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01SH"U"N's eyeへ
FAOによれば水産資源として利用されている世界の魚種の約30%が乱獲状態にあると言われています。このまま人類が対策を講じなければ水産天然資源の持続可能性はさらに低くなる可能性があります。
02SH"U"N's eyeへ
日本は古来より漁業者や国や自治体により自発的に設定されたルールがあり、持続可能な漁業を目指してきました。しかし伝統的な社会ルールは科学的根拠が乏しく、漁獲技術の進歩による過度な漁獲、人為的な沿岸・海洋開発による魚種の生息地の減少、気候変動などにより伝統的なルールでは資源を守り切れない心配があります。これまでの伝統的な日本のルールで漁業を続けると資源が減ってしまう魚種も多く存在すると考えられます。
03SH"U"N's eyeへ
日本の食用魚介類の自給率は、1964年の113%をピークに減少を続け現在50%台を推移していますので今のところはまだやや国産の方が多いと言えますが、輸入への依存度は高まり続けている傾向があります。主要な輸入魚種であるサケ・マス類やエビ類には天然資源に負荷をかけない完全養殖種も多くありますが、マグロ・カツオ類など天然資源を漁獲して輸入されている魚種もあります。輸入による日本の水産物の消費が世界の天然水産資源に影響を与えることもあります。
04SH"U"N's eyeへ
水産魚介類の資源量が維持できなくなる要因の一つが捕りすぎ(乱獲)であることは明確ですので、漁獲がなくなれば、資源が減少する要因は減ります。しかし、資源の減少要因は生息環境の変化や環境変動など様々な理由によって起こっていると考えられるので一概に捕らなければ(食べなければ)増えるとは言えません。また、産卵から利用できる資源になるまで人工的に管理される完全養殖資源を利用できればいくら食べても天然資源には影響を与えません
05SH"U"N's eyeへ
魚種によっては特別な地域にしか生息しない種や、産卵量が少ない種、成長が遅い種など、いったん資源が減ると回復がとても困難なものもいます。これらの種は絶滅を避けるためにも見闇に食べるべきではないと考えます。当然ですが、毒のある魚など食べること自体が危険な魚介類もたくさんいます。また、天然資源の捕りすぎ(乱獲)はどのような魚種においても資源の持続可能性を危険にさらす行為です。水産資源を次の世代の人類も安心して利用できるためには、科学的な評価の下に捕りすぎない漁獲量を見極めて、資源を絶滅に追い込むように食べないことが肝心です。
06SH"U"N's eyeへ
畜産物や農産物と同様に水産物の養殖技術が発達し天然資源に依存しない食料供給(完全養殖)が実現すれば、天然資源の持続可能性は確実に向上します。しかし現時点ではほとんどの魚種の完全養殖はいまだ実現できておらず養殖と言っても幼魚は天然で採集して育てている養殖法が主流で天然資源に依存しています。完全養殖魚ができている魚種でもコストがかかりすぎ天然で漁獲されたものより格段に高額になっているのが現状です。将来完全養殖魚が普通に利用できるようになれば天然資源への負担は小さくなると期待できます。

01科学的な根拠へ
SH“U”Nの「資源の状態(資源)」軸の状態の評価の低い(1ポイント)ものは、現在減っている水産資源であるとみることができます。
02科学的な根拠へ
SH“U”Nの「漁業の管理(漁業)」軸で評価の低い(1ポイント)ものは、資源管理が十分でなく資源の維持に対して捕りすぎ(乱獲)のなどの心配がある水産資源であるとみることができます。
03科学的な根拠へ
輸入など流通に関する情報はSH“U”Nからは直接把握できません。             
04科学的な根拠へ
SH“U”Nの「生態系・環境への配慮(生態)」軸の評価は漁獲以外の要因について検証しているもので、この低い(1ポイント)ものは、漁獲要因だけでなく環境要因によって資源が崩壊する可能性があることを示しています。
05科学的な根拠へ
SH“U”Nが表示している4軸「資源」「生態」「漁業」「地域」の評価はそれぞれの水産重要種の天然資源が現在健全に維持されているかどうかを示しています。これらの評価が低い(1ポイント)ものは、それぞれの要因において資源の持続性に懸念があることを示しています。
06科学的な根拠へ
SH“U”Nのすべての評価で総合的に評価が低い(1ポイント)魚種について、天然資源に依存して漁獲を続けていると資源持続可能性をさらに低下させる危険性が高いと言えます。SH“U”Nの総合評価が低い魚種の絶滅危惧を回避するために、マグロやウナギなどで完全養殖の技術開発が進められています。

01
評価軸1「資源の状態」
1994年に発効した国連海洋法条約(United Nations Convention on the Law of the Sea)では、沿岸の水産資源は沿岸国が適切に管理することになっており、資源の状態を知り、資源管理を行いつつその持続的な利用を図っていくことは沿岸国の責務となっています。現在では、今後も世界でさかなを獲り続けることができるかについて関心が増しています(Worm et al. 2009)。海の中のさかなの状態は、生物の情報、漁業の情報などを総合的に分析することで知ることができ、これを資源評価と呼びます。水産機構が実施している資源評価は、これまで20年以上にわたり、国による漁獲可能量(Total Allowable Catch: TAC)の設定や国際機関によるルールづくりなどに活用されてきました。SH“U”Nプロジェクトではまず、評価対象となっている魚種について、十分な調査研究がなされているか、海の中にどれくらい存在しているのか、増えているのか減っているのか、持続的な利用のために透明で適正な評価システムが確立されているか、対象資源が栽培漁業の対象となっている場合には、その効果が検証可能な形で実施されているか、などを評価します。
02
評価軸2「海洋環境と生態系への配慮」
さかなが海の中で生まれ、成長し、産卵して再生産を続けていくためには、評価対象となっている個々の魚種だけではなく、その餌となる生物や住む場所、他生物との関係を適切な状態に保つことも大切です。さかなが海から十分な食物を得るためには、植物プランクトンや藻類の光合成による基礎生産から動物プランクトンや魚、魚食性の動物へと複雑につながる食物網や、有機物の分解まで含む物質循環が正しく機能しなければなりません。また住み場所という点でも、産卵場や子の生育場、摂餌場など発育段階や季節に応じた適切な環境が必要であり、それぞれの場において生物は複雑な相互関係をもちながら多様な生態系を形作っています(生物多様性条約)。こうした海洋生態系の構造や機能をバランス良く保全していくことが、個々の資源の持続的な利用につながっていきますが、生態系全体が保全されているかどうかを評価することはとても難しいことです。生態系保全のためには人間が利用しない生物、希少種の保護などへの配慮も必要です。海域の大きさや基礎生産量によって、生態系の中で生存できる生物の量には上限があります(環境収容力)。個々の生物の量は他生物との相互作用を通じて複雑に変化するため、特定の生物の量だけを独立して増減させることはできません。人間に都合の良い生物だけを増やそうとしても、生態系全体を健全な状態とすることにはなりません。このため、人為的な行為が自然界や生態系などへの影響についても考慮する必要があります。我が国周辺の海では、マイワシ・カタクチイワシ・サバなどの小型浮魚類の量が交互に多くなる現象の解明(魚種交替現象; Takasuka et al. 2008)や、瀬戸内海や三陸沖における漁業を含めた食物網をモデル化して漁業の影響を解析した研究(亘 2015, 米崎ほか2016)、漁業をふくめ汚染や埋め立てなどの人間活動によって環境収容力が変化する現象などの研究成果を通して、個々のさかなを越えた生態系の仕組みがしだいに明らかになってきました。こうした研究成果は未だ限られたものであるため、生態系の構造や機能の変化に関する問題を全てのさかなについて評価することは困難ですが、SH“U”Nプロジェクトでは、既存の研究成果に基づいて生態系の仕組みを意識しつつ、漁業が他の生物や海洋生態系全体ならびに環境に与える影響について、栽培漁業による影響も含めて可能な範囲で評価します。
03
評価軸3「漁業の管理
日本の漁業は、欧米先進国の漁業と異なり、多数の零細な漁船が様々な漁具・漁法を使って多様な資源を漁獲し自国民の食糧として利用してきた、という特徴をもっています。これは、アジア諸国の漁業に共通する特徴でもあります(Makino and Matsuda 2011)。このような漁業では、一般に、政府がトップダウン的にルールを決めてそれを漁業者に守らせるというだけでは管理がうまくいかないと考えられています。むしろ地域の漁業者の権利と責任を明確にしたうえで、政府と漁業者が協力して管理を行うことが効果的です(Gutierrez et al. 2011)。この管理手法は「漁業の共同管理(Fisheries co-management)」と呼ばれ、効率的な管理手法として近年国際的にも高く評価されるようになってきています。日本では、資源を持続的に利用するための様々な取り組みが古くから各地の漁業者によって自主的におこなわれてきました。水産庁による「資源管理のあり方検討会」の主要な結論も、「政府や地方自治体による公的管理と漁業者による自主的管理による共同管理の高度化」に他なりません(水産庁2014)。日本は、アジア太平洋海域に位置する魚食国として、政府による公的管理と漁業者による共同管理を高度化する努力を積み重ねるとともに、その知恵と経験を周辺の国々に発信していく国際的責務を負っていると考えます。このような考えの下、SH“U”Nプロジェクトでは、地域の漁業者と政府が協力して管理するための工夫やそこで行われている管理の内容についても評価の対象とし、栽培漁業が行われている場合には資源管理方策として広範な理解の上で合理的に進められているか、という点も合わせて評価することとしました。
04
評価軸4「地域の持続性」
水産資源の持続的な利用を実現するうえで、漁業地域の経済や文化がいかに重要かという点を、世界的な比較研究を行うことを視野に入れて、Fishery Performance Indicatorsという指標を基本とし、我が国の実情に合わせた項目を設定して評価します(Anderson et al. 2016)。近年、世界では文化多様性が生物多様性と並んで重視され、人間社会の活動が生み出す文化や知識の集積は生物多様性と同様に価値があり保護されるべきだとされています(文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約)。日本においても、水産業は離島や半島先端部など、条件不利地といわれる地域において多くの雇用を生み出し地域経済を支えてきました。日本各地に漁業や水産加工・流通業、小売業に携わる人々がいるからこそ、各地の多様なさかなが消費者の食卓へと届けられます。地方の過疎化・高齢化の問題が顕在化する近年(増田 2014)、魅力ある水産業を通じた地域の創生は、一層その社会的役割が大きくなっていくと考えられます。また、各地の漁業者が何世代にもわたり蓄積してきた海に関する知識と知恵は、漁業者による自主的管理にも幅広く活用されています。産地流通の場で、適切な仕向け配分を迅速に行う「目利き」と「情報処理」を担当している仲買人の機能や、さかなの保蔵や価格維持を行っている産地加工業者の機能なども重要な資産であると考えられます。つまり、地域社会が持続的であるということは、このような多様な知識・知恵と経験が次世代に受け継がれていくことを意味します。我々が一万年以上にわたり住み続け、さかなを食べ続けてきた日本列島は、南北に長く伸びた列島です。北海道の亜寒帯の海から八重山の熱帯の海まで、各地の多様な生態系の恵みを活かして多様な文化と伝統がはぐくまれてきました。特に各地の魚食文化や伝統料理は、海の恵みをおいしくいただくために欠かすことのできない、そして一度失ってしまったら二度とは復元できない貴重な文化遺産です。SH“U”Nプロジェクトではこの多様な文化を守り継承していく基盤となる日本各地の地域社会の持続性が重要であると考えています。
05
情報提供「健康と安全・安心」
1960年代にダイアベルグらがグリーンランドエスキモーについて行った疫学調査(Dyerberg et al. 1975, Bang et al. 1976)をきっかけに、水産物に含まれる成分の健康への機能性が注目されるようになり、EPAやDHAなどのn-3系高度不飽和脂肪酸をはじめとする水産物に含まれる成分の健康への寄与が明らかにされました。さらにEPAやDHAなどの単一の成分の機能性以外にも、魚肉タンパクと魚油の相乗効果による血栓予防効果、魚と海藻の組み合わせによる中性脂肪抑制効果の増強など、複数の成分による機能性も明らかにされています(Murata et al. 2002, 2004, 水産庁 2015)。このような魚食をはじめとした和食文化は、2013年にユネスコ無形文化遺産にも登録されていますが、研究成果を背景に魚食は日本人の健康長寿の秘訣として国際的な関心も集めています。しかし、消費者のみなさまが安心して魚食文化を楽しみ、健康的な生活を送るためには、食品として安全であるということも絶対に必要な前提条件です。フグ毒、貝毒などの自然毒、寄生虫・食中毒、さらに人間活動由来の化学汚染物質などが安全に対する懸念要素であり、継続的なモニタリングが必要です。現在、日本の市場に流通している水産物は国が設定する安全基準が適用され、検査が行われていますが、どのような食品検査体制がとられているのかはそれほど詳しく知られていません。SH“U”Nプロジェクトでは、消費者のみなさまがより一層安心して水産物を購入できるよう、JAS法に定められた原産地表示に基づいて評価を行うとともに、食品検査の科学的根拠やその体制についてもわかりやすく情報を整理し、あわせて公表します
06水産物を取り巻く疑問には、すべての人の共通の正解はありません。水産物のことを科学的に知っていただければ、持続可能な水産物の利用や健康な海の生態系の維持につながると考えています。ぜひ、SH“U”NのホームページやSH“U”Nのアプリも覗いてみてください。