮はえ縄船2隻を、山口県萩にて底はえ縄船2隻を、それぞれ用船し、調査を開始した。

1.漁法による漁獲特性調査
 底はえ縄で532尾(1,285kg)、浮はえ縄で1,072尾(1,612kg)のトラフグを漁獲した。
 性比は、雌雄比が底はえ縄では2時1分と雌が多かったが、浮はえ縄では性比に大きな偏りは見られなかった。生殖腺の発達状況は、雄は主として全長40cm以上の個体で12月から生殖腺が発達し始め、1月以降急激に発達した。雌は主として全長45cm以上の個体で1月以降生殖腺が徐々に発達し始めた。1操業日あたりの漁獲尾数は、浮はえ縄が底はえ縄に比べ常に高く、特に12~1月は2倍以上高かった。産卵親魚に対する1操業日あたりの漁獲尾数は、雌に対しては底はえ縄が有意に高く、雄に対しては浮はえ縄が有意に高かった。なお、14年度の調査では浮はえ縄の全漁獲尾数が底はえ縄に比べ2倍程度多かったが、これは、14年度から浮はえ縄の釣針を、1.4号から、近年当業船が使用している1.25号に変えたこと、及び、浮はえ縄の釣針数が底はえ縄に比べ3割程度多かったことに起因すると考えられる。

2.釣針サイズによる漁獲特性調査
 浮はえ縄通常針(1.25号)で574尾(864kg)、比較針(1.5号)で310尾(499kg)、底はえ縄通常針(1.5号)で208尾(426kg)、比較針(1.7号)で241尾(531kg)のトラフグを漁獲した。浮はえ縄については、いずれの時期もCPUE(漁獲尾数/1,000針)は1.25号針が1.5号針より高かった。魚体サイズは12月には1.5号針より1.25号針で小型個体がやや多い傾向が見られたが、1月以降違いは見られなかった。単価は12月には1.5号針で高い傾向が見られたが、時期が進むにつれ単価が下落し釣針サイズ間の差もなくなった。水揚金額は、12月は単価差がCPUE差を補い、釣針サイズ間でほとんど差はなかったが、1月以降トラフグの単価が下落すると、釣針サイズ間で単価差がなくなり、CPUE差が大きいために1.25号針で高かった。底はえ縄については、体長、単価ともに1.5号針と1.7号針との間で明瞭な差異は認められなかったが、CPUEは1.7号針で若干高い場合が多く、このため、水揚金額も1.7号針で高かった。
 以上のことから、浮はえ縄については、通常より大きめの比較針(1.5号)では、30cm
以下の小型魚の漁獲尾数を1月3日に抑制する効果はあるものの、30cm以上の個体の漁獲尾数も3月5日に低下し、結果として水揚金額の減少を招く可能性が示唆された。底はえ縄については、通常より大きめの比較針(1.7号)ではCPUEが上昇し、結果として水揚金額を増加させる可能性が示唆された。

3.その他
 本事業の一環として日中漁業者の民間交流を行った。14年10月21日~26日に西日本延縄漁業訪中団(10人)を北京、烟台、上海の各都市に派遣し、また、12月10日~14日に中国西日本漁業交流団(8人)を東京、福岡、唐津の各都市に招請し、漁業秩序確立と資源管理措置の促進を図るための協議を行った。
 

漁業種類及び調査期間

調 査 海 域

調査船

漁獲対象魚種

大水深沖合漁場造成開発事業
   (H14. 4~15. 3)



 

北太平洋西部(日本
沖合)海域



 

第18太幸丸
(69.69トン)



 

漁獲量   327.5トン
製品量   327.5トン
 カツオ  217.2トン
 キハダ   58.9トン
 メバチ   46.4トン
 その他   5.1トン

調 査 の ね ら い と 実 施 概 要

<調査のねらい>
 我が国周辺水域の表層漁業生産力の向上と近海かつお・まぐろ漁業の経営の安定に資するため、昭和62年度から平成11年度にかけて、主として南西諸島周辺の水深1,000~2,000mの水域に中層型浮魚礁を設置し調査を行ったが、現在、この浮魚礁群は、漁場として近海かつお一本釣漁船等に有効に活用されている。
上記成果を踏まえ、12、13年度に引き続き、これまで漁場としてあまり利用されていなかった大水深域(水深2,000~3,000m)において、カツオ・マグロ類を対象とした中層型浮魚礁漁場を造成し、漁場の拡大を図り、我が国200海里水域内の一層の高度利用とかつお・まぐろ漁業の安定に資するため、南西諸島周辺の大水深域において5基の中層型浮魚礁を新設し、その漁場造成効果を確認する。

<実施概要>
1.中層型浮魚礁の設置
 14年8月に南西諸島東側の大水深域に5基の中層型浮魚礁を設置した。うち3基は、これまでと同様、かつお釣り・曳縄において使用することを想定し、礁体水深を100m以浅とした。他の2基は、まぐろはえ縄・旗流しにおいて使用することを想定し、はえ縄漁具と干渉しないよう礁体水深200m以深とした。

2.漁場造成効果の確認
(1)かつお釣り・曳縄用魚礁
14年度設置のかつお釣り・曳縄用の3基の中層型浮魚礁群の漁場造成効果を、水深2,000m以浅の既存浮魚礁漁場(9~11年度設置)と比較することによって確認するとともに、平成13年7月に設置した7基の中層型浮魚礁群についても、13年度末時点では周年の調査結果を得ていなかったことから、漁場造成効果を確認することとした。
 調査では、南西諸島東側水域において合計1,045回の竿釣り操業を行い、カツオ、キハダ、メバチの3魚種主体に合計328トンを漁獲した。14年度に設置したかつお釣り・曳き縄用の中層型浮魚礁群では10月以降に漁獲が得られるようになり、89回の操業で前記の3魚種を主体に30トンを漁獲した(337kg/回)。これに対して既存浮魚礁漁場における10月以降の110回の操業では同様の3魚種を主体に22トンを漁獲した(202kg/回)。
 また、当該域に13年度に設置した中層型浮魚礁群では299回の操業で前記の3魚種を主体に78トンを漁獲した(260kg/回)。これに対して既存浮魚礁漁場では231回の操業で同様の3魚種を主体に55トンを漁獲した(237kg/回)。
 このように、南西諸島東側の大水深域に14年度に新設した中層型浮魚礁群及び13年度に設置した中層型浮魚礁群における操業結果は、同時期の既存浮魚礁漁場におけるものと比較すると、魚種組成は同様、CPUEは同等以上であり、大水深域に設置した中層型浮魚礁群の漁場造成効果を確認しつつある。
(2)まぐろはえ縄・旗流し用魚礁
 まぐろはえ縄・旗流し用に新設した中層型浮魚礁2基においては、延べ漁具数116基の旗流し操業を行ったが、設置時期が当該海域における旗流しの盛漁期(春~夏)を過ぎた時期であったこともあり、ビンナガ15kg(1尾)、その他の魚種6kgの漁獲にとどまった。
 
<海洋水産資源利用合理化開発事業>

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

まぐろはえなわ
(H14. 4~15. 3)



 

太平洋中・東部海域




 

開発丸
(489トン)



 

漁獲量   310.0トン
製品量   252.2トン
 メバチ  115.7トン
 キハダ  28.1トン
 ビンナガ 44.2トン
 その他  64.2トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 メバチを主対象として太平洋低・中緯度海域を広範囲に調査し、既存漁場の再開発の可能性と縁辺的拡大を探求するとともに、操業の合理化と生産性の向上を追求する。

1.メバチを主対象とした既存漁場の再開発と縁辺的拡大のため、マーシャル水域からタヒチ東方水域付近まで広く調査し、漁場形成と企業化の可能性について調査する。

2.メバチの鉛直的日周行動の解明に努めるとともに、その行動に合わせた効果的な漁具の開発及び操業形態を検討する。

3.通常の冷凍餌と人工餌の釣獲率を比較し、人工餌導入の可能性について調査する。

4.付加価値付けを目的とした新凍結製造システムの習熟及び効率的運用を図る。

<実施概要>
1.操業調査(通常操業)
 4月8日まで引き続き13年度の第4次航海に従事し、24日、三崎港に入り水揚げした。
 第1次航海(6月10日~8月31日)は、キリバス北方水域、ハワイ東沖~ジョンストン沖水域、北緯水域の順に計40回の操業を行った。水域別CPUE(原魚換算/1操業日)は、それぞれ1.2トン(うちメバチ0.8トン、キハダ0.1トン)、0.9トン(うちメバチ0.5トン、キハダ0.01トン)、1.0トン(うちメバチ0.6トン、キハダ0.1トン)であった。
 第2次航海(9月4日~11月12日)は、洋心部~タヒチ東方水域、タヒチ南東水域の順に計37回の操業を行った。水域別CPUEは、それぞれ1.6トン(うちメバチ0.6トン、キハダ 0.2トン)、2.7トン(うちメバチ0.4トン、キハダ0.1トン、ビンナガ0.9トン、マカジキ0.7トン)であった。
 第3次航海(11月16日~2月13日)は、タヒチ南東水域、洋心部の順に計63回の操業を行った。水域別CPUEは、それぞれ、2.1トン(うちメバチ0.3トン、キハダ0.1トン、メカジキ0.1トン、マカジキ0.2トン)、1.2トン(うちメバチ0.8トン、キハダ0.2トン)であった。
 第4次航海(2月17日~5月8日)は、北緯水域、ジョンストン沖水域、キリバス北方水域、ジョンストン沖水域の順に計54回の操業を行った。水域別CPUEは、それぞれ1.6トン(うち、メバチ1.0トン、キハダ0.4トン)、1.3トン(うちメバチ0.7トン、キハダ0.2トン)、1.1トン(うちメバチ0.7トン、キハダ0.2トン)、1.8トン(うちメバチ1.3トン、キハダ0.1トン)であった。

2.既存漁場の縁辺的拡大に関する調査
 10月中旬から11月上旬のタヒチ南東水域では、メバチのCPUEは他水域に比べ低位であったが、マカジキ及びビンナガが漁獲されたため、操業1日あたりの生産金額は約89万円で、太平洋メバチ漁場の当業船1日あたり生産金額と同程度であり、既存漁場の縁辺部における漁場の存在を確認した。11月下旬から12月上旬に同水域で実施した調査でも同様の結果が得られた。

3.昼夜操業調査
 メバチの遊泳層の日周行動に合わせた効率的な操業方法の可能性を検討するため、日照がある時間帯(昼操業)と無い時間帯(夜操業)に分けて投・揚縄作業を完了する昼夜操業を実施した。また月齢とメバチの釣獲率に関しても検討した。
7月中~下旬の新月から満月となる時期にジョンストン沖水域で昼夜各8回の調査を実施した。メバチの釣獲率(釣獲尾数/1,000釣針)は、昼4.9(最大9.8、最小2.7)、夜4.8(最大20.9、最小0.0)であった。当該期間は、月が満ちるのに従いメバチの釣獲率が増える傾向が昼夜ともに見られた。また、9月下旬から10月上旬の満月から新月となる時期に、洋心部~タヒチ東方水域で昼夜各8回の調査を実施した。メバチの釣獲率は、昼3.3(最大8.0、最小0.0)、夜2.6(最大4.5、最小0.0)であった。前回とは反対に月が欠けていくのに従いメバチの釣獲率が減る傾向が昼夜ともに見られた。

4.人工餌に関する調査
 第3次航海の洋心部水域において、縄全体の中で人工餌(イカゴロ)範囲と通常餌範囲とを設けて比較調査を行った。人工餌範囲を全160鉢のうちの中央80鉢に設置した場合と両端40鉢(計80鉢)とした場合とを1日交互に各10回の操業調査を行った結果、メバチの釣獲率は、人工餌範囲が6.7、通常餌範囲が9.1であった。
 第4次航海の北緯水域及びジョンストン沖水域では、人工餌と通常餌を交互に餌付けした「イカゴロ操業」と通常餌のみを用いた「通常操業」を1日交互に行った結果、メバチの釣獲率は、それぞれ6.2、11.2であった。

5.新凍結製造システム
 メバチ及びキハダを対象に、船上にてロイン(四割り)加工し、衝突噴流方式で凍結生産した。生産過程において当該製造システム運用の習熟を図るとともに、当該製造システムの問題点、改良点、将来的な実用化に資する基礎データを収集し、GG(エラ腹抜き)換算でメバチ12.4トン、キハダ3.1トンを生産した。

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

まき網
(H14. 4~15. 3)


 

熱帯インド洋海域



 

 日本丸
 (760トン)


 

漁獲量   3,210.0トン
製品量    3,210.0トン
 カツオ  1,884.0トン
 キハダ   578.0トン
 その他   748.0トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 熱帯インド洋海域において、カツオ・マグロ類の分布、移動、海洋環境等の調査を行い、まき網漁場の形成とその要因について把握し、当該水域における効率的な周年操業の可能性を調査するとともに、若齢マグロ類の漁獲を最小化する手法に関して調査する。

1.熱帯インド洋海域における漁場の有効利用と効率的な操業パターンについて探求する。

2.流れ物に蝟集した魚群を対象とした操業における若齢マグロ類の漁獲を最小化する方法について探求する。

3.外地における漁獲物の販路拡大のため、プーケット以外の水揚港について情報を収集する。

4.当該漁業における省人省力の可能性について探求する。

<実施概要>
 4月5日にプーケットに入港し13年度分の水揚げを行った後、同月10日、第1次航海のため同港を出港し、14年度の調査を開始した。本年度は5航海の調査を実施し、人工筏を主体に148回の操業を行い、カツオ主体に3,210トンを漁獲した。
これを航海別に見ると、第1次航海(漁場滞在:4月12日~6月4日)は、東部南緯水域で調査を行い、36回の操業でカツオ主体に535トン(操業1回あたり14.9トン、漁場滞在1日あたり9.9トン)を漁獲した。
 第2次航海(漁場滞在:8月20日~10月12日)は、西部水域を主体にチャゴス水域(入漁許可期間:9~11月)及び東部水域で調査を行い、西部水域では自然の流れ物を主体に、チャゴス水域及び東部水域では人工筏を主体に合計28回の操業で630トン(操業1回あたり22.5トン、漁場滞在1日あたり11.7トン)を漁獲した。
 第3次航海(漁場滞在:10月24日~12月13日)は、東部水域及びチャゴス水域で調査を行い、人工筏を主体に32回の操業で770トン(操業1回あたり24.1トン、漁場滞在1日あたり15.1トン)を漁獲した。
 第4次航海(漁場滞在:12月30日~2月10日)は、東部水域及びチャゴス水域で調査を行い、人工筏を主体に30回の操業で820トン(操業1回あたり27.3トン、漁場滞在1日あたり19.1トン)を漁獲した。
 第5次航海(漁場滞在:2月22日~4月2日)は、東部水域で人工筏主体に22回の操業で455トン(操業1回あたり20.7トン、漁場滞在1日あたり11.4トン)を漁獲した。
重点調査水域としたチャゴス水域は、第2次航海において入域期間6日、操業2回で60トン、第3次航海で入域期間13日、操業10回で295トン、第4次航海において入域期間3日、操業2回で35トンをそれぞれ漁獲した。特に、第2次航海中に衛星情報等で西向きの表層流を予想し東部水域において放流した人工筏は、第3次航海中の11月下旬から12月上旬にかけてチャゴス水域内に漂移し、魚群の蝟集状況も良好で好漁獲を得た。
鉄枠筏の下網の網丈を、2m、8m、15m、25mとしたもの及びカーテン型の人工筏を適宜放流し、魚群の蝟集状況、魚種、体長組成等の差異について調査した。漂移状況等条件が整った鉄枠筏(8m)とカーテン型筏の比較では、カーテン型筏の方が蝟集状況がやや良好で、マグロ類の組成比率が若干高い傾向を示したが、各魚種の体長組成等を含め明確な差異を確認するには至らなかった。
 プーケットに代わる水揚港として、第3次航海の漁獲物(770トン)をインドネシア・バニュワンギ港(ジャワ島東端)で販売し、岸壁状況、荷役等のトラブルもなく終了した。
この結果、同港は、外地販売の販路拡大をねらいとしたプーケットに代わる水揚港として十分機能することが示唆されたほか、燃油価格が安価であるメリットも確認された。

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

まき網
(H14. 4~H15. 3)



 

熱帯太平洋中部海域




 

第18太神丸
(349トン)



 

漁獲量   4,087.0トン
製品量   4,087.0トン
 カツオ  3,213.5トン
 キハダ   649.4トン
 メバチ   186.7トン
 その他   37.4トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 熱帯太平洋中部海域においてカツオ・マグロ類の分布、移動、海洋環境等の調査を行い、まき網漁場の形成とその要因について把握するとともに、既存漁場の縁辺的拡大を図り、また、若齢マグロ類の漁獲を最小化する手法について調査する。

1.主として東経160度以東の熱帯太平洋中部海域において、カツオ・マグロ類を対象としたまき網漁法による漁場形成の確認とその要因の把握に努める。

2.既存漁場の縁辺的拡大のため、北緯5度以北、西経域、南緯5度以南の水域の漁場を開発する。


3.流れ物付き群の操業における若齢マグロ類の漁獲を最小化する手法に関し調査し、具体化する。

4.衛星情報等の有効利用による効率的な漁場探索及び操業方法を確立する。

5.カツオの脂肪含有率について、水域別、群の性状別及び時期別変化について調査する。


<実施概要>
1.熱帯太平洋中部海域におけるカツオ・マグロ類まき網の漁場形成の確認5月の調査海域は、風力2以下の出現率が75%と高く、表面水温が全期間を通して29.5℃以上あった。熱帯太平洋中部海域において例年に比べ弱風・高水温の傾向が見られたことから、この時期、調査海域はエルニーニョ現象への移行期にあったと考えられる。
10月に入ると弱風・高水温の傾向がさらに強まったことから、この時期、調査海域ではエルニーニョ現象が本格化していたと考えられる。
5月14日~20日にキリバス水域において流れ物付き群による漁場形成を、7月14日~18日にキリバス200海里水域において素群、流れ物付き群による漁場形成をそれぞれ確認した。また、8月14日~22日には東経北緯公海域において素群を対象に320トンを、9月10日~14日には西経北緯公海域において、浮礁(人工筏)付き群を対象に260トンをそれぞれ漁獲した。10月17日~20日と10月31日~11月3日は、東経南緯公海域で好漁場が形成され、それぞれ285トン、305トンを漁獲した。

2.既存漁場の縁辺的拡大
 9月上旬から中旬にかけて、西経165度まで東進調査し、西経北緯公海域の北緯4度、西経167度30分付近で流れ物付き群を対象に260トンを漁獲し、既存漁場の縁辺水域における濃密漁場の存在を確認したが、10月下旬に西経海域を調査した際は、鳥群が非常に少なく、漁場形成は認められなかった。
また、2月中旬から下旬にかけて入域したソロモン水域の北緯6度、東経163度付近では、素群のほか、自然流れ物付き群も確認され、漁場滞在11日間で400トンを漁獲し、漁場形成を確認した。

3.若齢マグロの漁獲を最小化する手法に関する調査TS(反射強度)組成から対象魚群の組成を推定するため、延べ15群の流れ物付き群に対し16回のTS測定を実施し、漁獲物の組成とTS組成を比較した結果、カツオ主体の魚群とマグロ類の組成比率が高い魚群との差異が確認された。

4.衛星情報の有効利用
 人工筏の漂移を予測できれば操業の効率化に有効であるとの考えにもとづき、人工流木や流れ物の漂移と地衡流との関係について検討しているが、これまでの調査では、両者はよく一致する場合と全く一致しない場合があり、地衡流から流れ物等の漂移を直接推定する手法を確立するまでには至っていない。

5.カツオ脂肪含有量調査
 本船サンプルの分析結果から、魚群性状別の粗脂肪含有量は、13年度に比べ、流れ物付き群で高く素群で低い傾向にあったが、平均値では、素群の方が高かった。また、同じ魚群でも個体により脂肪含有量は大きく異なること、時期的、水域的に脂肪含有量の多寡を特定できないこと等、13年度と同様の結果を得た。また、品質の異なる荒節を用いて原魚粗脂肪量を推定し、さらに脂肪含有量を測定した試料を荒節に加工し、官能試験を行った結果、原魚粗脂肪含有量は5%が鰹節原料としての適正限界を示す一応の指標値と推定された。
 


漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

いか釣(大型いか)
(H14. 4~15. 3)



 

南大西洋西部海域
熱帯太平洋東部海域
南太平洋西部海域


 

第3新興丸
(478.10トン)



 

漁獲量       602.6トン
製品量       458.9トン
 マツイカ      166.7トン
 アカイカ       0.8トン
 アメリカオオアカイカ   269.8トン
 ニュージーランドスルメイカ 21.6トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
1.南大西洋西部海域と熱帯太平洋東部海域とを組み合わせた南半球での周年操業化を図るため、海外基地方式による効率的かつ合理的な資源利用のための企業化調査を行う。

2.南太平洋西部海域(ニュージーランド周辺水域)において、ニュージーランドスルメイカの漁場開発を行い、当該水域における合理的な資源利用を図る。
 当初は、南大西洋西部海域及び熱帯太平洋東部海域において、アルゼンチン及びペルー200海里水域で両国との共同調査、及び、隣接する公海域を含めた調査を周年実施することとしていたが、政情不安等から我が国漁船の入漁の不安定さが増しており、当業船が今後安定的に操業できる漁場の確保の必要性が生じた。このため、業界の要望も踏まえ、当初14年度後期で計画していたアルゼンチン周辺水域に替え、かつては我が国大型いか釣漁船の主漁場であったニュージーランド水域における調査を15年1月から行うこととなった。

<実施概要>
1.南大西洋西部海域
 3月27日にプエリトマドリンを出港後、5月15日までの間、産業的に重要な秋~冬生まれ群の相対豊度を推定することを主目的として、アルゼンチン200海里水域内外にまたがるパタゴニア大陸棚斜面域において、アルゼンチン国立漁業研究所(INIDEP)との共同調査を行った。また、5月16日から6月1日までは公海域でアカイカを対象とした調査を実施した。
 (1) アルゼンチンマツイカ
北部で好漁を得た地点が多かった。成熟段階及び外套背長の推移から、雌雄ともに漁獲の中心となったのは、秋~冬生まれ群及び夏生まれ群であり、4月下旬以降は冬生まれ群も確認された。
 (2) アカイカ
全般にアカイカの漁獲は低調であった。

2.熱帯太平洋東部海域
 アメリカオオアカイカを対象として、国内市場において相対的に評価が高いペルー周辺水域における小型個体群の漁場開発の可能性を検討することを目的とし、8月8日から12月16日までの間、ペルー200海里水域内においてはペルー国立海洋研究所(IMARPE)と共同調査を行い、公海域においてはペルーからチリ沖合水域で単独の調査を行った。
なお、当該水域において調査を開始して以来、8月から9月にかけて調査を行うのは初めてである。
 (1) ペルー200海里水域内(共同調査)
  ?相対的にCPUEが高かったのは、8~9月では南緯7度以北、10~11月では南緯8度30分以北といずれも北部水域に集中した。
  ?調査水域全域で大型個体の出現が多かったことから、ジャングル針による操業が主体であった。小型個体の出現は少なく、14年度調査の目的であった小型個体の好漁域を確認するには至らなかった。
  ?アメリカオオアカイカの外套長組成は、8~9月では50cm級と90cm級の2群が主体で、10~11月では、35cm級、60cm級及び90cm級の3群が主体であった。
 (2) 公海域
 9月11日から10月13日及び11月21日から12月16日の間、調査を行った。
  ?大型個体の分布は広範囲にわたった。他方、中小型個体群の漁場を確認するには至らなかった。
  ?ペルー及びチリ沖公海域における本種の分布密度はペルー200海里水域内に比べて薄いことが示唆された。
?漁獲された本種の外套長範囲は20~110cmと幅広く、25cm級、55cm級及び100cm級の3群が主体であった。

3.南太平洋西部海域(ニュージーランド周辺水域)
 ニュージーランド南島東岸において、ニュージーランドスルメイカの分布状況と相対豊度を求めること及び漁場と海洋構造との関連性を把握することをねらいとして、海洋観測及び操業調査を行っているが、ニュージーランドスルメイカの好漁域は確認されていない。
 

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

いか釣(あかいか)
(H14. 5~14.11)
 

北太平洋中・東部海域

 

第31寶来丸
(276トン)
 

漁獲量  41.7トン
製品量  32.2トン
 アカイカ  32.2トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 北太平洋中・東部海域において、アカイカ資源の利用合理化のため、探索手法の確立及びアカイカの脱落防止に関する技術の向上を図る。

<実施概要>
 14年度の調査は、海底地形の形状と漁場形成の関連性及び季節的な漁場の推移について検討を行うこと、及び、新型の釣機を導入し脱落防止の効果を確認することに主眼を置いて行った。

1.操業調査
 (1) 本調査は13年度は2隻で実施したが、14年度は1隻で5月から11月までの6ヶ月間実施した。14年度の調査では、西経170度以東の水域のみならず東経170度以西の水域も対象とした。しかしながら、全般的にアカイカの分布は薄く、14年度の調査で得られたアカイカの総漁獲量は41.7トン(1操業日あたり漁獲量0.3トン)で、13年度の総漁獲量(2隻で252.8トン:1隻操業日あたり漁獲量1.8トン)に比べ極めて低かった。
 (2) 7月上旬に北緯40~41度、西経162~165度の間、及び、8月中旬に北緯46度、西経157度の水域で相対的にCPUEが高かった。これらの水域は時期及び漁獲量に若干の差異はあるものの、過去の調査でも好漁が得られたところである。このことから、当該水域では例年上述した時期にアカイカの漁場が形成される可能性があることが示唆された。
 (3) 14年度の調査では9月以降南下するとされる秋生まれ群を対象とし、西経154~170度内の北緯30度まで南下し調査を行った。しかしながら漁場を確認するには至らなかった。

2.漁場探索調査
 (1) 海洋観測調査
14年度は海底地形と漁場との関連性を検討するために、過去漁場となった水域を網羅するように観測線を設定し、海洋観測を行った。観測の結果、7月に相対的に高いCPUEが得られた北緯40度30分線の西経164~165度間に、周囲より高い水温の張り出しが認められた。他水域においても中層域の高水温帯の張り出しは存在するものの、漁場は確認されなかった。
 (2) 魚探及びソナー反応
過去の調査の結果、水深300m付近の中層にDSL層(プランクトン層)が発達し、28、50kHzの両周波数で確認される水域が好漁域としてなりうることが示唆された。しかし、14年度は前項の水域においても中層のDSL層は希にしか見られなかった。

3.脱落調査
 14年度から脱落率を軽減するために手釣り機能を有する新機種(MY-10)を左舷側に11台導入したが、昼間深い水深帯を操業する場合、性能が異なる機種を同時に稼働させることにより、針ゲンカなどのトラブルが多発した。

 

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

かつお釣
(H14. 4~15. 3)


 

太平洋中・西部海域



 

第18日之出丸 
(359トン)


 

漁獲量    622.3トン
製品量    622.3トン
 カツオ  338.8トン
 ビンナガ 261.0トン
 その他   22.5トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 太平洋中西部海域におけるトロカツオ及びトロビンナガを対象とした漁場の開発及び既存漁場の縁辺的拡大を図り、これらを対象とした周年操業の可能性を探求するとともに、当該漁業の合理的な操業パターンの確立を図る。
1.春から夏にかけては西経域を、また、秋以降はニュージーランド東方公海域を重点調査水域として漁場形成状況を調査し、トロカツオ、トロビンナガを対象とした周年操業の可能性を追求する。

2.衛星情報等の利用により、効率的な探索方法の開発を図る。

3.カツオ釣漁業に不可欠な活餌の補完または代替えとなる人工餌開発の可能性について探求する。

4.カツオの水域別、時期別脂肪含有率を調査し、再現性のあるトロカツオ漁場開発のための分布図を作成する。

<実施概要>
 引き続き13年度の第5次航海に従事し、タスマン公海域において調査を続けた。ガスコイニー海山付近では、ソナー反応により魚群は確認できるものの浮上状況は極めて悪く、わずかにカツオを釣獲したにとどまった。
4月中旬以降北上し、ニューカレドニア南の公海上である南緯25度20分、東経159度30分付近において鳥付群のカツオ約50トンを釣獲し、4月25日に漁場を切り揚げ、5月13日に焼津港で水揚げを行った。
 5月下旬から8月下旬の間は、日本東方沖合から天皇海山にかけて2航海の操業調査を行ったが、カツオ群はほぼ沈潜群で浮上状況が悪く、釣獲に結びつく漁場形成の確認には至らず、操業は主にビンナガを対象として行った。
 9月には西経域を主体に調査したが、水温分布も平坦で潮目の形成が見られず、カツオ、ビンナガとも漁場形成を確認出来なかった。
12月下旬から1月中旬の間はタスマン海公海域を調査した。当該水域では、東側から西進しつつ探索し、ガスコイニー海山周辺においてカツオの漁場形成を確認した。漁獲したカツオは小型個体のものが主体を占めた。
また、3月中旬のニュージーランド東方公海域の調査では、南緯40度30分、西経173度付近で1日の操業でカツオ20トンを釣獲したが、持続性はなく、また、ビンナガの漁場形成も確認できなかった。
 人工餌に関しては、南西諸島における大水深漁場造成開発調査船第18太幸丸で2航海の洋上調査を行い、釣獲後、胃内容物を調査した結果、人工餌を捕食していることが確認され、本船においても使用して人工餌に対する魚群行動等を観察したが、顕著な誘因効果を確認するには至らなかった。
<新漁業生産システム構築実証化事業>

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

大中型まき網
(H14. 4~15. 3)




 

北部太平洋海域





 

北勝丸
(286トン)
第35福吉丸
(270トン)
〔1ヶ統2隻〕

 

漁獲量     5,905.3トン
製品量     5,905.3トン
 カツオ    2,089.7トン
 マグロ類    132.4トン
 サバ類     99.5トン
 イワシ類   3,582.7トン
 その他      1.0トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 北太平洋海区の大中型まき網漁業において、漁獲から市場上場までの実態に応じた最新の漁撈技術、機器を応用した省人・省力化及び付加価値向上により、対象資源と漁業経営に見合った合理的な漁業生産システムの企業化調査を行い、その具現化を図る。

1.網船と運搬船の2隻からなる操業システムの効率的運用方法を探求する。

2.イワシ・サバ類操業時における収益構造の改善を図る。

<実施概要>
1.5月5日~10月14日の間、カツオ・マグロ類を対象とした調査を行い、90回の操業でカツオ主体に2,223.1トン(カツオ2,089.7トン、キハダ50.1トン、メバチ21.5トン、ビンナガ60.8トン)を漁獲した。販売金額は478,063千円、販売平均単価は215.0円/kg(カツオ;生241.1円/kg、冷204.9円/kg、キハダ;生342.2円/kg、冷246.1円/kg、メバチ;生445.9円/kg、冷141.6円/kg、ビンナガ;生182.8円/kg、冷181.1円/kg)であった。
14年度は、主たるカツオ・マグロ漁場が東経150度以東の沖合水域に形成されたため、運搬船による生鮮製品搬入の当業船は厳しい状況にあったが、本システムでは網船による高品質冷凍製品生産により一定の水揚げ金額を確保した。当業船は漁場形成がごく狭隘なクロマグロ漁場に集中して操業する結果となったが、本船団ではカツオ主体の操業を行ったことにより、マグロ類の漁獲比率アップ等の分野では課題が残ったといえる。
運搬船に導入した可変ピッチプロペラにより、運搬船の魚群追尾及び操業時の網船誘導が容易になったが、素群及び鳥付き群に対する運搬船の投網補助の面ではまだ十分といえない状況にあった。
 操業期間中、インターネット配信による各種リアルタイム衛星画像を入手し、特に海面高度分布図の活用によって、より効率的な漁場探索の向上が図られた。

2.4月1日~27日の間と10月15日以降はイワシ・サバ類を対象とした調査を行った。年明け後は時化が多く満足な操業は出来なかったが、72回の操業でカタクチイワシを主体に3,682.1トンを漁獲した。販売金額は94,862千円、販売平均単価は25.8円/kgであった。
 14年度はカタクチイワシ漁網の魚捕側を平成丸型三角網方式に改造して使用した結果、網起こし及び漁獲物取込作業時間の短縮が図られ、省力化に対しても効果的であった。また、魚捕側の改造によって、環喰い等のトラブルを減少させる余剰効果も確認された。

 

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

沖合底びき網(2そうびき)
 H14. 4~15. 3
 禁漁期間(6.1~8.15)
 を除く


 

日本海西部海域





 

第1やまぐち丸
(60トン)
第2やまぐち丸
(60トン)


 

漁獲量    539.4トン
製品量    393.3トン
タイ類   30.9トン
カレイ類  137.2トン
イカ類   35.6トン
アナゴ類  34.3トン
その他底魚 155.3トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 小型化と省エネ機関を導入した調査船を用い、漁労作業の機械化及び漁獲物選別処理作業の陸上化を含む省人・省力化による生産コストの削減を図るとともに、水氷槽、クールボックス及び船上活魚槽の導入等による漁獲物の付加価値向上を図る。

<実施概要>
 8月以降の調査では、エチゼンクラゲの大量発生や時化による稼働率の低下等、操業に支障をきたすこともあったが、13年度に比べ漁獲水揚量及び金額ともに上回り、比較的順調に推移している。また、14年10月から入域が可能となった対馬東側の規制区域の漁場においては日中にタイ類を、夜間では他水域でカレイ類を対象とした操業を行い、漁場の効果的な利用を図っている。

1.漁労作業及び漁獲物処理作業
 (1) 第1・2やまぐち丸を用船しての調査も2年目を向かえ乗組員が省人化した本システムを習熟した。14年度は対馬東側区域(通称A区)の操業が可能となり、当該調査海域の漁場もほぼ把握した。年間を通じ魚価の安定したカレイ類を対象とした操業を行い、13年度に比べ水揚金額で約10%の増加であった。
 (2) 漁獲物の処理作業に関しては、現状の市場の施設、作業員の手配等の問題が多々あるため、「選別作業部会」を設置し検討を行った。その結果、主要魚種のバラ出荷を行い洋上処理の簡素化を図ることとし、15年度から実施する。

2.選別式コッドエンド
 魚類とゴミ類の分離を目的とし、選別式コッドエンドを導入した操業を行った。その結果、魚類とゴミ類及び魚種によりサイズ選別は可能であり、タイ類を対象とした漁場では有効性が認められた。他方、揚網作業が劣ること、及び、カレイ類を対象とした漁場ではアナゴが抜ける等の問題があり、今後改良を行いながら実用化を目指す。

3.製氷機
 作業甲板に製氷機を設置したことにより、魚倉からの氷揚げ作業の省力化が可能となった。他方、海水100%の製氷を使用するとカレイ類等が過冷却になる問題が発生した。
この対応策として?1魚倉を清水タンクに改良し、海水と清水の混合氷を作成することとした。その結果、過冷却の問題は解消され、氷の積み込み量及びコストが50%以上削減された。また、清水氷と比較しK値(ATP分解生成物比率)、破断強度に差異が無いことが立証された。

4.漁獲物の付加価値向上対策
 (1) 活魚水槽を二段式に改良したことにより、複数の魚種を活魚として生産することが可能となり、作業性も向上した。
 (2) 13年度に引き続き、カナガシラ(ホウボウ科:金頭)を2月3日の節分に合わせ長崎に直送し販売した。その結果、13年度に比べ数量、品質ともに劣ったが、販売単価は下関市場の8倍であった。
 (3) 販路拡大の目的でウチワエビ(セミエビ科:イセエビの代用)の活魚を試験的に東京築地市場に出荷した。ウチワエビは東京で馴染みが薄いため魚価アップにはならなかったが、活魚としての送り方法等は確定し、定期的に継続することにより魚価アップが期待できる。
 

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

沖合底びき網(かけまわし)
H14. 4~15. 3
禁漁期(6.16~9.15)
を除く


 

北海道日本海海域





 

新世丸
(160トン)




 

漁獲量    3,296.1トン
製品量    3,256.9トン
スケソウダラ   283.1トン
ホッケ   2,804.7トン
マダラ     60.7トン
カレイ類    72.3トン
その他底魚  36.1トン

調査のねらいと実施概要

<調査のねらい>
 沖合底びき網漁業(かけまわし)において、新しい漁労機器等を導入して、省人・省力化による操業コストの節減及び漁労負担の軽減を行うとともに、資源水準に対応した適正漁獲による資源の有効利用を図りながら、漁獲物の付加価値向上による高い収益性を確保した新しい生産システムの構築を目指す。

<実施概要>
 新造船「新世丸」を用船し、9月16日から小樽前浜地区において調査を開始した。14年度は、新船の操船技術の習熟及びネットリール、パワーブロックの新しい漁労機器の操作に関する習熟を図ること、また、フィッシュポンプによる水揚げの作業性の検証を行うとともに、船内における漁獲物選別処理作業の確立を図ることに主眼をおいて調査を実施している。
1.漁労作業
 投揚網作業においては、手木の取り込みから漁獲物を収納するまでの時間は従来船よりも短時間で終了することができるが、整反作業が別途必要で、1サイクルに要する時間は従来船よりも20分程度長かった。しかしながら、ネットリール、パワーブロックを使用することにより、投揚網作業は13人体制で十分実施できることが確認された。実操業を通じて漁労機器類等に以下のような解決すべき課題が残された。
 (1) 現段階ではネットリールに網が均等に巻き込まれていないため、巻き込み方法についてシフターを導入する等検討を要する。
また、現行の副漁具の構造では網を巻き込む際に手木を取り外す必要がある。省人・省力化を推進する観点から、漁具全体を巻き込めるような副漁具を考案する必要がある。
 (2) 網の整反に使用するために、甲板中央部及び艫側にクレーンが設置されているが、このうち、甲板中央部のクレーンは故障が多く作業効率が悪いことが指摘される等、構造的に改造すべき点が認められた。
 (3) 箱物の水揚げには、甲板中央部のクレーンを使用しているが、前述のとおり当該クレーンの作動が遅いため、縦コンベアを導入することを検討している。この方式が妥当であれば、ハッチ口も最小でよく、ネットウインチ前のハッチ口を小型に改良することが可能となるとともに、このことがシフター導入の要因になると思われる。

2.フィッシュポンプによる水揚げの作業性検証スケソウダラ、ホッケの水揚げにはフィッシュポンプを使用している。ポンプの能力に問題はないが、返し水の配管が漁獲物を吸い込み口付近に移動しにくくしていると思われる。滑りが悪いホッケにかかる単位時間あたりの処理能力は最高で42トンと当業船(50トン)に比べて効率が悪かった。特に、12月に入ると漁倉内に泡が多く発生する現象が生じ、水揚げ効率が更に悪くなった。このことから、配管の設置方法について実験を行うとともに、泡の除去方法についてはセパレーター内にフロートセンサーを設置するなどの措置を講じている。なお、スケソウダラにおいては、単位時間あたりの処理能力は90トン程度と当業船の60トンに比べて効率は良かった。

3.漁獲物の付加価値向上
 付加価値を高め製品単価を上昇させることを目的とし、スケソウダラ、ホッケの大型個体を鮮魚として販売する経路を確保するため、北海道機船漁業協同組合連合会に依頼して道内量販店に対し試験的にサンプルを提供し、製品形態に関する市場調査及びすり身加工業者に対し肉質の評価についての調査を行っているところである。また、一方で、フィッシュポンプで水揚げされた製品は当業船に比べて鮮度が良好であるとの評価を得ているが、単価の上昇には至っていない。鮮度の状態を科学的に証明し当該製品の価値を把握するために、北海道中央水産試験場に鮮度指標(K値及びVBN(揮発性塩基性窒素))の科学的な分析を依頼することとしている。

漁業種類及び調査期間

調査海域

調査船

漁獲対象魚種

ハイブリッド・トローラー
(H14. 7~15. 1)



 

北大西洋西部海域




 

第7安洋丸
(280トン)



 

漁獲量    324.1トン
製品量    226.6トン
カラスガレイ   108.0トン
アカウオ      8.3トン
ホッコクアカエビ  100.1トン
その他    10.2トン

調査のねらいと実施概要
<調査のねらい>
 漁労作業の見直しによる省人・省力化を図るとともに、トロール漁法と底はえなわ漁法を組み合わせることにより、漁獲努力の分散による漁場の荒廃防止と操業の効率化及び資源の有効利用を図る。
 底はえなわ調査においては、はえなわ作業における一層の習熟による技術の向上及び漁獲効率の向上を図ることと、NEAFC(北東大西洋漁業委員会)水域での海山漁場における底はえなわ操業の採算性を検証する。
トロール調査においては、ホッコクアカエビの収益性の向上及び漁獲効率を追求する。

<実施概要>
1.底はえなわ調査
 7月20日ラスパルマスを出港し、7月29日から9月7日までNEAFC水域(イルミンガ)の13年度に操業した4か所の海山においてアカウオを対象とした底はえなわによる操業調査を行った。
 当該水域で操業した水深は448~963mで、31日間の操業を行った。漁獲量は19.3トン(うちアカウオ9.1トン)と13年度(28.3トン、うちアカウオ11.3トン)に比べ低調であった。その要因として、14年度は操業に支障をきたす時化の日が全体の48%を占め13年度に比べ多かったこと、13年度に根掛かり防止のため浮子を取り付けて幹縄を浮かしたことにより大型のアカウオが釣獲されたことから、14年度は、1鉢毎にホッコクアカエビ用底びき網の浮子を取り付けて縄を浮かして操業を行ったが、根掛かりも多くその効果が見られなかったことが考えられる。

2.トロール調査
 9月22日から10月31日までNAFO(北西大西洋漁業機関)3M区においてホッコクアカエビを対象としたトロール操業を行った。操業した水深は289~447mで、38日間(101回)の操業を行い、ホッコクアカエビを100.1トン漁獲した。操業1日あたり漁獲量は2.6トンで、13年度の同時期に比べ33%増であった。14年度はエビトロール網の改造を行ったことが、漁獲効率の向上に繋がったものと考えられる。ホッコクアカエビの製品サイズはL・Mサイズが21%であった。
 11月10日から12月7日及び12月14日から15年1月14日まで、NAFO 3LM区においてカラスガレイを対象とした操業を行った。
操業水深は696~1,110mで、操業日数53日間で101回の操業調査を行い、カラスガレイ161.4トン等、合計204.3トン漁獲した。漁獲されたカラスガレイは、13年度に比べ小型化した。